出発
買い出しを終えたアリスたちは出発のために王宮へと足を運んでいた。今、王宮の間は不穏な空気になっている。何故なら……
「……何故遅れた?」
「「アレクシアのせいです」」
「ちょっ!」
出発時間が予定よりもかなり遅れていたからであった。その原因は間違いなくアレクシアのせいである。
そんなことで今、アレクシアはアルベルトに問い詰められている。
「アレクシア……はぁ、いつものことか」
「はっ、もう無視して準備をした方が賢明かと」
「うむ、アリスの言う通りだな。よし、アリス、シェリル。準備を開始してくれ」
「「はっ!」」
「あれ? 私は?」
アリスとシェリルは頭を垂らしながら答える。アレクシアはアルベルトの言葉に自分の名前が入ってないことに疑問を覚えた。
「お前が準備をすることはないだろう? それよりも今から説教だ」
「えっ?」
アレクシアは気が抜けた声を発した。先ほどアリスが無視してよいと言ったからであろう。説教はないものだと思っていた。
「ふふ、何故遅れたか存分に聞かせてもらおうではないか」
「いややややああああぁぁぁぁーーーーー!」
アレクシアの悲鳴が王宮に響いたが、同情の余地はなかったためアリスたちは準備を開始した。
どれくらいの時間がたったのだろうか。準備を終えたアリスたちの前に、完全に気力を失っているアレクシアの姿が確認することができる。この姿を見てもアリスたちはアレクシアに同情することはなかった。
「……先が思いやられるが、アレクシアを頼んだぞ、二人とも」
「「仰せのままに」」
「私、一番年上なのに……」
「では、普段から年上らしい行動をするのだな」
「うぐ……」
さすがのアレクシアも正論を言われたため、反論することができなかった。しかし、怒られた後だというのにすぐに言葉を発するなど、なかなかの根性を持っている。
「では、行って来い。……くれぐれも無事で帰ってこい」
「「「はっ!」」」
そう言うとアリスたちは持っていた転移石を手に握る。そして転移石に魔力を流し、力一杯に転移石を握りつぶす。すると三人は光に包まれ、この場からいなくなった。
目の前が光に包まれる。そして、光が収まった時にはすでに王宮の中の景色ではなく、緑が生い茂る森――セントラルの入り口付近まで転移していた。
アリスたちはセントラルの入り口にたどり着くと、そこには強力な魔方陣が張ってあった。
セントラルは国から危険地帯と指定されている。腕が立つ者でもセントラルに入って生還できる人は少ない。そんなところに一般人が足を踏み入れれば命はないだろう。そのためにセントラルの入り口には常に結界が張ってある。
その結界を解除するためにアレクシアが手をかかげて魔法を唱える。
「”封印されし扉よ。今、汝の……」
「遅い。”解除”」
「ちょっと!」
アレクシアの魔法を遮り、アリスは魔法を唱える。すると入り口の封印は解かれ、セントラルの中には入れるようになった。
唖然とするアレクシアをアリスは呆れた目線で見つめる。
「なんでそんなに長ったらしい魔法を唱えているの? 第一、あなたも詠唱短縮できるでしょう?」
「だってかっこいいじゃん……」
かなりくだらない理由だった。この台詞にアリスたちはさらに呆れた。
(こどもか……)
(こどもですね……)
そんなアレクシアにアリスとシェリルの考えていることが一致する。身体的には一番年上なのに、精神的には一番幼いアレクシアに二人はため息をついた。
「「はぁ……」」
「なに、二人ともため息をついてるのよ!」
「「わかるでしょうに」」
「ち、ちょっと! なんでそんなに息が合ってるのよ!」
「「別にー。”水神”も考えたらわかるんじゃないですかー?」」
「あーーー! うるっさい!」
アレクシアが我慢できないといったふうに声を上げる。これから重要な任務のはずなのに、なんとも引き締まらない始まりであった。




