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18_二日目のカレーを食べて現実逃避

「カレー美味しいです」「いやこの1日置いた感じいいよな」「どうしてこうなるんだろうな」「一旦熱をとるのがコツだとか聞いたことがありますよ?」「(無言で食べ続ける人その1)」「(無言で食べ続ける人その2)」「(無言で食べ続ける人その3)」「(夢中で食べ続ける人)」


「さて、お腹も膨れて、落ち着いたところで」二郎丸さんが居住まいを正します。

「食後のお茶ですね」「俺は珈琲で」「ええとそれじゃあ私も紅茶お願いできますか?」「あの、牛乳ありますか?」しかし事態は進展しませんでした。

「いえ、別にいいですけど、現実逃避を続けるならば、こちらとしても、このまま放置するまでですが?」シルフィさんが、食後の緑茶を優雅にいただきながら、淡々と言ってます。

「すいません、そろそろ現実に向き合う心算、はまだできませんが、成り行きに流される程度には人生を達観し始めましたので、説明をよろしくお願いできませんでしょうか?」サクラさんが軽く一礼しながら、透明な笑顔で促します。

 乾いた笑いを上げながら、他の三人もなんとなく空に肯定しているようです。


「それでは、改めて。新しい魂のステージにようこそ、諸君」二郎丸さんの宣言と同時に背後からハリセンの一撃が綺麗に入ります。「つつつ、結構防御力が上がっているはずなのに、なんでそんなに痛いんですかね?」「防護点を無視をするアイテムですから」「そんなチープな紙製品がですか?」「匠の御業」「本当ですか?!」「私が作りました」「あなたが匠みですか!」


「ええと、どう反応していいのやら?」八兵衛さんが困惑しています。

「二郎丸さんの戯言は基本無視してくれてOKです、ただ、魂から成長していますから、ある意味正しい部分もありますね」

「なんだか不穏当な表現が続いているのですが?」サクラさんが突っ込みます。

「さてでは改めて説明しますが、正直あまり説明が必要な感じがしないのですが。起こった現象は当たり前のことですから。つまりは、経験点が入ってレベルが上昇したということに過ぎないのですね」シルフィさんが、軽く言います。

「そこは理解できます。その経験点の量が、常識はずれだった理由が知りたいのです」サクラさんが冷静に突っ込みます。

「それは簡単です。それ相応のレベルのダンジョン、そのコアだったからです」綺麗に返すシルフィさんですね。

「それでも、いきなり950レベルも上がるなんて信じられません」サクラさんが食い下がります。

「そうだよなぁ、俺も980レベルで、サクラさんと差が無くなったぜ?」八兵衛さんが言います。

「私も」「私もです」睡蓮さんと茜ちゃんも980レベルとギルドカードに表記されているようです。

「ちなみに、僕も980レベルですね。このレベル帯になると、30レベルくらい時点の経験値差ではレベルに差が出ないようですね」二郎丸さんも、ギルドカードの表記を提示します。

「おかしいでしょう?90レベルを超えて、レベルを上げるのさえ、えげつない、それこそ年単位で魔物を狩っていっても、1レベル上昇するかどうかという量を要求されるんですよ?ダンジョンコアの経験点が美味しいとは言っても、ここまで異常な経験店量は不自然です」サクラさんが反論します。

「いや、だから、多分このダンジョンはエンドコンテンツだったんじゃないかな?と」二郎丸さんが言います。「おそらく、1000レベル越えの勇者向けに作成されていたんじゃないだろうかと、予想するのですよ」続けます。「ならば、この経験点量は納得できます」

「いやまさかそんな、どこの誰が、そんな途方もない冒険をするというのですか、というかそのような超超高レベル冒険者とか勇者とか、理論的に存在できません、寿命がつきますよ!そんな馬鹿な設定をするような、運営(神様)なんて」そこで、はたと、言葉を止めるサクラさんです。

「そうですよね~。あの幼女神様なら、深く考えずに、レベル1000専用のダンジョンとか作ってしまいそうですよね」二郎丸さんが残酷な現実を突きつけます。

「ひ、否定できない。というか十分にあり得ると思います、あの幼女神様(おっぺけぺー)なら、きっとやらかしてしまうでしょう!」力強く肯定してしまうサクラさんです。

「一応、まっとうにレベルを上げていくと、48億年後くらいには、レベルが1000に到達する計算にはなりますね、要求される経験点の増加量から考えると。まずは不死者にならないと、到底挑戦することすらできないコンテンツですね」シルフィさんが、ざっくりと暗算した結果を伝えて、頭を抱える、勇者様達御一行でありました。

