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12_冒険をしない我らが冒険者

「まず、作戦地域の広範囲にわたる地形を確認します」「はい」「ちょっと走り回って、上空をジャンプとか駆使して空撮というか、記憶して、無駄に高い作画能力で、タブレットに再現します、これが3時間ほどかかる予定です」「なるほど」「そして、できあがったものがこれになります」「素晴らしいクオリティですね」「畑を荒らすゴブリンの進路も確認済みですね、これはポイントが高いですよ」「ええ、職人の息遣いを感じますね」「その地図を十分に活用して、ゴブリンの偵察を行いました」「ギリースーツが猛威を振るいましたね」「全く気がつかずに、目の前を対象が通り過ぎた時は痛快でしたね」「これで二日ほど費やしましたね、結果、隠し玉要素な追加戦力もバッチリ事前に把握しました」「そして、完璧に行動を把握したのち、別途作成しておいた罠を一晩で設置」「素晴らしいコンビネーションでしたね」「巨大な木材を華麗に運ぶ力強い少女、労働の清らかな汗が素晴らしかったです」「ええ、労働者の鏡でしたね」「児童労働とかいうお話は傍に置いておきましょう」「そうですね」「決まり手は落とし穴でしたね」「魔法を利用して深く掘りましたしね、もちろん、そこには尖らせた木の杭もお約束でした」「サムライの刀技が冴えていましたね」「ええ、こう空中へ素材である丸太を放り上げて、気をはいた瞬間」「ええ、刀のきらめきとともに、大量の尖らせた木の杭が完成すると言う」「さすが伝説の刀使い、東洋の神秘、サムライの面目躍如でしたね」「ええ」「そのように素早く完璧に偽装した罠ですが、その成果がこちらになります」「すごいですね、ゴブリンの集団で、先頭を歩いていた対象が落とし穴に落ちて、それを見て林側から、迂回しようとして、吊るし上げられて、潰されて、怯んだところに岩雪崩ですか」「後ろで指示を出そうとしていたちょっと強そうなゴブリンのチーフと、隠し玉要素のホブゴブリン(ちょっと強そうな大きめな人型魔物、ゴブリンの亜種)がともに、あっけにとられていましたね、あの絵は爆笑モノでしたね」「その顔のまま、足元の網で吊り上げられて、仕掛け槍の豪雨で、絶命と言うところまで、綺麗に展開しましたねえ」「どこかの装置みたいでしたねぇ」「その場で少しづづ直接調節できますから、それほど綱渡りな仕掛けではなかったですけどねぇ」「いやほんと良いお仕事をされたものです」「いやあ、ほんの手遊びで」「いやいや」「ほんとほんと、あのくらい俺のいた所ではみんな出来て当たり前のことですから」「そんなまた謙遜が過ぎると嫌味ですよ」ははははと、罠で致命傷を受け、ヒクヒクとのたうつ魔物を背景にした、牧歌的で、平和な森に明るい笑い声が響きます。


「八兵衛さん、シルフィ義姉さん、そのこう、ダイジェスト風な経過報告とかなんなのでしょうか?」二郎丸さんがツッコミます。

「いえ、あまりにも順調に一方的に攻略できてよかったな的なそんな気持ちが、少し暴走いたしました」丁寧に受け答えをしてくれるシルフィさんでした。

「そうだなぁ、なんというか、相手のパターンが単純すぎて、むしろ何か裏があるのかな?と確かめる方が時間がかかったくらいだったからな」八兵衛さんがあくびまじりで答えます。ちょっと寝不足なようです。

「あ、ゴブリンのリーダーと、ホブゴブリンも死亡判定が出たようですね、魔石とトレジャーがドロップしました」シルフィさんが指をさして、示します。

「お、何か特別なものでてるかなー」八兵衛さんが確認します。

「落とし穴のゴブリン、肉体が消えて魔石が残った、ちょっと取ってくるよ」ヒョイヒョイと高めの能力値を活用して、落とし穴の底から小さな光多面体の石を拾ってくる睡蓮さんです。

「回収ように横穴とか掘って階段とかつけていた方がいいかも?」すっかり土木作業がいたについてしまった、茜ちゃんでありました。

「いいですね、それ、どうせ落ちた時点で杭によって死亡確定ですから。定期的に杭とか交換してメンテナンスしやすいですし」二郎丸さんも特に疑問に思わないで同意していますね。

