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14_ダンジョンを攻略しない冒険者

 「それで次の狙いはここです」二郎丸さんが、大きめのタブレットにとある物件を表示します。

「始まりの街から少し離れていますね、山の中ですか?」サクラさんが位置を確認します。

「そうです、今度はダンジョンに行ってみましょう」二郎丸さんが提案します。

「ええと、王道ですね?」何故かに疑問系な茜ちゃんです。

「たまには、まっとうな冒険をするのでしょうか?」サクラさんがなんだか信じられないものを見たような目でこちらを見ている。「いやこちらに転移してまだ7日目くらいだよね?」ツッコミ返す二郎丸さんでありました。

「濃い7日間でしたよね」ちょっと遠い目をしているのは茜ちゃんと、睡蓮さんでしょうか?

 今朝の模擬戦を思い出しつつ、黄昏ています。今は昼時、昼食を食べつつ作戦会議です。


「ともかく、今度の狙いはダンジョンです、が」二郎丸さんが仕切りなおします。

「あ、『が』って言いましたね!」サクラさんが食いつきます。

「攻略はしません」

「なんでですか!」

「落ち着いてください、今回はダンジョンの調査です」二郎丸さんが、話を続けます。「このダンジョン、街から車で2時間ほどの場所にあるのですが、過去に踏破済みです」

「ほう?ちなみに踏破とか攻略とか、何か特別な決まりとかあるのか?」八兵衛さんが尋ねます。

「説明しましょう」とサクラさん「踏破とか攻略とかは、ダンジョンを入り口から順に、再奥まで進んで行って、途中にある罠とか妨害ようの魔物とかの障害を乗り越えて、最後の部屋に現れる、ダンジョンのボスを倒して、その奥にあるダンジョンの核、コアを破壊することにより、完全なる攻略となるのです!」一息に言いました。

「まあ、よくある設定ですね。付け加えると、コアを破壊することにより、ダンジョンの機能を停止させることができて、後には、奇妙な構造の建物とかが残りますね」二郎丸さんが付け加えます。

「ダンジョンの機能って何ですか?」茜ちゃんが質問します。

「罠の再設置とか、撃退された魔物の再召喚とかですかね?後、施設の保守とかもダンジョンがやってますね。宝箱の管理もダンジョンコアが行っているはずです」二郎丸さんが答えます。

「なのです。だから、定期的に魔物を狩って資源を調達したり、冒険者寄せの宝物を回収したりするので、通常は、ダンジョンコアは壊さないでダンジョンを再利用します。エコですよね」サクラさんがにっこり笑って言います。

「異世界人のエコロジーに対する認識はともかく、基本はダンジョンコアを残しておくのだけども、それはあくまで基本の話であって、例外もあるんですよ。実際、これから調査に行く迷宮は、コアがもう破壊ずみです」二郎丸さんが言います。

「?それはまたなんで?」睡蓮さんがききます。

「復活する魔物があまり資源として適していなかったのと、場所が少し不便だったのと、再設置の宝物がほとんどなかったので、維持管理するコストとか考えると、潰しておくほうがメリットが大きかった、みたいですね」二郎丸さんが手元の資料を見ながら言います。

「コア破壊の大きなメリットは、神様からの貢献ポイントが大量に入ることと、経験点が同じく大量に入ることなのです、なので、定期的に搾り取るよりも、一括で回収するほうがメリットとして高いとなると、あっさり潰しますね」サクラさんが補足します。

「ええとすると、私たちはなんでそこに行くのでしょう?」茜ちゃんが尋ねます。

「ですから、調査ですね。一定の期間で、コアの破壊されたダンジョン、これを枯れたダンジョンとか読んだりしますが、を見て回るお仕事があるんですよ」二郎丸さんが言います。

「ええと?それはまたどういう理由なんだ?」八兵衛さんが尋ねます。

「いくつか理由はあるんですが、コアを破壊されても建物とかは残るので、不法に占拠している人物とか組織がいないかどうか、とか、動物が住み着いていないかとか、魔物の出現スポットになっていないか?とか、後、珍しい例ではあるけれど、コアが復活していないか?とかですかね、ありましたねそういえばそんなお仕事」サクラさんが依頼内容を確認していきます。

「基本、出入り口の封印が破られていないかと、ついでに、周囲の環境の変化を調査する程度のお仕事で、実働時間は5時間?くらいですかね?移動についてはサクラさんの車か、レンタカーを借りれば問題なさそうですし」二郎丸さんが解説を引き継ぎます。

