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精霊殺しの学園生活  作者: はる
第2章 調査
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麒麟3

 ”…汝ら。何をしにここに来た”


 「「「は?」」」


 麒麟の思いがけない言葉にアリスたちは腑抜けた声を出してしまった。


 それも無理はないだろう。今まで麒麟は自分たちを殺しに来ていたのだ。そんな相手が急に話をしようとしてきている。この状況を理解するのは難しいだろう。


 アリスは警戒を解かずに麒麟に対して敵対の意思を見せる。


 ”もう、汝らと戦う意思はない”


 そう言って、麒麟は自信に纏う雷を完全に消し去る。


 「……どうして急に話を聞くようになったんだ?」


 アリスは警戒心を示しながら麒麟に問う。もしかしたら、油断させてこちらを攻撃しようとしているのかと考えて。


 ”汝は我と命がけで戦ってきた。今もその少女たちを守るためならば、自身の命をもって我を倒しに来るだろう。故に汝がここを荒らした者ではないと判断したのだ”


 麒麟は正気を失っているわけではなく、アリスたちがこの地に害を為す者か試していたのだ。アリスの決死の覚悟を目の当たりにして麒麟は、アリスは害がないと判断した。


 アリスは完全に警戒心を緩めたわけではないが麒麟と話すことを決意した。


 「……そうか。では、一つ聞いていいか?」


 ”……なんだ?”


 「1ヶ月前、この地に封印されていたファフニールの封印が解かれたのは知っているだろう? その場所まで案内してもらいたいのだが?」


 ”……よかろう。その場所まで案内しよう”


 案外、話がすんなりとできたことにアリスは腑に落ちなかったが、結果としては十分だった。負傷してしまったが、ようやく今回の目的の場所にたどり着けそうだった。


 すぐにファフニールが封印されていた場所に向かおうとしたが、アリスは急に足を止める。


 「……待ってくれ、シェリル。ちょっと治してくれ……」


 アリスは朦朧もうろうとする意識の中、シェリルに告げる。


 今まで警戒心を持っていたのでアリスは自身の状態など気になっていなかった。しかし、警戒心を解いた途端、自分の状態に気づいたのだろう。アリスは急激なめまいに襲われていた。


 (うっ、もうだめだ……)


 アリスが意識を失う瞬間、最後に見たのは焦った様子のアレクシアとシェリルの姿だった。






 (うぅ……。あれからどうなった?)

 

 アリスが気絶している間、シェリルの治療によりアリスは体を動かせるまでに回復していた。体を起こすとアレクシアたちがアリスの容態を心配してくる。そこで発した最初の言葉は――


 「まだ寝てなさいよ! あなたが意識を失ってから3分しか経っていないのよ!」


 アレクシアの言葉によって自分がどれくらいの時間、気絶しているかがわかった。しかし、アレクシアの制止を聞かずにアリスは立ち上がる。


 「ちょっと! アリス!?」


 「わかってる。でも休んでいる時間が惜しいわ」


 アリスは一度寝て冷静になったのか、自分の声をアリア・・・のものに変えて答える。


 「麒麟。封印されていた場所まで連れて行ってくれる?」


 ”……我はいいが怪我の方はいいのか?”


 「ええ。もう十分に休んだから」


 ”……汝は我の攻撃を受けて何故、もう動けるのだ?”


 「何故って”水神”も動けているじゃない」


 ”……汝に対しては殺す気で放ったのだがな……”


 「ああっ!?」


 麒麟の思いがけない告白にアリスは素の声に戻ってしまった。なにしろ、下手をすれば自分は死んでいたのだ。……死ぬ気で戦っていたが。それはよいとしても、アレクシアに対しては加減して攻撃してたのに、自分に対しては殺す気で攻撃していたことにアリスは納得がいかなかった。


 ”ま、まあ、よいではないか。結果的には生きているのだから”


 「うーん……。まあそうね……」


 麒麟が言うこともあるのだが、アリスも麒麟を殺す気でいたのだ。いまさら麒麟が殺す気で攻撃したことに文句は言えなかった。

 

 「それより聞きたいことがあるの。封印を解き放った輩って言ったじゃない? 私たち以外にここに来た人がいるの?」


 ”うむ。汝が言う通り、セントラルに訪れた輩たちが来たのだ。其奴らは男女の二人組であった。男の方は封印を解きに行き、女の方は我が相手をしたのだが、かなりの実力者であってな。其奴一人に足止めをくらったのだ。そして、男が封印を解き終わるとすぐにいなくなったのだ”


 麒麟の話にアリスたちは頭を悩ませた。


 自分たち三人でも手こずった麒麟を一人の女性が相手をしていたのだ。そんな敵がいるとなれば国の脅威になるのは考えなくてもわかることだった。


 「そんな奴らが……。あっ。それともう一ついいかしら? どうして今、精霊が少ないの? 以前は入ってすぐに出会った記憶があるのだけど……」


 ”……精霊たち把握怯えておるのだ。我と戦った女も強かったが、封印を解いた男もかなりの手練れだったのだ。男も一人でセントラルの精霊たちを倒したのだ”


 それは上位の精霊であり、それより下の精霊は怯えて出てこないのだと麒麟は補足する。


 (思ったよりも大事おおごとだな……)

 

 事態はアリスが思っているよりも深刻だった。セントラルの精霊を圧倒する実力を持つ者がいると麒麟の話ではっきりしたからだ。


 (とりあえずやることは決まっている)


 「……サウスに帰ったら……」


 「はい。会議ですね……」


 「はぁ。面倒くさいことになったなぁ……」


 三人はサウスに帰ってからも仕事があることにうんざりとしていた。麒麟もそんな三人の様子を無言で見つめていた……






 ファフニール封印されていた場所に向かっていたが、思っていたよりも遠かったので今日は野宿をすることになった。


 「アリス。お休み」


 「お休みなさいです」


 「ええ。お休み」


 二人とも麒麟との戦闘で余程疲れていたのか、横になるとすぐに寝てしまった。


 (お休み……とは言ったが、まだ眠れないな……)


 アリスも麒麟との戦闘で疲れているはずだったが、全く寝られる気配がなかった。仕方がなかったので、立ち上がって近くにある川の岸に腰を下ろした。

 アリスは無心になって川に映る月を見つめていた。黒闇の中にひっそりと映る孤独な月は昔のアリスを連想させる。同時にアリスはある事件・・・・を思い出していた。


 ”どうした? 眠れないのか?”


 いつの間にかアリスの背後に立っていた麒麟が尋ねる。特に何かをしているわけではなかったが、金色の毛をなびかせ、暗闇にたたずむその姿はとても幻想的であった。


 「ああ。昔のことを思い出していてな……」


 アリスは俯きながら答える。暗闇のせいで表情はわからなかったが、その声は自身をあざ笑うかのようだった。


 ”ふむ。そうか。……其方。本気を出せば我に勝つことができたのではないか?”


 「はは。麒麟相手に手を抜いていたら死ぬだろう? 俺は始めから本気・・だったさ。ただ、全力・・じゃなかっただけだ」


 今度こそ自分をあざ笑いながら告げる。


 「今の俺では全力・・は出せないさ。……味方がいる限りな……」


 アリスは悲しげに告げる。今の言葉で昔のことを思い出したようだった。

 しかし、アリスは言葉を続ける。まるで自分への罰だと言わんばかりに……


 「……俺は昔、仲間を殺したんだ」

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