「近隣の村人には罠の位置を知らせておかないと危ないじゃないかな?」魔石を取って上がってきた睡蓮さんが言います。

「あ、それはもう手配済み」シルフィさんが答えます。「近隣の正確な地図も添えておいたから、これで自爆したら自業自得ということで」

「グッジョブです義姉さん。あれ、そういえばなんだか静かですがどうしましたかサクラさん?」二郎丸さんがなんか、すべてを諦めてしまっているような、異世界人に視線を向けます。

「ええ、まあ、安全に攻略するには罠にはめるのが効率的だとはわかるのですが、これはちょっとひどくないですか?ひどいですよね?」

「え?」

「だって、あれだけ延々と、パーティメンバーの戦闘能力とか特殊技能とか考察していたのに、蓋を開けたら、野生動物のハンティング、しかも、据え置きがたの罠はめオンリー!戦闘の華である、剣戟とか、魔法攻撃とかの手に汗握るアクションが全くないとか、ありえないです!」

「え?」不思議な者を見るような目で見る二郎丸さんです。

「ええと、ありえないですよにゃ?」「噛んでますよ、大丈夫ですか、落ち着いてください、サクラさん、何を興奮しているんですか?」二郎丸さんが宥めます。

「え、私がおかしい?なんで、サクラさんが、変な子な流れなんですか!?」何か取り乱しているようですね。

「まあ、戦闘に使うだけがスキルではないということですね」綺麗な笑顔で言うシルフィさんです。

「最近の流行りだと、こんな感じでミッションをクリアするような展開も多いですよ?」二郎丸さんがフォローします。

「むしろ、正面から罠で叩き潰しているのだから、王道といっていーんじゃないかね?」八兵衛さんが、さらにフォローします。

「ええまあ、そうなんですけどね。あれ、それほどおかしくないのかな」サクラさん丸め込まれかけていますね。

「睡蓮さん睡蓮さん、せっかくでしたので、早速横穴掘って、落とし穴に階段を作ってみました」

「スコップが似合うねー」「照れますねえ」「重機並みの、筋力です」「そんな褒めないでください」照れて、赤くなる茜ちゃんです。

「やっぱり、怪力少女の使いかたがなんだか違いますよね!大きな武器を振り回して、その、小さな体との、アンバランスな印象で、度肝を抜くと言うのが、本来の流れ、テンプレートですよね!なんでガテン系なキャラクターなんですか!あまつさえ、本人、それを受け入れて、嬉しがってるし!」

「スコップは最強の武器だぞ?それは譲れない」八兵衛さんが指摘します。「ついてよし、払ってよし、平な所での打撃もバカにできない、穴も掘れるしな」いい相棒だぞ、と語ります。

「いや、スコップというかシャベルは穴を掘る道具ですからね」二郎丸さんがツッコミます。

「?」何を言っているんだこいつという表情の八兵衛さんでありました。

「論点はそこじゃにゃいです!」またセリフを噛んでいるサクラさんです。


「ビギの村で、村人に聞き取り調査をしたところ、この周囲では、定期的にゴブリンが沸くようですね」シルフィさんが話し始めます。

「えと、それが?ああなるほど」聞き返した後に、きっちり察した二郎丸さんです。

「前に話した通り、罠を再利用できるようにしとくな」今回は突貫だったからなーと、まず落とし穴の自動開閉と、落しタイプの罠を再利用できるように、は、基本なっているから、定期的に巡回するスケジュールとか、組みますかね?計画の内容説明とかを続ける八兵衛さんです。

「罠でも、経験点がパーティに均等に入る仕様は嬉しかったですね」二郎丸さんが、設定を確認しておきます。

「そうですね、私も7レベルになりました」茜ちゃんが宣言します。

「そうだね、だいたいみんな7レベルかな?」二郎丸さんが確認します。

「ミッション解決済みの経験点も、天から入ってきてるようですね」シルフィさんがその内訳を冒険者カードのログから確認しています。

「あー解決報告をギルドでしなくてもいいのか」八兵衛さんが言います。

「報酬の貢献ポイントは、ギルドに行かないと手に入らないみたいですね、これは、事前に調べてあった通りですね」二郎丸さんも自分のカードを確認して言います。


「ゴブリンの通り道の戦闘というか、罠で乱れた後を掃除しておけば、結構あっさりまた別の個体が、同じように罠に引っかかるような気がしますね」二郎丸さんが周囲を調べながら言います。

