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精霊殺しの学園生活  作者: はる
第1章 始まり
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通常戦

 アリスが特等席で話しているのと同時刻――


 「おぅ……やっと俺らの番か……なんか緊張するな」


 「何よ、だらしない。もっと、しっかりしなさいよ」


 「その言葉、そっくりそのまま返すわ」


 「……ッ! うるさいわねっ!」


 ティリカがレンの言葉に顔を真っ赤にしながら反論する。顔を真っ赤にしているティリカをレンは軽く受け流していた。


 今、決闘場にはレンたちを含む、約50人の生徒が集まっていた。

 魔法大会通常戦では人数が非常に多いために、いくつかのグループに分かれてバトルロイヤルが行われる。グループはAからHの8グループに分けられ、レンたちは第二試合、つまりBグループに所属していた。


 「それにまあ、1年生が少ないことで」


 レンは腕を組みながら周りの生徒を見渡す。


 サウス学園の制服はネクタイの色によって学年が分けられている。1年が赤、2年が緑、そして3年が青となっており、レンが見渡す限り、緑、青色のネクタイの生徒が大半でレン、ティリカを含めても赤色のネクタイを持つ生徒は限りなく少なかった。


 「当然でしょ。周りが2,3年生なのに、入学して間もない1年生が挑むわけがないでしょ」


 「じゃあ、俺らはどうなんだよ?」


 「あたしは強くなるために、ここに来たの。せっかくのチャンスを逃すなんて、ただの馬鹿だわ」


 ティリカは軽蔑するように、観客席から決闘を観ている生徒たちを見る。


 「さっきと言っていることが違うぞ?」


 「あくまで一般的な視点から言っただけよ。だけど、あたしからしたら、なんのために学園に来たのって言いたいわよ」


 「ま、それは同感だ」


 「それにリーゼロッテは、もっと強い相手と戦うのよ。それに比べたら、通常戦こっちなんて楽な方よ」


 「それもそうか」


 レンはティリカの言葉に頷く。


 「まあ、最初から負けるなよ?」


 「誰に言っているの? それより自分の心配をしたら?」


 「生憎、ここで負ける気はないんでね」


 「それはあたしもよ」


 二人で話していると、審判が決闘場にやってきた。そしてそのまま、決闘のルール説明を始める。


 「ルールは最後まで立っていた五人が予選突破となります。使用する魔法は自由、武器の持ち込みも可能です。なお、この結果内ではダメージは精神ダメージに変換されるので、怪我をすることはないので、思う存分戦ってください。それでは、決闘の準備をしてください」


 「……絶対、勝ちなさいよ」


 「あたりまえだ。そっちも勝ち残れよ」


 それだけ言うと、二人は互いに背を向け、事前に決められていた自分の定位置へと移動した。


 定位置に移動すると、レンは再び、周りの生徒を見渡した。


 (ティリカは勝てるかも知れないが、俺はどうかなぁ……まっ、言ったからには、やるしかないか)


 レンは自分を落ち着かせるために、背伸びをしながら深呼吸をする。


 (まずは、1対1を優先して、無駄な戦いは避ける。後は、おこぼれを狙うくらいか)


 レンは決闘で自分がすべきことを確認する。そして、全員の移動が終わると、審判は確認をとり、決闘開始の合図をする。


 「……それではBグループの決闘を始めます。決闘開始!」


 審判が宣言をした瞬間――


 「「「”ファイアボール”!」」」


 「「「”ウォーターボール”!」」」


 多くの生徒が魔法を唱え、互いに攻撃し合っていた。一方、レンは――


 「”身体強化フィジカルアビリティ”!」


 強化の部類に入る”身体強化フィジカルアビリティ”を唱えていた。レンは以前のアリスの決闘を観て、”身体強化フィジカルアビリティ”の重要さを学んでいたのだ。


 (アリスの決闘を観ていてよかったな……)


 レンは周りの生徒を見渡す。一緒にアリスの決闘を観ていたティリカはもちろん、上級生でもかなり実力のありそうな生徒は、攻撃魔法を唱えずに”身体強化フィジカルアビリティ”を使っていた。