「あるんだレンタカー屋」八兵衛さんがちょっと呆れています。

「あ、車は出します、山のドライブですか、楽しみです」ちょっとウキウキしているサクラさんでありました。

「計画としては、

 今日これから、資材とか食料とか補給して、

 明日早朝出発、2時間ほどでダンジョンのある山の麓に到着。

 そこにはちょうど村があるので、そこで車を預かってもらいます。

 その後、30分ほどの簡単な登山。

 昼過ぎには現地入りをして、野営の準備をしつつ簡単に周囲の探索。

 野外で一泊します。この際、野営の練習をしておきましょう。

 翌朝から、本格的に調査をしておいて、暗くなる前、15時くらいには下山。

 夕方の18時くらいまでには、始まりの街に戻ってくる、

 という感じですかね?」


「質問です」「何ですか八兵衛さん」「おやつはいくらまでですか?」「ええと定番通り300円と答えればいいんでしょうか?」「お酒はおやつに含まれますか?」「目がマジだ」


「アホなことを言っていないで、さて準備をしましょう」スパンと、八兵衛さんの頭をスリッパで叩いたシルフィさんが、この場を閉めました。

「ええと、一人頭の報酬が、5万ポイントですので、それに見合った予算で準備しましょうね」サクラさんが、依頼内容を見てフォローします。

「食材は、アイテムボックスっぽいものを、私が貢献ポイントで獲得しましたから、鮮度が落ちるとか、量とかは、あまり気にしなくてもいいですよ」シルフィさんが一声付け加えて、お買い物です。


「山の中ですから、毛布を買い足しておくべきでしょうか?」茜ちゃんが、さくらさんへ尋ねます。

「そうですね、こちらのマントなんて毛布の代わりにもなる厚手のものですから、便利かもしれません」さくらさんが手元にマントを引き寄せて答えます。

「結局、ゴブリンの時は、村に宿をとったから、屋外で泊まってないのだよなぁ」睡蓮さんも色々、アウトドアグッズを再度眺めながら、つぶやきます。

「基本的なものは最初に買い揃えていますから、これがあれば便利かな?というようなグッズに的を絞るのがいいかもしれませんね」サクラさんのアドバイスです。

「虫除けとかもあるんだな」睡蓮さんがふとスプレー缶を見つけて言います。

「魔法工学を駆使した工場とかありますので、大量生産とかで単価はお安くなっていますよ」

「最近魔法ってつければなんでもありなんですね、という感想が浮かんでくるんですが?」茜ちゃんが珍しくツッコミます。

「それほど間違ってはいませんね。勇者様の世界でも、どうして磁界を導体が横切ると電流が発生するのか、判明していないでしょう?」サクラさんが指摘仕返します。

「ええと?偉い学者さんとかが、すでに答えを知っているんじゃないのか?いや、電気が発生する仕組みとかすら、初めて聞いたけどよ?」睡蓮さんが誰かが知っているのではないか?と反論します。

「ファラデーさんとかご存じありません?まあそれはそれとして、おそらく、まだ誰もわかってないと思いますよ?こうすると電流が発生するのはわかるけれど、どうしてそうなるのか?ということについては、まあ、私が知らないだけかもしれませんけれどもね」サクラさんが続けます。

「異世界の姫巫女様から、科学のお話を聞く、とか、結構珍しいような?」茜ちゃんが何か別のところでツッコミを呟いています。

「ですので、どうしてそうなるかはわかりませんが、この世界(バッファリア)には魔法がありまして、一定の法則で物理情報に働きかけることができるのです、決してご都合主義とかではないんですよ?」ちょっと必死に解説するサクラさんです。

