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精霊殺しの学園生活  作者: はる
第3章 交流戦
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代表決定

 その後の決闘の結果は言うまでもなく、アリスの圧勝であった。


 ローランが精霊武装を展開するも、アリスはその場から全く動かずにローランの攻撃を防いでいた。

 ローランが絶望したような表情を見せたところでアリスはローランの懐に潜り、強烈な一撃を放って戦闘不能にさせた。もちろん一撃で。

 そして、リンの#思惑__おもわく__#通り――


 「あんな奴に勝てるわけがない!」


 「棄権だ! 棄権する!」


 あっさりと参加者は棄権した。


 ランキング5位ローランが初戦敗退、それも圧倒的な実力差で。誰もがローランの代表入りを疑わなかった。しかし、結果はどうだ。無名の1年が優勝候補を打ち破る。前代未聞の事態だった。その決闘で参加者たちは自分ではアリスに勝てないことを悟ってしまった。しかし、棄権したのは負けるからという理由ではなく――


 (((あんな悪魔の相手をしたくない――ッ!)))


 決闘の最後、ローランが見せたあの表情。それに対し、笑顔を浮かべるアリス。いつでもとどめを刺せたにも関わらず、相手が絶望するまであしらい続ける行為。それは生徒たちにとっては悪魔のように見えた。以前のグレンもアリスは今のように見えていたのだろう。


 よって、参加者全員がまさかの初戦から棄権して、アリスが代表となった。そして――


 「アリスの代表入りを祝して、乾杯ッ!」


 「「「乾杯ッ!」」」


 生徒会室で祝勝会をしていた。リンが紙コップを片手に持ち、祝勝の言葉を述べている。


 「まさか本当に勝つなんてね……」


 「当然です! だって、アリスなんですから!」


 呆れながらアリスを見つめるミュア。それに対して、自慢するように言うリーゼロッテ。


 「でもいいの? ランも出たかったんじゃないの?」


 「ああ、別にいいよ。来年もあるし」


 ランに問いかけるアシュリー。そして――


 「……そんなに祝うほどのことですか?」


 「あたりまえよッ!」


 あまり乗り気ではないアリスにリンは応える。


 「いい? アリスはランキング5位のローランに勝ったのよ! 代表に選ばれたこともそうだけど、こっちもすごいことなのよ? だから、あなたをランキング5位にするか悩んでいるのよ」


 「えっ? 別にいらないです」


 「心配しないで。アシュリーも1年でランキング3位になっているから」


 そう言ってリンとアリスはアシュリーに視線を向ける。


 「……何よ?」


 無言で見つめるアリスにアシュリーは気になって問いかける。


 「いや、#一応__・__#、優秀だったんですね」


 「一応って何ッ!? これでも私は――」


 「はいはい。自慢話はそれぐらいにして、今は楽しみましょ」


 ミュアはアシュリーの言葉を強制的に遮る。ミュアに言葉を遮られたことにより、アシュリーは涙目になってミュアを睨めつける。


 「それより、アレ__・__#はどうやったの?」


 「#アレ__・__#とは?」


 身に覚えのないことにアリスは首をかしげる。


 「決まっているじゃない。#どうやって精霊武装を展開したの__・__#?」


 「……ッ!?」


 ミュアが興味津々といったふうに目を輝かせている。反対にアリスは表情を引きつらせている。


 「アリス! 私にも教えて!」


 「そうよ! 教えなさいよ!」


 リーゼロッテとリンもアリスの詠唱破棄での精霊武装展開に興味があるようでミュア同様、目を輝かせてアリスに近づいている。

 その様子にランは苦笑して、アシュリーは……未だに拗ねていて、生徒会室の端でうずくまっていた。


 (別に教えるのはいいんだけどな……今からでもできるのか?)


 アリスは詠唱破棄を教えることに不満はなかったが、詠唱破棄を実現するのに最も大切なこと、すなわちイメージをすることができるかが心配であった。

 詠唱破棄のやり方を教えてと聞いているだけで、どうやってやるかが理解できていない。もっと言えば、ここにいる生徒は優秀だ。故に今まで学んできたことを否定するのは難しいとアリスは考えていた。


 「わかりました。では、初めにですね……」






 アリスがリーゼロッテたちに詠唱破棄について教えて1時間、結果は――


 「”切り裂け”! あははっ! 楽しいッ!」


 一番に詠唱破棄ができたのはリンであった。リンは詠唱破棄で魔法を使うことが面白かったらしく、何度も魔法を使っていた。その様子をリンのライバルであるミュアは悔しそうに見ていた。

 その後、リーゼロッテたちも頑張ったが、詠唱破棄を実現させるまでには至らなかった。しかし、コツは掴んだようで、あともう少しで発動できる状態まで持っていくことができた。

 そして、意外だったのが――


 「アシュリーさんは詠唱破棄できたんですね」


 「当然よ。だって、元”エルフリーデ”の娘よ。やり方ぐらい教わった……じゃない、教え込まされたわ」


 アシュリーは昔の事を思い出したようで、体をブルッと振るわせ、顔を青くしていた。


 (アシュリーさんは普通に使えていたのか……だったら、リンさんの覚えがいいのも納得だな)


 元”エルフリーデ”のエルザから教わったアシュリーが詠唱破棄を使えるのだ。遺伝的にも使えたと言ってもいい。そう考えると、アレクシアの妹であるリンの覚えがよかったのも納得ができる。


 「大変でしたね」


 「全くよ……そういえば、アリスはどうやって詠唱破棄を覚えたの?」


 アシュリーは首をかしげながらアリスに尋ねる。


 「僕は立派な先生がいたんですよ」


 「先生? どんな人なの?」


 「また今度、教えますよ」


 (だって、クロノスたちに直接、教えてもらったからな)


 #この世__エデン__#で魔法と最も関わりが深い生き物は精霊である。さらに、人間の言葉を話せる精霊はほとんど存在しない。そんな貴重な精霊からアリスは毎日、魔法を教えてもらっていたのだ。下手な教師より魔法に関する知識をアリスは身につけていた。


 「なんで今度なの?」


 何故、今教えてくれないのかとアシュリーは頬を膨らませて、アリスを睨めつけている。

 

 はぁ、と少しため息をついてから――


 「エルザさんに聞いてみたらわかりますよ」


 アリスの言葉の意味がわからず、アシュリーは首をかしげる。誰に聞いても同じだろうと。


 「……? じゃあ、お母さんに聞いてみるか」


 仕方なしにアシュリーは諦め、エルザに聞くことにしたのだった。






 「あははははッ! 楽しいわ、これっ!」


 「……そろそろ、アレを止めてきたら?」


 「しんどいです。アシュリーさん、お願いしてもいいですか?」


 「嫌よ。絶対、私も実験台にされるじゃない」


 アリスたちは暴走したリンをどちらが止めるか、言い争っていたのであった……


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