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13_冒険をしないところで死にかける

「さて、とりあえず一回目のミッションをクリアしてみました」二郎丸さんが、口火を切ります。

「罠にはめて、一方的にゴブリンを蹂躙しただけですが」サクラさんが続けます。

「蹂躙とか、壊滅とか、一方的ではないか、とか、いい言葉です」シルフィさんが淡々としつつ、うっとりと言うなどと、器用な表現で言葉を継ぎました。

「これは、現実で、ゲームとは違うので、できるだけ不確定要素は排除していく姿勢はには、問題があるはずがないと思いますけどね」二郎丸さんが指摘します。

「それにしたって、結構派手で見栄えのある魔法とかスキルとか用意してあるのに、それらを土木作業でしか使用していないというのは、こう、華がないと言いますか」サクラさんはちょっと不満そうですね。

「華では、お腹は膨れないのです」シルフィさんが反論しますね。

「そうだぜ?それに、楽に仕事が終わったように見えるけど、準備とか段取りはかなり大変だったんだぞ?」八兵衛さんがシルフィさん側を肯定して言います。

「そうですよ、たくさん地面掘りましたし」茜ちゃんも同意していますね。

「歌で効率化とかもしたんだぞ?」睡蓮さんも話しに加わります。

「それはそうなんですけど。私は、異世界から召喚された勇者様というのに、幻想を持ちすぎているのでしょうか?」サクラさんが首をひねっています。

「昨今の勇者はひねくれていて、まともに王道を進まないタイプが多いんじゃないかな」二郎丸さんが指摘します。

「言われてみれば、そうですね。でも、こう、友と協力しあって、苦労して修行した末に、魔王を倒すような、王道勇者様もまだ需要がある様な気がするんですけども」サクラさん、脳裏に幾つかのサブカルひねくれ勇者物の、タイトルを思い浮かべたのち、そうこぼします。

「修行とかする暇があれば、味方の兵士を増やして、数で押し切ったり、経済封鎖とか兵糧攻めとか兵站面で押してみたり、策略とか調略とかして寝返りとか促してみたり、画期的な兵器を開発してみたりとか、いろいろ効率的にやれることがある様な気がしますが?」二郎丸さんがツッコミます。

「いえ、レベルの概念がある世界で、戦国シミュレーションとか別のゲームを始められても、困るんですけども」サクラさんが言います。

「誰が困るんです?」

「ええと、あれ?それほど困らない?むしろ、戦略とか戦術のノウハウが蓄積できるので、美味しいかもしれませんね」サクラさん、毒されてきました。

「まあ、レベルの恩恵で無茶ができるので、単騎で戦場をひっくり返されかねないという問題もありますから、既存の戦術とかは、そのままは使用できないかもしれませんが、百年単位で戦乱をしていた国の、出身勇者がせっかく転移しているんですし、利用しない手はないかと思います」二郎丸さんがまとめます。

「意外と修羅の国だったのですね”日本”世界」丸め込まれてしまいましたか?

