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8_トキメクね武器は乙女のアクセサリ

「ほう」感嘆のため息をついているのは茜ちゃんです。一口づつ確かめるように、食事を進めていきます。小さな手で、スプーンを操って、可愛い口にちょこちょこ入れて行って、まぐまぐ、味わって、飲み込んで、そして、ポロリと溢れる涙です。

「ふえぇっ!」隣でそれを見ていた睡蓮さんがわたわたと慌ててしまいます。「あれ?味おかしかった?えとごめん、お子様ランチ進めて」パタパタジタバタ、あたふたと、所在なく手が動いていきます。

「じがうんでず、え”ど」少し落ち着くために、ドリンクバーのリンゴジュースを、こう、両手でコップを持って、こくこくと、飲み込む少女さんです。

「っと、落ち着きました。しばらくぶりでお口から食事をとっているので、いつも食べるたびに、その嬉しくて」

「へ?」

「こっちの世界に来るまで、長い間病院のベッドの上で。意識だけはある状態で身体が全く動かせ無くて」

「あーなるほど、そのパターンですか」小さく呟く二郎丸さんです。

「それで、いろいろあって、死にかけたところで、呼ばれたんですよ。こっちに来る途中でしょうかね?神様に身体を治していただいて、普通の人みたいに動いたり、食べたりできるようになって、なんでも新鮮で、感動ばかりしてるんです」はふうと、大きく息を吐きながら言っています。

「そうだったんですね、もう大丈夫ですよ、バッファリアではその手の難病とかも、貢献ポイントでなんとかなっちゃいますからね、というかもう治ってますね、さすが幼女でも神様」サクラさんが少し錯乱気味にフォローしています。

「そうか、それは良かったなあ。じゃあ、私のパフェもあげような」睡蓮さんが、自分が注文したデザートを進めます。

「ありがとうございます」ちょっと、恥ずかしそうに笑う茜ちゃんでした。

「柔らかい優しい世界、ですね。だけどちょっと歪かも?」シルフィさんがこそりと、隣にいる次郎丸さんに聞こえる程度の声で囁きます。

「そうですね、大丈夫でしょうか?」「多分?」


 荷物が増えてきましたので、一度住居に置いてから移動しませんか、と言うことになりました。

「テンプレートだと、無限のカバンとか、アイテムボックスとかありそうなのですが?」二郎丸さんが訊ねます。

「転移勇者の異能力にそのままズバリあったりしますよ。貢献ポイントでも引き換え特典としてありますね、ちょっとお高いですし、本人の魔力とか知力のステータスが容量に影響するので、効果的に運用するにはちょっとしたコツが必要になりますね」

「と言いますと?」

「能力をそれ専門に特化して、ポイントとステータスをつぎ込むとかでしょうかね?実際に運送系の業種にはそれを専門にしている方々もおられますよ。”日本”でいうと、2トントラックくらいの質量のものを運べるそうですよ?ただ、それと引き換えにして、他のことは、ほとんどできませんけど」

「へえ、ええと、容量?重さ?」

「どちらかに偏らせることも設定で、できますけど、それほど乖離はしませんね。理屈はよくわかりませんけども」

「便利そうですね」

「中の、荷物をどの程度保全するのか、拡張を極めると中の時間を停止させることができますね、とか、出し入れの方法を自動化するか手動に限るとか、生きているものを運べるのか、冷凍システムがあるのか、運搬物の重量軽減をどの程度行うか?みたいな、細かいチューニングもできますので、そこを含めて、運搬人の腕とされていますね」

「へえー」

「複数の貢献ポイントとの交換できる能力を組み合わせて、効果的に自分の欲求とか要望を満たすようにする、というのは、そういう、運送能力職人だけでなくて、結構一般的ですので、定番の組み合わせとか、ウィキにまとめられたりしていますよ。皆様も一度確認してみてもいいと思いますね」

「あるんだウィキ」

「想定外の組み合わせをされて、神様が慌てて修正したりすることもありますけど」

「それは、なんだかなぁ」「ポイントの返還とかお詫びポイントとかの配布でフォローしていますけどね」「ソーシャルゲームで似たようなものを見たことあるなぁ」

「まあ、サーバーがダウンして止まるようなことはないです」

「そこはさすが、幼女と言え、神様ということですか」

「いえ、神様のサーバが止まっている時は、この世界全てが止まるので、私たちが認識できないだけ、じゃないかな?とか神学の研究家が論文をまとめていました」

「ダメじゃないかな、それ?大丈夫かこの世界」


 一行は、荷物を各人の部屋に置いておいて、また街へと観光、違った施設紹介として、サクラさんい連れられて、外出します。

 今度は武器屋さんに到着です。

「魔物を狩るには、まず武器が必要ですよね、ここ、武器専門店『黒い市場』には、長短、遠近、各種対応の武器が一通り揃っていますよ」

「いや、サクラさん、その名称はわざとですかね」二郎丸さんがツッコミます。

「最初は小さな店舗だったんですよ、で初代がジョークで名前をつけたんですが、いつの間にかこんな規模になってまして。ちなみに各国に支店もありますよ?支店名は『大砲の弾』とか、『三人のピエロ』とかあります」