「「あー、はいわかりました」」納得する姿勢を見せる、茜ちゃんと睡蓮さんでした。


「それで、虫除けは買いでしょうか?」茜ちゃんが再度尋ねます。

「無臭ですのでありですね。一応蚊取り線香も買っていきましょう」

「そうゆうのもあるんだ」睡蓮さんが驚いています。

「マットタイプだと効いた気がしませんから、煙が出るタイプでいいですね、こうぐるぐる巻いてある螺旋の形が美しいですね」謎のこだわりですね。

「この豚さん可愛いです」ちょっと顔が輝いています。口から煙が出るタイプの台ですね。

「キャンプには向かないんじゃないか?」ちょっと持ち運ぶにはどうよ?と睡蓮さん。

「いいんじゃないですか?収納には余裕があるようでしたし」サクラさんが茜ちゃんの方へ着きます。

「まあ、いいか。野外用の平べったいやつも買っておこう。こう吊り下げられるタイプな、豚さんのは、街の拠点で使用してもいいし」睡蓮さんが妥協します。

「はあい、嬉しい、豚さん豚さんお名前はどうしましょう?生姜焼きくんかなぁ」嬉しそうな茜ちゃんです。

「食欲直結のネーミングですね」サクラさんがツッコミます。

「食べることが楽しくて仕方ないだろうなぁ、暖かく見守ってやろうぜ、でもそのネーミングセンスは修正しような」睡蓮さんが暖かくフォローしつつ、ツッコミます。

「えと?可愛くないですか?じゃあ、ポークチャップくんで」

「「方向性が一緒(だ)(ですね)」」


「一方こっちは、シルフィ義姉さんと、八兵衛さんとともに、食材とか、武具とかの補充なのですが」二郎丸さんが状況を説明します。

「お酒はこのくらいで足りそうだな」八兵衛さんにんまりとしています。

「いえ、主に飲むのは八兵衛さんですし、ほとんどポケットマネーで購入しているのであまり文句はありませんが、最初に確保するのがそれというのはどうなんでしょうね?」二郎丸さんが突っ込んでいきます。

「お酒の種類とか、”日本”なみなんだぜ?それに加えて、異世界らしいテイストを加えた一品がゴロゴロ、手頃な値段で買えるのも魅了だなぁ」作画が崩れる勢いの笑顔ですね。

「本当、これだけ暮らしやすければ、元の世界に帰らないという選択をする勇者が多いのもうなづける」シルフィさんも、コロコロと手元でおしゃれなお酒の瓶を弄びながらつぶやいています。

「ある程度強ければ、貢献ポイントを稼ぐのは苦ではないですしね。というか今日び魔物をハントしてお金が稼げる、その状況が整備されているとか、どれだけお手軽に働ける環境なのですか?」二郎丸さんが続けます。

「まあ、その最低限の強さを手にするのが難しいといえばそうだし、危険と隣り合わせというどうしようもないリスクはあるけれども、転移してきた勇者の恩恵を含めた実力とか成長速度とか想像すると、それほどのネックではなかったのでしょうね」淡々とシルフィさんも受け答えをします。

「元の世界によほどの未練が残っていないと帰還しませんかね?」

「そりゃあ、どうかな?こっちで力とか手にいれた後、もとの世界で無双するとか、夢見る輩も多そうだぜ?」八兵衛さんがニタリと笑いながら言います。

「八兵衛さんは、そんなタイプですね」「おうよ!十分異世界を堪能して、レベルを上げたら、帰還して、ウハウハ生活をしてみる予定だよ。まあ、いつでもあの状況に戻れるというのだから、当面はのんびり休暇だと思って楽しむかなぁと」

「これから冒険に行く勇者のセリフではありませんね」笑う二郎丸さんです。

「ぬかせぇ。お前さんこそ、なんだか羽を伸ばせていいなあ、という顔をしてやがるぜ」

「えと、そうですか?」つるりと、顔を撫でる二郎丸さんです。

 そして、

「そう?もう少し厳しく指導するべきかしら?」と呟くシルフィさんと。

「やめてください」こちらも青ざめて、囁く二郎丸くんでした。


「武器ではありませんが、これを購入しておいてください」シルフィさんがメモを二郎丸くんに渡します。

「はあ、いいですけど、なんですかこれ?」

「迷宮の調査に使います、細かい部品とかはこちらでも集めますから」

「ええと、義姉さんは?」

「弾丸の補充と、メンテナンスキットの消耗品を少し買い足しておきます」

「食料はどうします?」

「ああ、先に買いに行きましょう。加工済みのものをそのままアイテムボックスに入れておいても大丈夫ですが、一応、炊事の材料も購入しておきましょう、メニューはどうしましょう?」

「カレーでいいですかね?」「あるんだな、カレー粉!」「まあ、速攻で再現されそうな料理ではありますよね?」「昔は香辛料に適当なものがなかったから、緑色とか、青色とかしてたらしい」「それは勘弁して欲しい色合いですね」「当然お米もあります」「ナンでもいいですが”日本”出身ならお米でしょうね」「品種改良ずみの日本米だそうです」「なんでもあるなぁ」


 つつがなく買い物が終了していきます。


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