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精霊殺しの学園生活  作者: はる
第3章 交流戦
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天地の差

 リンの助けがあり急遽きゅうきょ、代表戦最後の一人を決める決闘が行われることになった。リンが仕組んだことによって、アリスは第一試合、それもランキング5位が相手だ。


 ランキング5位――ローランがアリスに近寄り、耳元でささやく。


 「……悪いことは言わない。痛い目に遭いたくなければ棄権するべきだ」


 別にローランはアリスが心配で言っているわけではない。相手が1年生で戦う余地もない。時間が無駄だと判断しての行動だった。


 「心配無用です。勝つのは僕ですから」


 「ちっ、なめやがって」


 完全に馬鹿にされたと思ったのだろう。ローランはアリスに対して敵意をむき出しにしている。


 「たかがオーレット家の長男に勝ったからっていい気になるなよ? 俺はそいつとは格が違うぞ」


 「大丈夫ですよ。彼にも言いましたが、所詮学生の決闘・・・・・ですから」


 何を意味がわからないことをとローランは思ったが、アリスの相手をするのも面倒くさくなったのか、興味を失ったようにアリスから離れる。


 「精々、最後まで足掻くんだな」


 ランキング5位とはいえ、学生ごときにアリスが不覚を取るはずはないのだが。


 「では、ルール確認です。先に相手を戦闘不能にした者が勝ちです。禁止事項はありません。それでは――ッ!」


 アリスとローランは構える。ローランも相手が1年生と馬鹿にしておきながら、油断はしない。この些細な気配りができるからこそ、ランキング5位として彼を成り立たせているのだろう。


 「決闘開始ッ!」


 「”身体――」


 「”貫け”――ッ!」


 決闘開始と同時、ローランは”身体強化フィジカルアビリティ”を使おうとするが、先にアリスが魔法を完成させたことによって中断させられる。アリスが詠唱破棄で放った”ライトニングスピア”はローランの頭を貫こうとする。


 「ちぃっ!」


 いくら”身体強化フィジカルアビリティ”が重要であっても、上級魔法”ライトニングスピア”をくらってしまえば、強化魔法があったとしても容易く戦闘不能にさせられてしまう。


 間一髪でアリスの”ライトニングスピア”を避け、ローランはアリスを睨めつける。


 (こいつ、ただの1年じゃないな。確かに大口を叩くだけのことはある。油断をすれば、逆にこっちが狩られるだろう……)

 

 今の一瞬でローランはアリスに対しての考えを改める。あの精度、詠唱破棄での上級魔法の使用。さらに、なんの躊躇もなく頭を狙ってきたこと。並の生徒ではできないことを平然とやってのけたアリスにローランは戦慄する。


 (相手に不足はない……か。なら、俺も本気を出さないとな……)


 アリスを認めたローランはアリスを倒すべき好敵手と見なし、精霊武装を展開して勝負に出ようとするが――


 「”来いっ、クロノス”!」


 アリスは右手をかかげて叫ぶ。一瞬、ローランだけではなく決闘を観ている生徒でさえ、何をしているのかわからなかった。しかし、次の瞬間――


 「「「な――ッ!?」」」


 アリス以外の全員、目の前の出来事に目を見開く。何故なら――


 (無詠唱での精霊武装展開だと――ッ!?)


 ローランは何度も目を疑うが、目の前の出来事は事実だ。何度見直しても結果は変わらない。常人にはできないことを平然とやってのけるのが”エルフリーデ”、そしてそれがアリスなのだ。


 正確には詠唱破棄なのだが、ローランからしてみれば詠唱破棄も無詠唱もあまり違いがないようだった。


 そして、目の前の光景に目を疑う二人。それは――


 「えっ!?」


 「アリスの精霊武装の形状ってあんなのだっけ?」


 リーゼロッテとリンは以前、アリスが見せた精霊武装――〈闇を貫く王剣ヴォーパルソード〉の形状が違うことに気づいた。


 精霊武装は自分に合った武器に、無意識・・・に形取るようになっている。が、言い換えれば、意識をすれば自分で精霊武装の形状を変えることができる。イメージの具現化こそが魔法の発現。魔法の一つである精霊武装も例外ではない。


 今のアリスの〈闇を貫く王剣ヴォーパルソード〉はいつもの短剣よりも長い――約1メートルほどの誰でも扱いやすい長さの剣となっていた。


 目の前の相手を見て恐れているローランに、アリスは〈闇を貫く王剣ヴォーパルソード〉の剣先を向ける。


 「はやく精霊武装を展開してください」


 「……なめているのか?」


 この状況では、そう思っても仕方がない。しかし―


 「違いますよ。だって――」


 アリスはローランに笑みを浮かべる。それは非常に邪悪な――


 「これは見せしめ・・・・・・・なんですから・・・・・・――」

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