「それはともかく、今日は、先ほどのミッションの反省会ですので。多いに飲み食いいたしましょう」ジョッキを片手に二郎丸さんが言います。

「?文章の前後のつながりがあっていないような気がするのですが?」サクラさんもそう言いつつ、コップを握っています。

「反省会(打ち上げ)ですよね?」ルビを振って言ってみました。

「ああ、なるほど」納得してしまうサクラさまでありました。


「サクラさんにはああ言いましたが、まともに戦闘をして連携を確かめる必要は、最低限いると思うんですね」乾杯をしてグイっとジョッキを呷った二郎丸さんが発言します。

「うん、最低限の身の置き方は必要です、いざという時のために」シルフィさんが肯定します。

「そうだな、結局白兵戦も、何もなかったものなぁ」八兵衛さんもジョッキを傾けつつ、ポテサラをつまみながら言います。「うまいなこのポテサラ」


「マヨネーズあるんですねえ」「記録によると真っ先に再現された食材みたいですね、マヨネーズ」

「へえ、勇者が?」「いえ、サブカルで定番でしたのでこちらの料理人が。異世界料理を再現しようとかいう趣味の方々が作られてグループでしたっけ?」「ほう」「ドラゴンステーキとか、リアルマンガ肉とか、」「あ、それは美味しいそうだね」「至高のとか究極の、とか」「そっち!?」「食べると、その美味しさから、口からビームを吐き出して、巨大化させる料理の再現には、材料の吟味から伝説級の技が使用されたとか?」「いやあれ演出だから!というか業が深いなクールジャパン!」「最近では素材の収集レベルがどうとか、神に至るフルコースとか」「!!」「転移勇者さまも、積極的に関わっているので、そのクラブ、今や立派な有力組織の一角でして、ついた名称が、美☆ショッククラブとか?」「いろいろ混ざったー!」「そこから分離独立した闇の料理人ギルドとかあったりしましてね」「ありそうな展開だ!」「夜な夜な、料理対決とかしながら、仲良くケンカしているようですよ」「意外と平和だ」「気を抜くと、服が脱げていたり、料理人が相手の食材になっていたりしますが」「まさかの15R展開と、残酷描写にご注意ください!」「気が抜けませんね、さすが異世界」「いやそんな」「褒めてないですよね?」


「話が大幅に逸れましたが、連携を確かめるために、模擬戦をしてみようかな?とか思うわけですよ」ちょっと、息を整えながら言う二郎丸さんです。

「それはいいな、危険も少ないし、というか、実戦に行く前にまずそっちだったなぁ」八兵衛さんが賛成します。

「そうですね、なんだか流れでゴブリン退治とかしてましたけど」

「そもそも、ゴブリン相手にスキルとか魔法の練習をする予定だったんですよ」サクラさんが、過ぎ去った時間を省みて言いました。

「で組み分けはどうするんだい?」睡蓮さんが尋ねます。

「そうですね」「”丸”とそれ以外で」反論は許さないと云う感じで間髪入れずに指示を出すシルフィさんです。

「ええっと、それは」

「何?できないの?」挑発的というか、冷たい視線が向けられています。

「危なくなったら止めてくださいよ」あきらめて、うなずきます。

「まあ、それくらいは仕方がないかな?」しょうがないわね、という表情です、無表情ですが。

「ええと?それ大丈夫なのかい?」八兵衛さんが尋ねます。

「大体の見立てでは、平気。というか、”丸”を入れた組が強くなりすぎるし、手加減してもらうよりもハンデをつけた方が早い?かな?」シルフィさんが首をかしげながら言いました。

「ええと、私としては、二郎丸さんとシルフィさんがいいならいいです」茜ちゃんが賛成します。

「まあ、練習にならなかったら、その場でまた考えればいいからな」睡蓮さんも一応納得な表情です。「しかし、この唐揚げうめーな」


「地鶏ですからね、ちょうど良いコッカトリスが入荷したそうで」「あれ鳥類分類なんですね」「石とかにならいよう毒抜きが必要ですけど」「物騒な食材だな」「うまいものには毒がある、ですよ」「いやその例え間違ってるから!」「オイオイ本当に大丈夫なのかよ?」「まあ、年間に一人くらたべて石になる事故とかあるようですけど」「危険溢れる食卓だなおい!」「大丈夫です、食材になった時点で効果が薄れてますから、レベルの低い状態異常回復で治りますよ」「そういう問題なんでしょうか?」「食の安全とかいうレベルじゃない気がしますね」「同感だ」