「弥勒菩薩を待ってるんじゃないんですから」二郎丸さんが呆れて言います。

「56億7千万年よりは、早いですね」しれっと、シルフィさんが言います。

「”弥勒菩薩を待ちながら”とかいうタイトルの小説があったら、なんとも作中時間のレンジが長いお話になりそうですね」

「世界の方が持たないような気がします」サクラさんが項垂れて言います。


「ダンジョンコアからの経験点だけで、ダンジョンのボスを筆頭に中の魔物は全く倒していませんから、これでも経験点はまっとうに攻略した後のものよりはかなり落ちます」シルフィさんが解説を続けます。

「仮に正面からレベル1000の勇者パーティで攻略した場合、どの程度レベルアップするんでしょうか?」サクラさんが質問します。

「1レベルは上がるでしょうか?ちなみにレベルにカウンターストップは無い仕様ですね、この世界では」

「それは、レベル1から900以上にあげる経験点と、1000から1001にあげる経験点が等しいということか!なんだかバランス悪くねーか?」八兵衛さんが呆れています。

「そのように設定されている世界としか言いようがありませんね」

「神様が結構勝手に設定できるものなのです?」茜ちゃんが尋ねます。

「周囲の世界軸との距離次第でしょうか?あまり”緩く”しすぎるとバランスが崩れて、その世界が周囲を巻き込んで大災害を起こしたりもするようですし」

「なにそれ怖いんですが」睡蓮さんがぶるっと震えます。

「あとはレベルの細分化ですかね?この世界では1レベル分の上昇ですが、他の世界では10レベルに相当する上昇分ですとか。アナログな数値をどこまで細分化してデジタルにするのかという感覚に近いかもしれませんね」シルフィさんが解説を続けます。


「基本的なことを尋ねてもいいですか?それで結局私たちはどれほどの強さを手に入れたのでしょうか?」挙手して尋ねる少女の茜ちゃんです。

「そうですね、正面からの殴り合いでしたら、くだんの幼女神様を滅多打ちにできるくらいでしょうか?」首をひねり、人差し指を頰のあたりに当てて答えるシルフィさんです。

「神に仕える巫女が、神様を超えたらまずいでしょう!」ショックを受けているサクラさんです。

「落ち着きなさい。神様独自の権能やら、ユニークなスキルやらがあるので、相手側にもいかようにも対処できる余地が、若干あります」淡々と続けるシルフィさんです。

「ええと、若干レベルなんだ」

「”レベルを上げて物理で殴れ”は結構根本的な解決方法なんですよね」二郎丸さんがフォローを入れます。「なので、殴れる状態まで持っていけば、まあ、勝てますね、神様に」「何をもってして勝ったとするのか?という根本的な問いは残りますが」


「変じゃないか?1000レベル対応のダンジョンを作れる神様が、それに達していない冒険者とか勇者の攻撃に倒れるなんて?どうしてだ?」八兵衛さんが尋ねます。

「それはシステムの上で、設定する立場の役割と、そのシステム内で行動する人の違いです。それに加えて、時間や他のリソースまで引っ張ってきて、工夫して、高難易度のダンジョンを構築しているんですよ。つまり神様、瞬間出力はあまり高くないのですよ、特に創造に特化している方々はその方面、顕著ですよ」

「「「「????」」」」困惑顏です。


「そうですね、ここに一枚の布があるとしましょう、これが世界です。神様はこれを波打たせて大きな山を作ったり、変形させてうずのような模様を作ったり、はたまた時間をかけて刺繍したり、染色したりして模様を作るように、時間をかけて、無地の布を一つの作品に仕上げます」

 ほーほーと、フクロウのように相槌を打つ一同。

「で、高レベルの勇者はハサミとかナイフとか、刃物のようなものです。その刃物でもって、それらの布の上にある作品を、こう、一息に、慈悲なく、躊躇なく、切りさくわけです」ズンバラリと何かを切る仕草をします。

「破壊の程度が低ければ、こうすぐにほつれたところを直すように修繕できますが、大きく切り取られたり、バラバラに切り刻まれたりすると、それを元のように直したり、さらにはもっと巧妙に強く作成したりするのに、時間が必要となるんですね」

 再びフクロウず、です。

「そうですね、簡単な変形、つまりはレベルの低い魔物とかは、こう布が少しデコボコしているようなもので、それを、退治するということは、その部分を平らにならすようなものなんです。で、すぐにその部分に凹凸を付け直せば、魔物はまた復活します」

