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精霊殺しの学園生活  作者: はる
第3章 交流戦
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月島楓

 「……なに?」


 理解が出来ないといったふうに、アリスは眉を寄せながら振り返る。


 アリス自身、今回はイーストの援助という任務のつもりで来ていた。しかし、実際は任務など存在しておらず、最終的には戦うために呼ばれたと告げられた。何故自分と戦いたいのか。イースト側の考えがわからなかった。


 「……どうして俺と戦いたいんだ?」


 「もちろん、君の実力を知りたいから!」


 アリスの疑問に、楓は活き活きと答える。それこそ、年相応の少女の笑顔で。


 楓の喜びようから、イーストがアリスの実力を知りたいからというわけではなさそうだ。では、アリスと戦いたいというのは、この少女の意思なのであろう。

 しかし、アリスはどうして目の前の少女が自分と戦いたいのかが理解できなかった。


 そんなアリスの疑問に答えるかのように、楓は言葉を続ける。


 「……私ね、精霊と契約する前から私に勝てる人なんていなかったんだ」


 楓は精霊と契約する前の日々を思い出すかのように語ってゆく。


 「例え相手が精霊と契約していても、自分の魔法だけで対処できた。剣術も精霊を頼りにしている彼ら相手では満足できなかった」


 そう、楓は優秀すぎたのだ。周りに比べて圧倒的魔力量に技術、さらには高い身体能力。そんな楓にとって相手が精霊と契約しているということはハンデにすらならなかった。


 「もちろん、強すぎる精霊と契約している人には勝てなかったよ? でも、その時はまだ成長期だったし、そんな人たちは大人だったからね。そこは割り切ったよ。けどね……」


 そこで楓は出会ってしまったのだ。自分をさらに高める存在に。


 「あれは10歳の時だったかな? いつものように特訓してたら急に目の前に現れたんだ。ほんとびっくりしたよ」」


 余程その時のことを鮮明に覚えているのか、楓は静かに笑った。


 そこから、彼女の人生は大きく変わった。今まで相手にしてきた同級生たちはもちろん、自分の力だけでは勝てなかった大人にも勝てるようになってしまった。

 そして、楓の実力を知った国が楓を勧誘して、ついには重要な立場に就かされることになった。


 周りから見れば、素晴らしい出世。誰もがうらやむであろう結果。しかし、楓にとっては――


 (つまらないな……)


 完全に感情が麻痺してしまった。本来、人とは、ライバルがいて互いが切磋琢磨することによって成長することが出来る。

 楓にはそれがなかった……いや、なくなってしまった。以前はライバルではないが目標にする人物はいた。しかし、王級精霊と契約したことによって誰も楓に勝つことが出来なくなった。国のトップである”神無月”であってもだ。

 楓が契約したのが普通の精霊であったのならばよかっただろう。しかし、結果はどうだ。最強の人間に最強の精霊。誰も止めることが出来なかった。

 唯一、楓を止められそうなのが”破壊神”だが、まだ実力が楓に追いついていなかった。それ以来、楓は敗北を感じたことがない。いや、接戦にすらならなかった。王級精霊と契約した時点で楓に敵うものは誰もいなくなってしまったのだ。


 「そんな時にね、君のことを聞いたんだ」

 

 暗い雰囲気から少しだけ期待を込めた視線をアリスに向ける。


 「君のことを知ったのは最近なんだけどね。サウスでファフニールを倒した人がいるって。そこで思ったんだ。その人なら私を倒してくれるんじゃないかって」


 確かに可能性はあるだろう。戦争時に活動していた精霊をたった一人で撃退した人物……楓にとって、またとない希望であった。


 「……だからね、今回の交流戦で私を倒してよ」


 楓は真剣なまなざしでアリスを見つめる。そこには一切、ふざけた様子はない。心からの願いであった。


 しかし、アリスは真剣な楓の前でフッと笑いを漏らしてしまった。


 「ちょっと、何笑ってるの!」


 自分には似合わないまじめな話をしているのに、目の前の少年は笑っている。流石の楓も怒らずにはいられなかった。


 「ああ、すまない。だって――」


 アリスが続けた言葉に楓は思わず息を飲んだ。


 「元から・・・勝つつもり・・・・・だったしな・・・・・


 そう、今回の交流戦でアリスはイースト学園に勝つつもりで参加している。楓が頼もうが頼まないが、アリスのやることは変わらなかった。


 「……はぁ、そうだよね……」


 冷静に考えれば、アリスが参加した時点で気づくべきだった。任務だけなら交流戦に参加せずともよい。ならどうして参加した? 答えは明白であった。


 「こんな話するんじゃなかった。でも、本気で戦ってくれるってことだよね? だったらさ――」


 再び、真剣な様子でアリスを見つめる。しかし、アリスは自分を見つめる楓のを見た瞬間、思わずぞっとする。


 「だったら、私を――」


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