 (とりあえず、”身体強化フィジカルアビリティ”を使っていない生徒を落としにかかるか)


 レンは”身体強化フィジカルアビリティ”を行っていない生徒に狙いを定める。


 「”サンダーアロー”!」


 レンがかざした右手から電流の矢が放たれる。レンから放たれた電流の矢は一瞬で相手まで届き、相手に当たった瞬間、戦闘不能にさせる。

 レンが使った”サンダーアロー”は下級の魔法だが、人を気絶させるのには十分な威力を持っており、高速で相手に届くので、今回の決闘では非常に相性がよかった。


 その後も、レンは冷静に相手を一人ずつ”サンダーアロー”で打ち抜いていった。対するティリカは――


 「なぎ払いなさい! フレイヤ! ”ファイアウォール”!」


 いつの間にか、ティリカの隣には炎を纏う一匹のオオカミが立っていた。恐らく、ティリカの契約精霊であろう。ティリカは自身の契約精霊に命令して、精霊魔法で生徒たちを倒していた。


 精霊魔法とは自分の契約精霊に魔力を送り、魔法を行使させることで発動する特殊な魔法である。精霊魔法は人間が使う魔法よりもはるかに威力が勝るために、精霊と契約していることは非常に重要になる。さらに、精霊武装を展開することができれば、精霊に命令をする過程を省くことができるので、精霊魔法唯一の弱点を克服することができる。なので、精霊武装がいかに重要かがわかるだろう。


 (さすが学年5位……上級生ともやり合うのか……この隙に……)

 

 上級生にも引けをとらないティリカに感心しつつも、レンは自分の魔法を唱えることに専念する。


 「”汝、我のために今、我の矛となり、盾となれ”」


 それは精霊武装展開の魔法であった。なんとレンも精霊武装展開の魔法が使えたのある。レンの姉であるランが生徒会に所属していることから、ランもかなりの実力があるとみられるが、弟であるレンもその才能を引き継いでいたようだ。


 「”顕現せよ、我が契約精霊。レイ”!」


 精霊武装展開の魔法を唱えたレンの右手に、雷を纏う一本のレイピアが握られる。


 レンが精霊武装を展開したことに驚いて一瞬、立ち止まった生徒をレンは見逃さなかった。

 レンは相手との距離を一瞬で詰め、自身が持つ精霊武装――〈紫電の刺剣サンダルフォン〉で相手を貫いていく。


 そうして、生徒がレンに気をとられている隙に、ティリカも魔法を唱えて精霊武装を展開する。


 「”顕現せよ、我が契約精霊。フレイヤ”!」


 次の瞬間、ティリカの手には一本の槍が握られていた。その槍はティリカの契約精霊と同じように、赤く燃え上がる炎に包まれていた。

 他にも精霊武装が展開できる生徒を見て戸惑っている相手に対して、ティリカは手に持つ精霊武装を向ける。


 「さあ! 〈炎の槍ファランクス〉の錆になりたいやつはかかってきなさい!」






 しばらくして――


 「決闘終了! 勝者はレン・アルカディア! ティリカ・フール!……」


 「よっしゃ!」


 「やったわ!」


 二人は無事、最後の五人まで残っていた。ティリカはともかく、レンも残っていたことにはアリスも予想していなかったであろう。しかし、二人は緊張が解けたのか、嬉しそうに叫んでいた。


 「ふふ、ま、当然だな」


 「何言ってるのよ? あれだけチマチマ戦っておきながら。もっと派手に戦ったらよかったじゃない?」


 「なっ! お、俺はお前みたいに相手を一度に倒せる魔法を使えないんだよ……まあ、勝てたからいいじゃないか」


 「……それもそうね。おめでとう。正直、残ると思ってなかったわ」


 「またまた~ご冗談を」


 「いや、本当だけど?」


 「あっ!?」


 レンは心外と言わんばかりに声を上げる。その様子を見て、ティリカはクスクスと笑っていた。


 こうして、通常戦予選は無事、終わりを告げたのであった。

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