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精霊殺しの学園生活  作者: はる
第3章 交流戦
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決戦前

 翌日、アリスたちは決闘場の控え室に足を運んでいた。


 「じゃあ、順番を確認するわよ?」


 リンがその場から立ち上がり、全員に確認を取っていく。


 昨夜、アリスが帰ってから数時間後、リンから決闘の順番を決めると言うことで急遽、メンバー全員が集まることになった。そこでアリスは大将――つまり最後は自分が勤めると意見した。もちろん、反対意見もあったが、リンのサポートもあって無事に大将になることが出来た。その後も順番を決めていき、始めからアシュリー、リーゼロッテ、リン、ミュア、そしてアリスという順番になった。


 「――で、大将がアリスね。それと、対戦相手は直前までわからないわ。まあ、知っていたとしても、どうにもならないけど。じゃあ、アシュリー、頼んだわよ」


 「わかっていますよ」


 リンに促され、アシュリーもその場から立ち上がり、決闘場に向かってゆく。その時にアリスの隣を通り過ぎようとした。


 「確率としては四分の一ってとこかしら? どこかの誰かさんが頑張ってくれたおかげで」


 チラッとアリスを見ながら、アシュリーはアリス以外に聞こえないように呟いた。その言葉を聞いて、アリスは軽くため息をついた。


 「やっぱりわかっていましたか……エルザさんにでも聞きましたか?」


 以前――アリスたちが馬車で移動しているときから感じていた違和感の謎が少し解けそうな気がする。

 アシュリーが密かにアリスを出そうとしていた理由、それはアリスが”エルフリーデ”と知っているからではないかと。確証がなかったが、今の言葉でハッキリとした。そもそも今回の決闘で”神無月”が参加すると知っているのはリンとリーゼロッテだけだ。しかし、アシュリーは当然かのように知っていた。それはつまり――


 (エルザさんから直接、決闘のことを聞いたな。その時に俺のことも。まあ、口外こうがいしなければどうでもいいが……)


 「大丈夫よ、情報は漏らさないから……ほんとは、あなたみたいな人材を逃したくないのが本音だけど」


 クスリとアシュリーは笑う。ここまで来たら疑う余地もない。アシュリーはアリスのことを調べ上げている。


 「……食えない人ですね。さすが、学園長エルザの娘だ」


 「褒め言葉として受け取っておくわ。それに、あなたも同じでしょ?」


 アリスはアシュリーの問いに笑みを浮かべる――つまりは肯定の意味だ。


 「あなたがいるおかげで気楽にいけるわ」


 「俺が必ず勝つとは言えませんが?」


 いつもは目上の人に対して自分のことをと言うアリスだが、アシュリーの前ではいつの間にか素の呼び方に戻っていた。恐らく、自分の正体がばれたからであろう。


 フッとアシュリーは微笑み、アリスに背を向け――

 

 「あなたなら余裕でしょう、”精霊殺し”さん?」


 アシュリーはそのまま決闘場へと向かい、アリスはその背中を苦笑しながら見つめるのであった。






 アシュリーが決闘場についてしばらくすると、対戦相手の選手が入ってきた。その顔を見てアシュリーは――


 (いきなりはずれを引いたわ……)


 表情には出していないが、内心ではあり得ないほど焦っていた。何故なら――


 (まさか、もう一人・・・・の方を相手するなんてね――)


 アシュリーは目の前の少年――祐斗を睨めつける。まさかここで引くとは。四分の一と言ったのがまずかったのだろうか。アシュリーは軽く、自分の発言を後悔する。


 (これは不味いわね。こちらのアドバンテージがなくなるかも?)


 アシュリーもエルザに聞いて、目の前の少年が今大会最大の敵――”神無月”だと知っている。普通の生徒であれば、なんとかなったであろうが、さすがに”神無月”に勝てるほどの実力を有していないぐらいアシュリーも理解している。


 (でも、やるしかないわね……)


 アシュリーは祐斗を睨めつける視線を一層強くする。しかし、祐斗は興味がないのか反応することはなかった。


 そして、アシュリーは決心して――


 「……来なさい、メリア――」






 その頃の控え室では――


 「「「……」」」


 アリス、リーゼロッテ、リンの三人が頭を抱えて下を向いていた。


 (四分の一なんて言うから……)


 (ご愁傷様です……)


 (ごめんね、アシュリー……)


 この三人は”神無月”の二人を知っている。正確にはアリス経由だが。だからこそ、アシュリーの不運を哀れに思っていた。


 「三人とも、どうしたの?」


 理由を知らないミュアだけが普段通りだった。

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