 今度はへー、問いう顔ですね。

「ダンジョンは結構複雑な刺繍でできた文様のようなものですが、これもダンジョンコアを壊される=大きく切り取られる、ことがなければ、歪んだ布を元に戻す程度、ちょっと汚れたところをつまみ洗いする程度で、復活するんですね」

 なるほどなるほど、と頷く一同。

「逆に、コアを壊される=大きく切り取られる、と、復活にかなりの時間がかかるのですよ。必要ならどこからか布を持ってこないといけませんし、そもそも布を作る材料を集めてこないといけないわけですから。このように、神様、この場合は創造を司る方ですが、は時間をかけて大掛かりな作品を作るには適していますが、直接刃物を振り回して布をバラバラにするような勇者に対しては、直接戦う場合には、あまり強くないんですよ」

「なんだか勇者の表現が、ちょっと、あれ、のような気がしてきましたが、まあ、大体は納得のいく説だとは思います」サクラさんがちょっと頭を抱えながら言いました。

「この世界のレベル表記で言いますと、200は無いと思いますよ。おそらく、幼女神様も、ショタ枠邪神さまも」さらりと具体的な数値を知らせるシルフィさんでした。


「ええと、とすると、俺ら神より強いわけだよな?それって、人間の範疇なのか?」八兵衛さんがちょっと気になることを、発言します。

「”人”の定義にもよりますが、まあ、メンタリティはレベルアップによる各種パラメタへの補正で、ずいぶん図太くなっていますけれど、方向性に関してはその人格を歪めていません。自分の持つ超越的な能力によって得られる、全能感とかで、ゆがむ可能性もありますが、同程度に知能への補正も入ってますので、そこまで愚かには行動しないと、予想はするんですよ?」

「質問だ、私ら、頭良くなってるのか?」睡蓮さんが頭の悪い質問をします。

「記憶力とか計算力とかは、桁違いになってますよ。理解力とかはまあ、訓練次第でしょうが、集中力とかにも補正が入っているので、学習する機会があれば、控え目に言っても天才クラスには見えるでしょうね?」

「うわい、それは結構助かるかも?」茜ちゃんが少しおどけて言います。「授業とか遅れてたから」

「”日本”世界の義務教育から、まあ高ランクの高等教育機関まで、苦労無しで、トップを走れるでしょうね、それは問題ありませんよ」シルフィさんが太鼓判を押します。

「それはそれでずるい気もしますね」二郎丸さんが苦笑いをしてます。

「どうせ、”日本”世界へ帰還したらローとカオスの対立に巻き込まれることが確定しているのですから、その辺りは手が抜けてラッキーと思うといいのですよ”丸”」


「その問題もあったな。どうなんだろう、帰還したら確実にその騒乱に巻き込まれることが確定しているのか?」八兵衛さんが尋ねます。

「そこまでレベルが上がると、バランスを取ろうと、対立する方の陣営になんらかのテコ入れが入って、天秤を釣り合わせようとするでしょうね。ただ、まあ、そのレベルならそれこそ、武闘派の神様とかが降臨したり、いろいろと絡めてを使われなければ、無双できるので、心配はいらないかも?」

「いや、結構物騒なんだが?こちらは別に神様に喧嘩を売る気はないんだけどな?」

「ちなみに絡めてとは、直接攻撃とかを避けて、こうラブコメ要素でお茶を濁して、偽装して、精神的に追い詰めたり、余裕を無くさせたりする方向性へ走ったりします」世界を管理する神様が。

「ちょっと興味があるなそれ」八兵衛さん、食いつきました。

「まあねぇ、因果律やら、世界のバランスとかいうお話ですから。それに影響を与えないように、中立を保つのも、まあ”人”としてのメンタリティとか柵が邪魔をしそうです」

「ええと、じゃあ、平穏に暮らすなら、この世界に留まるほうがいいんですか?」茜ちゃんが、尋ねます。

「通常なら、それがいいんですけどもね。多分そうは、できないと思うのですよ、これは私の、まあ、勘なのですけども」シルフィさんが、珍しく難しい顔をします。

「ええと、そこで、口ごもられると、ごっつい不安なのですが?」どこの方言ですかサクラさん。


 ちょっと、ためて、シルフィさんが、まるで託宣を下すように、一同に告げます。


「この世界(バッファリア)は滅びます」

「「「「!?」」」」


「それも近日中にです」

「「「「な、なんだってぇええ!!!!」」」」


 意外にノリが良い皆さんですね。






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