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精霊殺しの学園生活  作者: はる
第3章 交流戦
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交差する思い

 アリスは生徒会室に着くと、ドアのノックして中に入ろうとする。


 「失礼します。アリス・ロードです」


 「どうぞ」


 中から返事が返ってくる。リンの声だ。運良く、リンは生徒会室にいたようだ。


 アリスが中に入るとリンだけではなくミュアもいて、なにやら会議をしているようだった。


 「こんにちは、リンさん。話したいことがあるので少しの時間いいですか?」


 「ええ、いいわよ」


 「交流戦のことなんですが……」


 ピクッ!


 心なしか、少しリンの身体が反応したように感じられた。しかし、アリスは特に気にした様子はなく、話を続ける。


 「僕とリーゼロッテで出たいと思うんですが――」


 バンッ! と机を叩き、リンは立ち上がる。突然のことにアリスは驚いて反射的にリンから距離を取ってしまう。


 (待ってました、神展開! アリスの方から出たいって言ってくれるなんて!)


 まさかのチャンス到来にリンの気分は最高潮であった。しかし、リンが参加資格を与えるのは当然として、重要なのはその他――ミュアや学園の生徒を納得させることだ。一歩間違えればアリスの参加は認められない。ここは慎重に。まずはミュアを説得することが先だ。


 「でもね、アリス。普通、1年生は一人しか出ないのよ、ルール上。それに、あなたは代表生を相手する実力は持っているの?」


 やはり、ミュアはアリスの出場を快く思っていないようだ。本当に出るのとアリスに疑わしそうな視線を向けている。


 (ここでこそ私の出番! 何かいい案は……あっ! これなら!)


 「じゃあ、決闘であなたの実力を見せたらどうかしら?」


 見掛けは冷静に、内心は喜びながら、リンはこの場にいる全員に提案する。


 「僕はそれでいいですよ」


 当然のごとく、アリスは賛成する。肝心のミュアは――


 「……それでもいいけど、時間がかかるわよ?」


 「大丈夫! 私にいい考えがあるから!」


 自信満々にリンは立ち上がる。リンの様子にミュアは疑わしそうな視線を向けているが。


 (ふふふ……これならアリスを代表にできるわ。それも一発で……ふふふ、アリスが”エルフリーデ”の人間でよかったわ。普通の人ではできないもの)


 リンは不気味な笑みを浮かべる。その笑みにアリスたちは若干、引いていた。


 「さあ! 決まったなら早速、実行よ! アリスは話があるから残ってちょうだい。リーゼロッテは……どうする?」


 「私も気になるので残ります」


 「そう、じゃあ、ミュアは先に帰って。決まったら、また連絡するから」


 「わかったわ。でも、ちゃんとするのよ?」


 「わかってるって! 任せなさい!」

  

 いまいち信用がないが、リンがここまで言っているのだ。ミュアは任せることしかできなかった。


 「じゃあ、先に帰るわね」


 「お疲れ様です」


 ミュアを見送り、アリスたちは椅子へと座る。


 「で、具体的にどうするのですか?」


 「ふふ、アリス君。ちなみに”アリア”って知ってる?」


 ギクリッ!


 アリスだけではなく、リーゼロッテも顔を強ばらせてしまう。その様子を見て、リーゼロッテは安心する。


 「二人とも、その反応ってことは知っているのね? じゃあ、心置きなく話せるわ」


 「あのー。どういうことでしょうか?」


 「大丈夫、お姉ちゃんから聞いているから」


 リンの言葉でアリスは一瞬で理解する。


 (あの馬鹿アレクシア……今度、問い詰める必要があるようだな……)


 アレクシアは本当に余計なことしかしない。アリスの頭にアホそうなアレクシアの表情が嫌でも浮かび上がる。


 「……はぁ、もういいです。ちなみにリーゼロッテも知っているので普通に話してもらって大丈夫です」


 観念したように、諦めたようにアリスは応える。秘密にしているはずなのだが、これ程早くばれるのは、どうしてなのだろう。アリスは不思議で仕方がない。


 「わかったわ……それでね、考えというのは……」


 「「ゴクリ……」」


 リンの言葉にアリスとリーゼロッテが息をのむ。そして――


 「アリスが相手をボッコボコにするのよ」


 シーン


 生徒会室が静寂に包まれる。


 最初に、その静寂を破ったのはアリスである。


 「え、ええっと、どういうことですか?」


 「そのままの意味よ!」


 リンが胸を張る。リーゼロッテやティリカたちとは違う豊かな胸を失礼にも比べてしまった。誰と? 言わなくてもわかるだろう。


 「痛っ!」


 アリスが横を見ると、アリスの右腕をリーゼロッテが思いっきりつねっていた。その表情は――


 「……何か失礼なこと考えてない?」


 完全に怒っている。何故? 何も言っていないのに? 


 (考えていることがばれた? そんな馬鹿な! 表情には出していない……はず)


 「いえ、何も考えておりません」


 思わず敬語になってしまう。しかし毎回、何故ばれるのかとアリスは不思議に思うばかりだ。


 「……ふーん、どうでもいいけど」


 絶対にどうでもいいという表情ではない。完全にアリスを睨めつけている。しかし、アリスに為す術はない。


 「……夫婦喧嘩は他所よそでやってくれない? それよりも話を戻していい?」


 アリスたちの行動を見て、リンはいらいらとしていた。「リア充め……」と恨めしそうに呟いていた。対するリーゼロッテは「夫婦だなんて……」と顔を赤くしている。

 

 「すいません。で、僕が相手をボコボコにするとは?」


 アリスに聞かれたリンは、待ってましたとあごに手を当てながら――


 「君は”エルフリーデ”の人間なのであろう? だったら対戦相手の一人ぐらい、軽くつぶせるだろう? 君の初戦には、その中で一番強いであろう生徒を相手にしてあげるよ。そして、君が完膚なきまで相手をボコボコにする。それを見た他の人は君を恐れて辞退する……ああ! なんと完璧な作戦なのであろう!」


 リンはどや顔で語るが――


 (この人、本当に生徒会長なのか? さすがに辞退しないだろ? この人が生徒会長で成り立つのか……ミュアさんがいるから大丈夫なのか)


 作戦とも言えない作戦にアリスは呆れてしまう。リーゼロッテもリンがこんな人だったのかと失望している。


 アリスは静かにリーゼロッテの肩に手を乗せる。


 「この人も結局、馬鹿アレクシアの妹だったんだよ……」


 リーゼロッテはアレクシアについてあまり知らないはずだが、アリスの言い回しでなんとなく納得した。そして応える。


 「遺伝って怖いね」


 笑顔で応えるリーゼロッテ。しかし――


 (お前も親バカアルベルトの遺伝子を受け継いでいるんだぞ……)


 リーゼロッテにも十分、不安要素はある。アリスはリーゼロッテの将来を心配するのであった。


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