表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊殺しの学園生活  作者: はる
第1章 始まり
19/73

襲撃

 「「なっ!?」」


 リーゼロッテたちもファフニールを見て、動きを止める。


 (なんでこんなところに!?)


 リーゼロッテは過去の文献を読んで、ファフニールの存在について知っていた。しかし、封印されていたことも知っていただけに今、目の前にいるファフニールを見て、戸惑っていた。


 (私では、あれに勝てない!)


 見ただけで、リーゼロッテはさとってしまう。

 ファフニールは戦争中に猛威を振るった精霊だ。ただの生徒であるリーゼロッテに勝てる通りはなかった。


 (でも、ここで足止めをしないと――)


 リーゼロッテは会場の生徒を見る。生徒たちはファフニールを見て足をすくませてしまったのか、誰一人、逃げようとはしていなかった。もしくは今、動けば自分が標的になるのかと思っているのかも知れない。しかし、このままでは、生徒たちに被害が出るのは時間の問題だ。


 リーゼロッテは意を決し、リンに話しかける。


 「……先輩。このままでは、生徒に被害が出るかもしれません。”エルフリーデ”が駆けつけるまで時間稼ぎを手伝ってくれませんか?」

 

 「なっ!? リーゼロッテ! あなた、何を言っているかわか――」


 リンは思わず息を飲んでしまった。何故なら、リーゼロッテの決意が本気のものだとわかってしまったからだ。

 リンも頭の中ではファフニールに勝てないことは十分に理解していた。例え、時間稼ぎだとしても。しかし、このままではいけないこともわかっていた。


 「……わかったわ。でも、無理をしちゃ駄目よ。危ないと思ったら逃げなさい」


 「わかっています」


 リーゼロッテはファフニールに視線を向ける。


 「……行くわよ」


 「はい」


 リーゼロッテはファフニールに向かって駆け出す。それと同時に、リンはファフニールに向けて魔法を唱えた。


 「”アクアウェーブ”!」


 リンが〈死を呼ぶ大鎌デスサイス〉を振るうと、決闘場に巨大な波が出現し、そのままファフニールに向かって行く。しかし、リンが放った”アクアウェーブ”はリーゼロッテだけを綺麗に避けていた。繊細な魔力操作。さすが、学園最強と呼ばれるだけのことはあった。


 ”アクアウェーブ”がリーゼロッテを追い越すと同時に、リーゼロッテは”アクアウェーブ”の後ろに回り込み、ファフニールから自分の居場所をわからないように移動する。


 その後、”アクアウェーブ”がファフニールを直撃するも、大したダメージを与えた様子はなかった。しかし、ここまではリーゼロッテの予想の範囲内であった。


 「”セイントセイバー”!」


 リーゼロッテはファフニールに向けて魔法を放つ。”セイントセイバー”はリーゼロッテが代表戦で数々の相手を倒した魔法だ。もし結界がない状態で攻撃を受けたら、絶命するであろう威力を持っているが――


 キィンッ!


 リーゼロッテが放った”セイントセイバー”はファフニールの身体に当たると同時に、音を立てて打ち消されてしまった。


 「ちぃっ!」


 思わずリーゼロッテは舌打ちをしてしまう。防がれるとは思っていたが、まさか無傷とは。戦争時代の精霊の実力は伊達ではなかった。


 リーゼロッテは再び追撃を仕掛けようとするが――


 「グルアアァァーーー!」


 「……ッ!」


 ファフニールの羽ばたきによって叶わなかった。少し羽ばたいただけで、リーゼロッテは強力な風圧を受けてしまい、そのまま尻餅をついてしまう。


 次の瞬間――


 「……ッ!?」


 ファフニールはその巨体には似合わない猛烈なスピードでリーゼロッテとの距離を詰めてきた。


 その素早い動きにリーゼロッテは対処することができなかった。


 「リーゼロッテ!」


 リンが慌てて叫ぶがどうすることもできない。仮に間に合ったとしても、ファフニールにリンの攻撃は効かないであろう。どちらにしろ、リーゼロッテを助けることはできないのだ。


 リーゼロッテは最後の足掻きにファフニールの口に魔法を打ち込もうかとも考えたが、現実はそううまくはいかず、ファフニールは自身が持つ大きな爪でリーゼロッテを切り裂こうと腕を振り上げていた。


 (はは、最後の足掻きまでさせてくれないなんて……やっぱり無謀だったかな。でも、少しぐらい時間稼ぎができたよね……はぁ、もっと生きたかったな……)


 絶望的な状況だが、リーゼロッテは自分の行動に後悔はしていなかった。ただ一つ、挙げるとするならば――


 (ちゃんと好きって言っておけばよかったな……)


 リーゼロッテの頭に浮かぶのは3年前、精霊に襲われていた自分を救ってくれた少年の顔だ。少年は自分の危機に颯爽と現れ、精霊を倒してくれたのだ。


 (生まれ変わったら、今度はちゃんと言いたいな……)


 何もかもがゆっくりと見える。走馬燈というやつだろうか。リーゼロッテはゆっくりと目を閉じ、自分の最期を受け入れる――


 ――が、いつまで経ってもファフニールに切り裂かれる気配はない。それどころか、誰かに抱きかかえられる感触……つまりはお姫様だっこをされていた。


 恐る恐る目を開けると――


 (ああ、やっぱり、あなた・・・はこんな時でも……)


 リーゼロッテは目の前の少女を見つめる。今は少女の見た目をしているが、好きな少年・・の顔をリーゼロッテが見間違えるはずがなかった。リーゼロッテは目の前の光景に目を潤ます。


 (……ねえ、アリス・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