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精霊殺しの学園生活  作者: はる
第2章 調査
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過去

 「……俺は昔、仲間を殺したんだ」






 ”エルフリーデ”に所属する少年――アリスは今回の任務で初めてチームを組むこととなった。


 この時のアリスは13歳とかなり若かったが、すでに国の最大戦力として任務に出ていた。しかし、圧倒的な実力を持つアリスだったが、圧倒すぎる実力故に他人と協力したことがなかった。並の相手ではアリス一人で任務を完遂することができたのだ。

 一度だけ複数で任務を行ったが、その時は緊急事態で連携をとる練習をしていなかった。。その時も最後はアリスが単独で精霊を殲滅したのだ。それがその後、アリスが”精霊殺し”と呼ばれる所以になった事件だった。


 しかし、今回の任務は以前の事件よりも難易度が低い任務であったので、アリスも任務に同行することになった。


 だが、この時のアリスは、この任務で多くの犠牲を出すことになろうとは知らなかった。






 「ぐああああぁぁぁぁーーーー!」


 「な、なんなんだ、こいつら!」


 「くそっ! こんなの聞いてないぞ!」


 今回の任務に同行していた人たちがパニックになったかのように声を上げる。


 今、彼らの目の前には精霊に取り憑かれた獣――精獣たちが立っていた。


 精獣とはその名の通り、精霊に取り憑かれてしまった獣の総称だ。通常、精霊は人間と契約するのだが、人間以外にも動物など人間以外の生物と契約することがある。それだけならまだいいが、人間以外と契約した精霊は、その宿主の意思を乗っ取ることができる。もちろん人間にはできないのだが、知性が低い動物などでは乗っ取ることはたやすい。さらに乗っ取ることで、その精霊は乗っ取る前よりも強い力を得る。

 しかし、最も問題なのは大抵、乗っ取る精霊は人間を憎んでいたりする精霊である。だから乗っ取った後は人間を殺そうとする。今のように……


 アリスも精獣の相手をしていたが数が多く、さすがのアリスでも苦戦していた。


 (くそっ! こんな奴ら、俺の魔法で一撃なのに――)


 今のアリスは一体一体対処していたので残り魔力も少なく王級精霊魔法を使うことができなかった。しかし、いざとなった時の切り札を使えば対処することは可能だった。しかし、そこには問題が1つあった。


 (確かに精獣どもは倒せる。でもこいつらは……)


 アリスが切り札を使うことを懸念している理由、それは仲間を巻き込んでしまうことであった。


 (今の俺では使うことで精一杯だ。使ったら恐らくこいつらも……)


 アリスも知らないとはいえ仲間を殺すことはできなかった。その時、チームのリーダーであろう人がアリスの肩を叩き、話しかける。


 「……アリス。この状況を打破できるのはお前だけだ。やってくれ」


 「……いや。俺には魔法を使う魔力は――」


 「絶級魔法が使えるだろう」


 「……!?」


 アリスは驚く。何故この男が自分の切り札――絶級魔法を知っているのかと。


 「安心しろ。そのことは陛下から聞いている。……それに俺たちでは、この状況は打破できない。このまま戦っても全員死ぬだけだ。だから、お前だけでも残れ」


 「……でも!」


 「アリス。お前はこの国の希望でもあるんだ。こんなところで死んだら駄目だ。お前は生きて、この国を守るんだ。俺たちの分まで」


 「……」


 アリスは無言で周りを見渡す。リーダー以外の人も覚悟を決めた目をしていた。


 「覚悟はできている。だから、俺たちごとやれ・・・・・・・


 「……!」


 実際に言葉にされて、その重みに気づくアリス。アリスも決意したように拳を握る。


 「……一撃で仕留める」


 「ああ。頼んだぞ」


 アリスは残り少ない魔力を込め、魔法を放つ準備をする。リーダーの男はアリスの様子を無言で見つめていた。


 「……準備ができた」


 「ああ。やってくれ」


 アリスは右手をかかげて魔法を唱える。同時にアリスの身体が光に包まれる。

 アリスが魔法を唱えきる前に、リーダーの男はつぶやいた。


 「後は頼んだぞ。未来の英雄……」


 そしてついに、アリスの魔法が完成した。


 「”ジ・エンド”」


 瞬間、アリスから高熱量の光が放たれ、この場を飲み込んだ。






 魔法を放った後、この場にはアリス、ただ一人だけが残っていた。


 「はは、何が英雄だ。仲間を殺しているじゃないか……」 


 アリスは自分をあざ笑うかのようにつぶやき、力なくその場に座り込む。


 「大切なものを守るとか言っておきながらこの様か……」


 誰もいなくなった地でアリスは一人泣いていたのだった。






 「……まあ、こんな感じで俺は人……いや、仲間を殺したんだ」


 アリスは昔の事を麒麟に話した。


 「さらにな。俺はまだ、絶級魔法が扱えないんだ。はは、情けないだろ……」


 アリスは自分を煽るように言った。しかし、無言でアリスの話を聞いていた麒麟が口を開く。


 ”だが其方はその者たちの意思を守るために今もなお、力を求めているのだろう?”


 「いや、自分が守りたいものを守るためだ。結局は自分のためさ」


 ”自分のためとは言っておきながら誰かを守りたいと言っているではないか。それに日中は彼女らを守ったであろう”


 アリスは麒麟の言葉を無言で聞いていた。


 ”我もここを守っているから気持ちはわからんでもないな。……まあ、其方が大切なものを守れることを願おう”


 「俺を殺そうとした奴の台詞とは思えないな」


 ”あの時は真剣だったからな”


 「”水神”には手加減したのにな」

 

 ”……まあ、そういうこともある”


 麒麟は少し後ろめたさそうに言う。


 ”我もストレスが溜まることがある。たまたま其方に当たっただけだ”


 「すっごい迷惑なんだが」


 ”わかっておる。だが其方は本気の我に一撃を入れたではないか”


 「それもそうだな。……よしっ! 俺もそろそろ寝るわ」


 ”ああ”


 寝床に戻るアリスを麒麟は無言で見ていた。


 ”ふっ。守りたいもののために、か。これからの其方の未来が楽しみだ……”


 アリスが見えなくなると、麒麟もその場から姿を消した。


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