奪還襲撃
正は指令に本部に呼び出された。
「失礼します。」
「入って来たまえ。」
指令はメガネの奥で険しい表情を作っている。
「君と同じ対魔術師抑制組織の一員が一名、魔術協会に捕まってしまった。」
指令が続ける
「我が組織は捕虜の身の安全と、返還を要求したが魔術協会はコレを拒否、以降捕虜の情報提供はない。」
「今回の任務は?」
正はもうここまで話されたら内容はわかったが、あえて内容を尋ねてみた。
「その捕虜の安全の確保と奪還が今回の任務だ、捕虜の拘束場所はもうすでに特定済みだ、頼めるか?」
指令は正を見て言う
「私はまだ入ったばかりの新人、荷が重いのではないでしょうか?」
正の問いに指令は
「今は対魔術師抑制組織は人員が不足している、それに無理に人員補充をし、魔術師達の感情を煽りたくはないが、入りたまえ。」
指令がそういうと、元気で調子のよさそうな娘が入ってきた。
春香「倉野 春香((くらの はるか))ですよろしくお願いします。」
ビッシっと可愛く敬礼をしているが。
「よろしく。」
正は淡々と返した。
「な~にぃ?人がせっかく仲良くなろうと挨拶したのにぃ~。」
倉野は不満そうだ
「倉野君をもう少し早く君に紹介するつもりだったが、なかなか本部に来なくてね、遅れてすまないが今紹介させてもらった。」
指令の言葉に正は
「まあ、いいでしょう、で捕虜の名前は?」
「私無視ぃ~?」
春香は不満そうに言う
「倉野君少し静かにしたまえ」
指令がいう
「阿川 沙河利、君のクラスメイトだがおそらく君はまだ会ったことがない。」
「どういうことです?」
そういえば、一つ空いている席がある
「自宅謹慎をしていてな、まだ今学期は学校に登校していないのだよ。」
「なるほど。」
沙河利という人は何をしたのだろうか?
「質問はあるかね?」
「いえ。」
「君達の働きに期待している。」
指令の言葉の後に
倉野ジィ~!!
倉野に正はにらまれた。
グラン・ガーシェル担当事務所
「君に、内密に聞きたいことがある。」
ガーシェルの問いに阿川 沙河利は
「……」
下には魔法陣が床に書かれていた。
沙河利は少し広い部屋の真ん中で足がつかない状態で低空で浮いている。
部屋の壁にも手は届かなかった。
「君が襲った2名のどちらか、本を持っていなかったか?」
「私にはわからないわ。」
阿川はそう告げる
「しかたないな、君が素直に話してくれれば本部に私から交渉してもよかったのに、もう私は君と話すことはない、後は本部に引き渡すだけだ。」
そう言って、グラン・ガーシェルは部屋を出て行った、扉が重い音をして閉まった。
深夜
正はグラン・ガーシェル事務所に裏口が無いか監視していた。
どうやら裏口は無いようだ。
建物は平屋、部屋は見るかぎり二つある。
今回は空間爆破装置はベルトに鎖でつながっていた。
「明かりがついているな。」
暗がりから2人組の男が何か箱を運んで来るのが見える。
「なんだ?」
正は物陰に隠れて監視していた。
二人は事務所の前で止まり、ドアの前で3回ノックをした。
声が聞こえる「誰だ?」
一人が答える「本部より、移送の準備をしてきました。」
「移送?移送途中に襲えば、出てきた所で捕虜を確保できるかもしれない。」
しかし、正は悪い予想をしてしまった、相手は魔術師、どの様な手段を持っているかわからない。
二人が建物に入っていく。
正は、強行突入を決心する。
事務所の入り口の明かりをレーザー銃で破壊し、空間爆破装置で側面の窓を爆破爆破する。
「なんだ?」
魔術師一人が建物から飛び出してくる。
その後ろを何か見えない物が通り過ぎ、扉が閉まる。
暗くなった部屋でその見えない物はゆっくりと明かりのある部屋に動いていく。
魔術師「どうした?開けろ。」
魔術師の声が外側から響く。
その見えない物は倉野、光学マントに身を包んでいる
倉野から電話で連絡がある
「座標E28」
「了解」
正が空間爆破装置でその座標の電球を爆破する。
倉野から指示がある通りに電球を爆破していく。
内部は混乱していた。
「何が起きている?」
ガーシェルがそういった瞬間に、ガーシェルの居た部屋の電球が切れる。
「くそ」
ガーシェルは魔法を唱えて手のひらに火を作り出し辺りを照らす。
「捕虜を守れ」
ガーシェルの言葉にもう一人の魔術師はうなずく。
ガーシェル達は捕虜の部屋まで急いで行く。
真っ暗な捕虜の部屋の中、部屋にはいって捕虜の部屋を照らそうとしたが、次の瞬間。
ガチャンと不気味な音がして後ろで扉が閉まる。
「くそ」
ガーシェルが気づいた時にはすでに遅かった。
ガーシェルが魔術で手榴弾を取り出してドアを爆破する。
「探せ、探すんだ‼」
ガーシェル達は必死に探したが、捕虜は見つけられなかった。