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精霊殺しの学園生活  作者: はる
第3章 交流戦
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ファーストコンタクト

 「――じゃあ、準備はいい?」


 いつもとは違う引き締めた表情をとり、リンは全員に確認を取る。


 「はい、大丈夫です」


 リーゼロッテが堂々と応える。初めてだから、もう少し緊張するかと思っていたが、さすがは王族。全く緊張しているように見えなかった……が少し体が震えているのを、この場にいる全員が理解していた。

 しかし、そんな微笑ましいリーゼロッテの状態を見て、アリスたちは内心微笑ましく、表面上は緊張していますと表情を引き締めていた。


 「すでに他の生徒は会場に来ているわ。あとは私たちだけよ」


 今回の交流戦はサウス代表のアリスたちはもちろん、学園の代表たちの活躍を一目見ようと、わざわざイーストまで応援に来ている生徒もいる。そんな生徒たちもサウス学園の生徒なので、正式なメンバーでなくとも、パーティーに参加することは自由であった。ちなみにアリスとリーゼロッテの活躍を見ようとレンたちも応援に来ているようだ。


 「じゃあ、入るわよ」


 隣でリーゼロッテが息を飲むのがわかる。リンも少し緊張しながら、会場の扉を開ける。


 リンが会場の扉を開けると同時、サウスとイーストの生徒がこちらを向くのがわかった。それと同時に――


 「……ッ!」


 あり得ないほどの殺気にアリスは思わず身構えてしまう。

 殺気を放った人物を探していると一人、明らかにアリスを睨んでいる生徒がいた。


 (ただ学生がこれだけの殺気を放てるはずがない。ということは、アイツが一人目……)


 アリスの視線の先にはイースト特有の黒髪黒眼、しかし、一人だけ異様な雰囲気を出している少年がいる。彼が”神無月”の一人目で間違いないとアリスは結論づける。


 そして、その少年はいまだにアリスを睨めつけていた。


 (俺が”エルフリーデ”とわかっての行動なのか)


 アリスは隣にいるリーゼロッテたちに視線を向ける。リーゼロッテたちは直接殺気を当てられたわけではないが、殺気を向けられていることには気づき、怯えるような様子を見せていた。

 しかし、意外だったのが、リーゼロッテたちと同じような状況にもかかわらず、少年の殺気をものともしない人物がいた。それは――


 (この殺気を耐えるのか? 本当にこの人は何者なんだ?)


 アリスの目には、先ほど会場に入ってくるときと全く態度を変えないアシュリーが映っている。アシュリーは退屈そうに腕を組んでいた。


 (“氷王”の娘だからって仮にもまだ学生なんだぞ? あの殺気に耐えられるのは異常だ)


 ”神無月”の少年や自分のことを完全に棚に上げているアリスだが、アリスの考えももっともだ。”神無月”の殺気を耐えるということは、ほとんどの敵に対して臆することがないということだ。それはつまり、戦いで常に自分の実力を出し切ることができるといっても過言ではない。それだけでも戦いにおいては、かなりのアドバンテージを誇る。しかし――


 (殺気に耐えられるというのは二つ。一つは完全に殺気を感じることができない。もう一つが自分の実力を理解して、それだけの自信を持っているということだ)


 アリスが考えうる、殺気に耐えられるというのは二つしかないと思っている。その中で前者はまずあり得ない。リーゼロッテたちが殺気を感じることができているのにアシュリーだけがわからないということはまずない。ということは残る選択肢は後者――


 (アシュリーさんは恐らく、サウスの代表の中で一番実力がある……)


 もちろん、アリスには到底敵わないであろう。しかし、アリスを除いた代表メンバーの中では一番、それも圧倒的に強いであろう。あくまでアリスの考えだが、可能性としては十分にあり得ることであった。


 (となれば、交流戦ではアシュリーさんが”神無月”以外の誰かと当たると一気にこちらが有利になる)


 そうなれば2対1となり、アリスたちが断然、有利な試合となる。あとは自分たち以外の誰かが勝てば、サウスの勝利となるだろう。もっとも、アシュリーの実力次第だが。


 「……ッ!」


 アリスが考えていると、今度は少年の反対側、つまり背後のから再び殺気がアリスに放たれた。


 (……ッ!? なんだ、この殺気はッ!?)


 先ほど少年が放った周りを威圧するような圧倒的な殺気ではない。静かに、ただアリス一人だけを狙って放たれた殺気である。その証拠に先ほどとは異なり、リーゼロッテたちは背後の殺気に気づかず、未だに少年に放たれている殺気に萎縮している。


 アリスは思わず振り向いてしまった。そして、その先にいたのは――


 (女の子?)


 この国では珍しくないアリスと同じ黒髪黒眼、そして笑顔でアリスに視線を送っている少女が立っていた。

 一見、アリスに威圧を放っているようには見えない……というよりも、そのような素振りすら向けていない。しかし、確実にこの少女しかあり得ない。何故なら、自分たちは・・・・・会場に入った・・・・・・ばかりで背後に・・・・・・・人がいるはずも・・・・・・・ないのだから・・・・・・


 本来、そこにいるはずのない少女。その少女に視線を送っていると、何やらアリスに向かって話しかけている。正確には何かを伝えようとしていた。


 (……なるほどな、そういうことか)


 アリスは少女の口の動きだけで、少女が伝えたかったことを瞬時にとらえる。少女もアリスが自分が伝えたいことを理解したことを確認して再びアリスに笑顔を向けた。


 アリスは今でも少し少年の威圧に萎縮しているリンに話しかける。


 「リンさん、少し自由時間をもらってもいいですか」


 「え、ああ、別にいいわよ。特にすることもないからパーティーが終わるまで好きにしていいわよ」


 若干、この空気中で普段通りのアリスを見て戸惑っていたようだが、生徒会長としての威厳を保ちながらアリスに応えた。


 リンから許可をもらったアリスは会場の一点を見据える。そこは会場の外へと続くバルコニーへのガラス張りの扉であった。


 (じゃあ、行くとするか……)


 そうして、アリスはバルコニーへ足を運ぶのであった。


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