「ウェザー・レポートの方かよ!なら、ここの店名は『闇市』だろう」突っ込んだのは二郎丸さんです、意外と洋楽好きなのでしょうね。

「その店名だと、さすがに誤解される方が多そうでしたので、ちょっとひねってみた、そうですよ、あ、私この支店の店長でショーターと言います」

「だろうね!」濃い黒色の肌をしている、店長さんに突っ込む二郎丸さんです。

「わかる?」「いや、コアなジョークだということはわかるが?」「?」睡蓮さん、八兵衛さん、茜ちゃんは、それらのやり取りからは置いてきぼりのようですね。


「さて、武器ですが、お勧めは近接戦闘ですと、槍とかですかね?これを両手で持って遠い間合いから、グリッとか、ズブっとかするのが、最初の戦闘としてはお勧めです」ニコニコと物騒なことを伝えるサクラさんです。

「?技術的には鉄砲とかあって勧められそうかと思ったが?」八兵衛さんが首をかしげます。

「火薬とかギミックを使った飛び道具は、この世界なぜかステータスの恩恵を受けないのですよね、なので、速度、威力、精度すべてにおいて、自分の肉体を使った攻撃に劣ってしまうんですよ」

「ああ、そのテンプレートを使用しているんですね、つまり近代兵器無双はできないと」二郎丸さんが頷きます。

「そうですね、ニュークリアくらいを利用したら、壊滅戦とかはできるようですけど、別の理由でそれは禁じられていますし」

「ああそうでしょうね、環境的な問題がありますものね」

「いえ、核に対して、激しいくアレルギーを持つ、ヒステリックな団体が、この世界にありましてね、そこがうるさいんですよ。核兵器に関しては。核廃絶を訴えて、武力闘争も辞さないという構えでして」

「そうなんですか?」

「ノーモアヒロシマが合言葉です」

「そっちですか!ええと、そのネタは危なくないですか?」

「間違って文化を継承してしまった、異世界人のやることですから」ほほほと、笑ってごまかすサクラさんです。

「いや、間違いってわかっているなら正してください」


「そもそも、魔法に『ニュークリアブラスト』とか堂々と歴史的に存在していますから、今更という話なんですが。過去からの知識の蓄積で放射能の除去とかは、比較的簡単なんですよ。効果範囲を絞って、除去の方も工夫して、とかやれば、近代兵器でもかなりのダメージが期待できますけど」

「けど?」

「レベルを上げて物理で殴った方が、コストは安いし、高火力なのであまり使用している人はいませんね。だいたい、核爆発程度で落ちるのは、格下の魔物くらいですし?」

「レベル高いな魔物!」

「邪神様もいろいろ工夫してますから、最近は、ネットのネタバレ動画を参考にして、3回変態をして、口や背ビレからレーザーのような熱破壊光線を発射するドラゴンとか、出てきたりしてますよ」

「本当早いな!”日本”ネタを回収するの!ていうか、邪神さまも、ネットとか見てるんだ!」

「ちなみに、外見の特徴は、ショタ枠だそうですよ」

「心底どうでもいい!」

「映画館で元ネタを見たいから、って、かなり無理して異世界転移?降臨とかしたみたいです」

「自重しないスタイルだな、まあ、邪神らしいか?」

「向こうで、幼女神様とばったりあって、気まずい思いをしたとか、こちらの神学研究グループが観測したみたいですけど」

「お前もか、幼女神様!」

「映画館で、一緒に発声していたりしたそうです」

「実は仲良いだろ!そいつら!」

「次は僕らも中身入れ替わってみるか?とか帰りの喫茶店でパンフ見ながら話していたとか」

「そっちも見たのかーい!」



「あっちの漫才はほっておこう」シルフィさんが、他の三人を連れて、店長に店内を案内させます。

「先ほど、サクラ姫もおっしゃれていましたが、近接武器を扱ったことがなければ、まずは槍をお勧めしますね、値段も手頃でございますし」ショーター店長さんが、手に取ってもいいですよ、と商品を勧めます。

