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精霊殺しの学園生活  作者: はる
第3章 交流戦
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移動にて

 「ついに、この時がやってきたか……」


 アリスは馬車の中から外の景色を見て呟く。


 辺り一面に広がる緑、人気ひとけがない地、サウスとイーストを繋ぐ豊かな自然の中をアリスたちは馬車に乗って駆け抜けていた。


 (平和だなぁ……)


 争い事を感じさせない風景を見ていると、今から自分が任務を行おうとしていることをついつい忘れてしまう。実際はそんな任務などは存在しないのだが。


 「緊張するね、アリス?」


 隣には緊張しているのか、体を小刻みに震わしているリーゼロッテ。生まれたての子鹿のようなリーゼロッテにアリスは思わず苦笑する。


 (でも、リーゼロッテと一緒に出られたものだ。普通、1年は一人なのにな)


 アリスとリーゼロッテの同時選出というのが、そもそもあり得ない話なのだ。リーゼロッテは代表戦で決勝まで勝ち残る実力を見せた。しかし、その時は生徒会のメンバーはリン以外、通常戦の参加で代表戦には参加していなかった。それでも、生徒会の実力が他の生徒と比べものにならないのは、誰もが承知の上だ。いくらリーゼロッテが優秀な成績を残そうとも、交流戦の代表に選ばれるのは疑問に残る。リーゼロッテには失礼だが、ランを出す方が勝率は高くなるだろう。


 (普通に考えればわかることだ……ならば、誰かが仕組んだ? 一体なんのために……?)


 そうなれば、誰かがこうなるように仕組んだとしか、アリスは思わずにはいられなかった。じゃあ、誰が? そんな疑問が残る。


 (リンさんが俺のことを知ったのは最近だ。恐らくミュアさんたちも。リーゼロッテも無関係だろう。そもそも、する意味がない……ん? そういえば……)


 アリスの頭に一つの可能性が浮かび上がる。


 自分のことをよく知っている人間、その人と深く関わりがある人物。そして、自分の実力を見せずして決闘を棄権した人物が。


 (もしかして、アシュリー・・・・・さんが?)


 自分の正体を知っているエルザの娘であり、代表戦に参加せずに通常戦に参加し、決勝を棄権して実力を明らかにしなかった人物、アシュリーしか、このようなことはしないだろう。しかし、なんのために。それだけが、アリスにとって疑問だった。


 アリスは自分とは向かいの席に座るアシュリーに視線を向ける。アシュリーは何もすることがなかったのか、目をつぶってうつむいていた。


 (普段からは考えているようには見えないけどな……意外と考えているか? 今度、機会があったら聞いてみるか)


 いくら考えても事実は変わらない。事実を確かめたいなら本人に聞くしかない。アシュリーがやったのかは不明だが、何もしないよりかはマシだろう。


 (学園長の娘というだけあって人を扱うのは得意か? 将来、”エルフリーデ”になるかもしれない人物が二人……か。やっかいな人たちがいるな……)


 アシュリーも恐らくは”エルフリーデ”になれるであろう実力を身につけるのではないかとアリスは考えている。リンも才能は十分にあるので、あとは努力次第といったところか。


 「……ねえ、アリスってば!」


 どうやら、考え事に集中しすぎていたらしい。アリスはリーゼロッテに耳元で話しかけられて、ようやく気づいた。


 「ああ、ごめん。どうしたんだ?」


 「だから、緊張するねって!」


 リーゼロッテが頬を膨らませながらアリスに近づく。アリスから見て、全く緊張しているようには見えないのだが。先ほどの子鹿のように震えていたリーゼロッテはどこへ行った?


 「いや、緊張しているようには――」


 「緊張するねっ!」


 「いや、だから――]


 「緊張するね・・・・・・


 「……はい」


 あまりの気迫にアリスは素直に頷くしかなかった。誰が否定することができるだろうか。答えは否だ。誰もできない。それほどの気迫が今のリーゼロッテにはあった。


 (下手したら、ファフニールたちよりも威圧があるぞ?)


 アリスが今まで相手にしてきた強敵、ファフニールや麒麟たちよりも、はるかに強大な敵にアリスは身震いする。戦闘でもここまで緊張したことがないのに、今のこの状況はなんだ? 今のリーゼロッテであれば、ファフニールぐらい、楽に勝てるのではないかと思うほどである。


 (これだったら交流戦も安心だな)


 しかし、心配なこともある。普通の生徒であればリーゼロッテでも互角の戦いが臨めるだろう。しかし、”神無月”――アリスのような相手ならば先日のローラン同様、軽くあしらわれてしまうだろう。しかも、相手は二人ときている。仮に一人をアリスが相手したとしても、もう一人はこちらの生徒の誰かが相手しなければならない。もし、勝てる可能性があるとすれば、まだ実力を見せていないアシュリーぐらいだろうか。


 しかし、アシュリーが相手したとしても、相手の契約精霊は王級、神獣精霊なのだ。彼らは他の精霊とは格が違う。例えアシュリーが最上級の精霊――幻獣や竜精霊と契約していたとしても、”神無月”に勝てる可能性は限りなく低いと言ってもいい。それだけ王級、神獣精霊の力は別格なのだ。


 (俺が負けることはまずない。となると、最初から一勝一敗が確定しているのか……つらい勝負になりそうだな……)

 

 相手の二人は”神無月”と確定している。だから、今回の交流戦はいかに他の生徒に勝てるかが重要となる。

 もちろん、代表に選ばれるだけあって実力もかなりのものだと考えられる。しかし、こちらの生徒もかなり優秀なので、そこまで心配することはなかった。


 (俺がどちらかを相手できればいいんだがな……)


 遠くない未来を心配しながら、まだ先が長い道のりの中、アリスは深い眠りについた。


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