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精霊殺しの学園生活  作者: はる
第1章 始まり
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代表決定

 生徒会の勧誘を終え、アリスが教室に戻ってくると、すぐさまレンに話しかけられた。

 

 「おい、どうだった?」


 「どうだったって、普通だったよ」


 「そんなことは聞いてねぇ!」


 バンッと教室の壁を思い切り叩く。


 「俺が聞いているのはな……」


 レンはゆっくりとアリスに顔を近づける。


 「……女の子はいたか?」


 「……はあ?」


 何を言っているんだとアリスは冷ややかな視線でレンを見る。


 「だから、女の子は――」


 「聞こえてるよ。なんで、そんなことを聞くんだ?」


 待ってましたといわんばかりに、レンはアリスから距離をとる。


 「お前、そんな重要なことがわからないのか? かわいい女の子を見たいというのは当然だろう?」


 自信満々に言うレンの表情が、何故か気に障る。その様子を見ていたティリカたちも不快そうな視線を向けていた。


 「これだから男は……」


 (おい、俺も同じみたいな言い方をされたんだが?)


 冷ややかな視線を一転、アリスはレンを睨めつける。


 「で、女の子は何人いたんだ?」


 こいつは、この視線をなんとも思っていないのかと、アリスは思う――いや、女の子の方が気になるのだろうと訂正する。


 「四人だよ、四人――!?」


 瞬間、アリスはレンに首を掴まれる。その力は、ものすごく強く、さすがのアリスでも、声を漏らしてしまった。


 「ぐっ――!」


 「……お前、クラスの女の子では飽き足らず、ついには生徒会の女の子にも手を出したのか?」


 出していません。ついでに言うと、教室の女子にも出していません。


 「お前……羨ましいんだよっ!」


 レンが叫ぶと同時に、アリスの首に掛かる力が強くなる。


 「お前はなんて羨ま――」


 「いい加減にしろ!」


 ついに、アリスが切れた。アリスは自身の拳をレンの腹にねじ込ませる。


 「グハァッ!」


 アリスの打撃を受け、レンは見事としかいえない美しい放物線を描いて吹っ飛び、そのまま壁に激突した。そして、レンは動かなくなった。どうやら、気絶したようだ。


 「全く、本気で首を絞めるなよ。死ぬかと思ったわ」


 (((いや! あなたのせいで誰かが死にかけてますけど!?)))


 自分の首をさすりながら、つぶやくアリスに、生徒の心が一致する。


 「……あなた、容赦ないわね」


 「自業自得だろ。第一、俺は何もしていないのに、先に手を出したのはアイツだ」


 さすがのティリカでも、レンに同情した様子が見られたが、アリスは反省した様子を見せない。


 「あっ、そろそろ授業、始まるよ?」


 「そうだな。とりあえず、このゴミレンを持っていくか」


 「あはは……」


 なんとも酷い言われようである。まあ、先に手を出したのはレンなので、リーゼロッテは苦笑しかできなかった。


 アリスが席に着いたと同時に、ミーナが教室に入ってきた。ミーナは生徒を見渡し、告げる。


 「早速ですが、魔法大会での代表者を決めたいと思います」


 待ってましたというように、クラスの生徒は騒ぎ始める。


 魔法大会――それは年に一度行われるサウス内での大会だ。全生徒がこの大会に向けて魔法に励んでいるといっても過言ではない。何故なら、この大会の成績によって自分の将来が決まるからだ。


 魔法大会は誰でも参加可能な通常戦と各クラスから一人、優秀な生徒を代表として選出する代表戦がある。

 通常戦は誰でも参加可能というだけあって参加者が多い。だから、全員行っていたら時間がないので、初めはバトルロイヤル形式で一気に人数が減らされる。その後、1対1の決闘が行われる。

 これに対して、代表戦は最初から1対1の決闘が行われる。こうすることで、体力の消耗のことをあまり考えずに済み、全力で決闘に臨むことができる。ちなみに通常戦は1日、代表戦は2日の予定である。


 「はい、先生!」


 高らかと一人の生徒が手を挙げる。


 「はい、どうぞ」


 「私はリーゼロッテ様を推薦します」


 この生徒の発言を起点として、次々と生徒が立ち上がる。


 「はあ、何を言ってるんだ? 代表はティリカさんだろうが!」


 「そっちこそ何を言ってるのよ! このクラスの代表はリーゼロッテ様でしょ!」


 「あの、私はレン君がいいです」


 「あ、私も賛成。先生! 私はレン君を推薦します!」


 (なかなか熱心なことで……まさかレンも選ばれるとは……寝ているが)


 レンが寝ている(気絶している)のはアリスのせいなのだが……リーゼロッテとティリカが選ばれていることにアリスは感心する。


 (まあ、この二人のどちらかだな。レンは……落ちるか)


 厳しい評価であった。


 代表は二人のどちらかだなと思い、アリスは目を閉じようとするが、一人の生徒の発言によって妨げられる。


 「先生! 私はアリス君がいいです!」


 「ぶっ!」


 その生徒はリーゼロッテであった。全く予想していなかったことにアリスは戸惑ってしまう。


 (どうして俺なんだ……?)


 考えるが、答えは出ない。しかも、リーゼロッテはしてやったり、といった表情をしていた。まあ、どうせ選ばれないだろうと安心していると――


 「あっ、私も賛成!」


 「アリスで大丈夫なのか?」


 「何を言ってるの! アリス君はグレン君に勝ったのよ!」


 「まじかよ!」


 「優勝狙えそうじゃない?」


 「ていうかしそう」


 「よし、アリスにしよう」


 「「「賛成!!!」」」


 (……あれ?)


 全く違う結果となってしまった。


 (まずいな……代表は断らないといけないな……)


 アリスには魔法大会に出ることができない――正確には決闘に出ることができない。だから、なんとしても代表は回避したかった。


 アリスは断る方法を真剣に考える。そこで出した答えは――


 「すみません。その日は予定があって魔法大会に行くことができません」


 なんとも酷い言い訳であった。アリス自身、そんなことは、わかっている。結果は――


 「あら、そうですか。なら、仕方がないですね」


 あっさりと回避することができた。呆気ない終わり方だったが、成功は成功。内心ではガッツポーズをとりながら、アリスは席に座る。


 「うーん、じゃあ、誰にしましょうか?」


 ミーナは困ったように首をかしげる。


 「リーゼロッテさんかティリカさん、どちらかやってくれませんか?」


 「あたしはパスします。リーゼロッテ、あなたが出たら?」


 「え? 私?」


 リーゼロッテは戸惑い、周りをキョロキョロと見渡し、そして、アリスと目が合った。アリスは無言で頷く。お前ならできる、と――ただの責任転嫁だが。


 少し悩んだ後、リーゼロッテは決意した表情を見せ、勢いよくその場に立ち上がる。


 「先生! 私がやります!」


 「えっ、ホントに!? ありがとう! では、皆さん、代表になってくれたリーゼロッテさんに拍手!」


 ミーナが促すと、クラスメイトたちは立ち上がって拍手する。リーゼロッテは恥ずかしいのか、少しうつむいて顔を赤くしている。


 こうして、アリスたちのクラスの代表はリーゼロッテとなったのだった。






 「……アリス君。レン君はいつまで寝ているのかな?」


 「あっ、こいつの単位、落としていいですよ」


 「ふふふ、そうしますね。後、レン君が起きたら、教員室まで来るように言ってください」


 「わかりました」


 (((うわぁ、こいつがやったのに……こいつを敵に回すのだけはやめよう)))


 こうして、生徒たちの中で新しい決まり事ができたのであった。


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