「あ、意外と軽い」茜ちゃんが、自分の身長の倍ほどもある赤い槍を手にとって、その軽さに驚いています。

「ステータスの恩恵がありますから、十分にレベルが上がっていると、結構重いものも持てるようになりますよ?ちなみにその槍で重さが20キログラムくらいでしょうか?」

「ほう?MKS単位系なんだな」八兵衛さんが確認します。

「便利ですからね、寸尺とか貫とか、升とかも趣味で使われていたりもしてますし、好みでポンドヤードの方へ行かれる方もおられますが、昨今ではこれに統一されていますかね?」

 くるりと、槍を手で回す茜ちゃんです。


「あ、私は、これがいいな」いろいろと手にした後、茜ちゃんが選んだのは、巨大なハンマーでありました。「重さがちょうどいい感じで、こう、手に馴染みます」

「そうですね、確か茜様は、『武器補正:鈍器(重)』がございますので、その方向で行かれるのもありかと思います」

「あ、サクラさん、帰ってきたのですね」「?どこにも行っていませんが?」


「私はどうしようかな?」睡蓮さんは、なかなかピンとくるものが、ない様です。

「そうですね、睡蓮様は、『称号:歌姫』『加護:女神の旋律』とかがありますから、楽器系列がよろしいかと?」

「楽器も武器カテゴリなの?」

「”日本”でもギターを叩きつけたりしてるじゃないですか?」

「いやあれは、特殊な例だから」律儀に突っ込む二郎丸さんです。

「冒険者に人気の楽器なら、竪琴とかがポピュラーですね」ショーター店長が商品を紹介します。

「バイオリンは、野外だと整備が大変でしょう、そのあたり、便利な魔法を付与したものとかもありますけど、ちょっとご予算的に無理かもしれませんね」サクラさんが、選択肢を広げようとしています。

「過去の音楽関係の加護を持つ勇者様に、グランドピアノを背負って旅をするという剛の者もおられたとか」ショーター店長が、どうですかね?とかいう雰囲気で聞いてきます。

「いや、何そのギャクマンガ的な立ち姿、ないわ」睡蓮さんはバッサリと切って捨てますね。

「では、このマイクとかどうでしょうか?伝説の歌姫グループが、引退じに舞台に置いた、と言われているタイプのレプリカで、歌声の魔法、いわゆる呪歌の効力を増幅してくれますよ?」

「いや、そのデザインは可愛らしすぎるから、無難にライアーにしておくよ、触った瞬間に挽き方がわかったし、本当、加護とか称号とか半端ないな」睡蓮さんが、1フレーズほどかき鳴らして、武器=楽器を決めました。

「まあ、バッファリアはそのように作られている世界ですので、ええと、シルフィ様はどうされます?冒険に出ないにしても、ダガーとか一本持っておくと便利ですよ?」

「いえ、私は」くるくると周囲を観察して、すみの方でちんまりと展示されている武器群の方へと歩いて行くシルフィさん。「これがいいな、というかこれがいい」と手に取るのは、黒光りするハンドガンでした。一応売り物なので埃は払ってあります。

「そこは、趣味のコーナですね、実戦での利用は難しいですよ?」

「全く効果がないわけではないでしょう?それに、レベルが上昇しない私には、ステータスに関わらない、固定でダメージが期待できる、機械式の武器の方が都合がいい」

「確かに、言われてみればそうですね」サクラさんが納得します。

「?事情はよくわかりませんが、使い方はお分かりになりますか?」

「大丈夫、このタイプなら慣れている (手に馴染む)、店長、これに合うホルスターと、弾丸はそうだなターゲットと、ディフェンスを各100発くらい、それとスピードローダー、ポーチと、弾帯をセットにするとどのくらだ、  いくらになりますか?」ちょっと、うっとりとしながら捲したてるシルフィさんです。

「ええと、シルフィ義姉さん?それ気に入ったんですか?」

「コルト・シングルアクション・アーミー (Colt Single Action Army)だぞ!作ったやつはよく分かってる、本当によく訓練された技術者だ!まさか、こんなとこ(奇妙な異世界)で出会うとは思わなかったぞ、  思いませんでした」頰ずりせんばかりに、銃を手にうっとりとしているシルフィさんでありました。

「ええとこれください」二郎丸さんが会計するようですね。

「ラッピングはどうされますか?」

「このまま下げていくからいいです(ハート)」「義姉さん、落ち着いてください」


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