「そうだな、いくつか他のルートも念のために仕掛けておいて、ついでに手に入る野生動物とかも回収して回れば、ちょっとした副収入になるかな?」八兵衛さんが言います。

「とすると、狩猟権とか手配しておかないといけませんかね?サクラさん」二郎丸さんがサクラさんに尋ねます。

「えっと、どうだろう、どこの管轄だったでしょうか?ええと一応ゴブリンの出没地点ですから、一般村人は来ない?ですか?ちょっと連絡してみますけど、結局何をするんです?」

「この付近のゴブリン退治ミッションを、資源ゴブリンが枯渇するまで繰り返してみようかと」二郎丸さんがさらりと言います。「こう、オートで罠にはめて、魔石も回収する仕掛けとか作っておきましょう」「おう、できるできる、結構その手の資材はこの世界にもあるし問題ないな、任せろ」八兵衛さんが胸を叩いて引き受けます。


「勘弁してください、他の低レベル冒険者の飯のタネがなくなります」サクラさん、本気で止めようとしていますね。ちょっと泣きそうです。

「えー」不満そうな二郎丸さんと八兵衛さんでした。


「しかし驚くくらい、単純な思考ルーチンでしたね」シルフィさんが言います。

「まあ、あまりインテリジェンスにステータスを振っていない設定ですからね、普通のゴブリンは。魔法の使えるのとか、部族を率いるのとか、さらに多くの部族を束ねる、王とかになれば、少しは違うでしょうけど、田舎で畑とか荒らしている程度のものなら、こんなものではないでしょうか?」サクラさんが魔物の解説をして、フォローしていますね。

「ううん?」シルフィさんが首をひねります。

「なんですか?シルフィ義姉さん」二郎丸さんが尋ねます。

「こう、定番だと、雑魚を延々と狩り尽くすと、その手の厄介?手応えのあるのが出現するのかな?とか思いました」

「なるほど、その展開もアリですね、やはり狩りつくしましょうか?」二郎丸さんがぽんと手を打って言います。

「無いとは言いきれませんね。あの幼女神様なら、その様な仕掛けをしていても不思議じゃ無いですね」頷くサクラさんです。

「あれ、仕掛けるなら邪神様=ショタ枠じゃないんですか?」二郎丸さんがツッコミます。

「すいません、素で間違えました。いや、迷惑な行為をしている神様というカテゴリに直結している様ですね、私の認識では幼女神様」サクラさんがさらりと言います。

「ええと、一応、巫女なんですよね。神様に使える、敬ったりしないのですか?」二郎丸さんがツッコミます。

「この世界(バッファリア)では、幼女神様に使える巫女と書いて、近所の遊び相手相当、とか、最後の良心(外付け)とか、ヒマなのじゃかまえー対象とかと読んだりしたりしなかったりしますね。敬う、そうですね、現実を知らなかった幼少の頃には、些少あったような、そんな記憶がうっすらと、あったりなかったりしましたが、もう遠すぎる過去なのではっきりとしませんね」ちょっと遠い目をするサクラさんでした。

「あー、なんだ、結構あなたも苦労してるのな」睡蓮さんが同情しています。

「あれ、なぜでしょう、目から汗が」キラリときらめく、理不尽さに耐える乙女の、心の汗でありました。

 

「それでどうしようか、結局ゴブリンを狩りつくしてみます?」二郎丸さんがパーティの面々に今後の行動方針を確認します。

「私はそれでもいいな、当面の生活費は確保できたから、時間にも余裕がある」シルフィさんが賛成票を入れます。

「俺も賛成かな?もう少し手を加えれば、隠蔽とか再起動とか資源の無限回収とかできそうだし」八兵衛さんも賛成票。

「うん、穴掘り、結構楽しかったし」茜ちゃんが無邪気に頷きます。

「茜ちゃんすごい勢いだったものな」睡蓮さんが幼子を褒めてます。

「睡蓮さんの応援歌もすごかった、とっても力が湧いてきたし」茜ちゃん細い腕を曲げて、力こぶしを作ります。

「いや、ヨイトマケの唄を異世界で聞くとは思いませんでしたが」二郎丸さんがしみじみと言ってます。「いい声でしたね」

「名曲だよな!」嬉しそうに言う睡蓮さんでありました。

「じゃあ、狩り尽くすという方向で」シルフィさんがまとめます。


「だからですね、他の初心者冒険者に迷惑がかかるので、狩り尽くすのは、やめてくださいって言いましたよね!?」サクラさんが、大きく突っ込みました。




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