間違いの応酬
阿川 沙河利((あがわ さがり))はもうろうとしながら、コンビニから歩いて帰って来ていた。
「私があんな間違いを……」
「私があんなことを。」
仕方がなかったではすまされなかった。
仕方がないですましたくなかった。
彼女は高校2年生。
正と同じ学校の同じクラスだった。
彼女は学校とは違う理由で自宅謹慎中だった。
彼女は科学組織の一員。
自宅謹慎は明日で解ける。
明日から学校だったが成績優秀、容姿淡麗で自信に満ちた彼女でも、どんな顔をして出て行けばいいか、わからなかった。
死んだ2人の魔術師の顔を思い出した瞬間、暗闇の淵を覗きこんだような感覚に襲われる。
自宅にこもりっきりだった彼女がコンビニに行ったのも、明日の学校でしっかり人と向き合う訓練のつもりだった。
あの日から、何回も思い出して。
そんな彼女に誰かが声をかけてきた。
彼女が振り向くと、銀髪の長い髪に、メガネをかけた、外国人が立っていた。
銀髪「あの〜」のんきな響きだったが次の瞬間。
「お話しよろしいでしょうか?」氷のような冷たい声に変わっていた。
阿川は戸惑うが、警戒する。
だが、次の瞬間、浮遊感と共にあの暗い地下駐車場に飛んでいた。
あの場所に。
人を殺してしまった場所に飛ばされた彼女の叫び声が闇に響く。
戦う気力の起きないまま、彼女は光学バリアーだけを取り出し、全力で逃げ出す。
敵の攻撃をものともせず、走り去る彼女。
その後を銃などの近代兵器を空間から取り出し、追ってくる銀髪。
彼女が地下駐車場の出入り口付近にさしかかった瞬間。
銀髪の男が仕掛けておいた魔法陣が発動した。
光学バリアーを貫通して、彼女の体に電流が走る。
「ああああ、うあああああ。」
阿川の悲しそうな、電流を受けたことによって、かすれたような苦しむ声が響き、魔法陣の効果が切れると共に、静寂が辺りを包む。
「ああ、女性がヨダレなんかたらして、綺麗な顔が台無しだ。」
銀髪はそう言いながら、携帯を取り出した。
「よう‼︎解析少女。」
銀髪が軽い感じで電話に話しかける
解析少女「レディーに向かってそんな呼び方止めてください。」
「悪い、悪い、新人ちゃんでいいか。」
銀髪は悪びれることがないように話す
解析少女「それが今までで一番まともな呼び方ですが、また私の名前忘れてます?」
銀髪「すまん。覚えてないんだ、新入りちゃん。」
解析少女「私の名前は楠木 千花((くすき ちか))です。忘れないでください。グラン・ガーシェルさん、要件を。」
グラン・ガーシェルと呼ばれた銀髪は
「目標の女を捕らえた。ヨダレをたらしながら、倒れているから、早く来てくれないか?」
解析少女もとい楠木 千花が引き気味で答える
「うわ、最悪。全くデリカシーがないですね。」
グラン・ガーシェル「早くして欲しい。人目につきたくない。」
千花「わかりました、すぐ行きますから。」
そう言って電話が切れた。