「あれ、なんだか体か硬くなってきたような?」睡蓮さんが戸惑っています。

「本当ですね、毒抜きが中途半端でしたでしょうか?」

「おい!」

「ちょうどいいので、茜ちゃん、治してみてください」

「えと、こうですかね?」えい、とばかりに手を発光させて、魔法を使います。

「お、治ったみたいだな?あれ、酔いも冷めた?」

「あー、酩酊とか酔っ払いも軽度の状態異常ですからねー」サクラさんが納得しています。

「つまり飲み放題というわけか!いいね!」皆様、八兵衛さんの喜びの表情をごらんください。

「ええと、かけてあげた方がいいのかな?」茜ちゃん、困惑顏です。

「ううん、あれと同じというのは、業腹だけども、私もそれ欲しいから、この場合はOKということで」睡蓮さん少し悩んだ末に、ゴーサインを出します。


「あれ、シルフィ義姉さん、どこかに行っていたんですか?」二郎丸さんが席に戻ってきた彼女に尋ねます。

「うん、ちょっと、店の責任者にお話をつけてきた。こう、料理の不備てきなやつで」

「へえそうなんですか」

「今晩の飲み食いは只になった」

「ラッキーですね」「ヒャッホウ、飲み放題だぜ」八兵衛さんそれを聞いて、端からお酒を頼む、算段です。

「あと、『些少ですが、このことはどうぞ御内密に』って、心付けももらった」

「いいんですかねー」

「命ばかりはお助けください、と、土下座までしたのには、正直引いた」

「何やったんですか!義姉さん!」

「いや別に、一行が勇者と王族であるって言ったのと、少し威圧しただけ?」

「あ、先程感じたあのプレッシャーですか?」

「あれ、対象は店長だけにしたはずなのに?」

「よく知ってますから、あれは。そうかぁ、意識を保っているくらいだから、結構剛の者だったのかもしれませんね店長さん」同情している二郎丸さんでした。

「元店長になるかも?」

「?」疑問の表情をする二郎丸さんに対して、在庫をからにする勢いで注文をし続ける一行を指し示すシルフィさんでした。



 翌朝、冒険者ギルド併設の運動場にて。


「い、一発も当たりません」肩で息をして、へたりこんでいる茜ちゃん。

「魔法の矢とか切ってなかったか今?」愕然としている睡蓮さん。

「多重のフェイントに、幻影とか混ぜたやつ、きっちり全部対応されちまった、これはプライドが傷つくねぇ、おいちゃん」八兵衛さんは肩をすくめています。

「まあ、まだ連携が未熟で、ほとんど、単独攻撃と変わらないので、この程度はできます」ちょっと涼しい顔をしている、二郎丸くんです。剣道の胴着の様なものを着ていますね。刀を納めます。


「茜ちゃん、睡蓮さん、八兵衛、もう少し立ち位置を考えて動くといい。基本茜ちゃんが前線をさせて、睡蓮さんがそのフォロー、八兵衛は遊撃が基本なのだから、きっちりと気配を消すように。あと、”丸”次は寸止めくらいはふるってよし、茜ちゃんたちは変わらず全力で、むしろ殺す気で」シルフィさんがアドバイスをつけます。


「えと、義姉さん?」

「はいわかりました」

「わかったよ」

「りょーかい」

「あ、みなさん、やる気というか、殺る気になってますね、ええとお手やわらかに」

「すごいですね、二郎丸さん。レベルとかみなさんと違わないはずなのに?」

「サクラさん、のんきに観戦していないで、貴女も茜ちゃんがわに入ってください」

「へ?あの私、こう見えてもレベル高いし強いですよ?」キョトンとした表情で聞き返すサクラさんです。

「茜ちゃん達に合わせて、連携を取れば、いい感じで”丸”に負荷がかかって練習になる、くらいです、構わないので、やっちゃうつもりで参加してください」シルフィさんが冷静に言います。

「ちょ、義姉さん?!さすがにそれはきつい!」

「きつくないと稽古にならない、それに手を抜かないできちんとすれば、手足か首の一本か二本が犠牲になるくらいで済む見立てです」

「首は一つしかないよ!」「泣き言を言うなら、私も参加しますよ?」「御免なさい!」


「ええと?どうなっても知りませんよ?まあ、早い段階なら、首もつきますから安心してくださいね」サクラさん参戦です。

「うわあ、どこに安心する要素があるのですか!」若干涙目な二郎丸さんでした。

「さあ、冒険者のレベルの違いが、戦力の決定的な差ではないことを教えてやるのです!」

「それ言いたかっただけでしょう、絶対!」その悲痛な叫びを合図に殺試合は開始されました。



 残念ながら首は落ちなかったそうです。

「落ちてたまるか!」


「背中に目があるのか二郎丸君」「いや、気配とか普通に読めますって」「結局最後までまともに当たりませんでした」「当たると終わるので、まあ当然?」「なぜ、あんな弾幕の中動けるんだよー」「ええと、足さばきとかですかね?なれると結構いけますよ?」「茜さま、嘆かなくても、私もまともに攻撃が当たりませんでしたし」「サクラさんは、速いんですけど、早くないんですよ。こう、モーションがわかりやすいというか、パターンが見えやすいんです。対人戦は苦手ですか?」「むしろ対人戦の方に重きを置いてるつもりなんですけどねぇ」


「次は私が指揮をとってみましょうか?」シルフィさんが提案します。

「御免なさい、勘弁してください、この通りです」綺麗な土下座だったそうです。


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