第7話: 結婚生活
結婚式を、一週間後に控えた日、心が落ち着かなくなっている自分に気付いた。
なんだろう?この感じ?
あたし、このまま結婚していいんだろうか? 本当にこれが答えだったんだっけ?
このまま進んだら、いけないような気がしていた。
もう、あれから、タキから電話も来なくなった。 また、他の女の子と付き合ってるらしいって噂で聞いたから、きっと、幸せにやってるんだろう。
そう、もう完璧に終わったの。
だから、これで良かったんだよ。
若干の不安は、哀しいけど的中した。今の彼が、日を重ねるごとに暴力的な面を見せるようになっていて、いつだったかは、私がちょっとタキのことを口にしただけで、思い切り平手打ちを受けたことがあったりした。
暴力が大嫌いなあたしは、そのことに、かなり引っかかっていた。
口がすっぱくなるほど、彼に言った。
「あたしは、この世の中で暴力が一番嫌いなの。 だから、二度とこんなことしないで欲しい。もし、あたしに暴力を振るいたいぐらいの怒りを感じたら、まずは言葉で解決することをして。 結婚してから暴力を振るったら、あたしはすぐに離婚するから。」
「悪かった・・・」
そう言って、謝ってはくれたけど・・・
言葉の暴力も、どんどんエスカレートしている気もしていた。
あたし、大丈夫なのかな?
結婚式も終わり、二人きりの生活が始まった。
正確には、2ヶ月前から同棲していたので、二人きりの生活はだんだん慣れてきていたけど・・・
やっぱり、彼は・・・夫は、暴力的な人だった。
とにかく、言葉の暴力が酷い。 あたしを、どん底まで落とすようなことを、平気で言い続ける。 底の底まで落ちたあたしを見ると、今度は、これほどにないまであたしを褒めたりする。 そんなことが、とても嫌だった。
結婚してすぐに、間違いだったんだろうな・・・って気づいていたけど、決めたのは自分なのだし、一生添い遂げようと思って、自分なりにがんばっていた。
そんな矢先、妊娠がわかった。
22年間生きてきて、一番の幸せだった。
あたしの命の中に、もう一つの命があるなんて。 こんな幸せってあるんだろうか?って。
でも、それもすぐに打ち砕かれたんだ。
夫に、
「妊娠したよ。」
あたしは、喜びをとても隠せなくて、顔中赤くして、夫に告げた。 きっと、『やったな!』なんて、言われるんだろうな。 って、期待してた。
なのに・・・
「堕ろしてくれ。」
その一言だった。
正直、何を言われたのか、わからなかったぐらいの衝撃だった。
『え? あたしたち、結婚してるよね? なんで?』
そう、心の中で思ったけど、でも、口にすらできなかった。
「俺は、まだ父親になる自信がないから、堕ろしてくれ。」
え? ほんと、何言ってるの?
「冗談じゃないよ。 喩え、あたしが今高校生だったとして、一人で産むとしても、絶対にそんなことしない。 大切な命だよ。」
泣きながら訴えた。
夫は、その日、答えを出さなかった。
結局、翌日、生もうってことにおさまったけど、心はずたずたに引き裂かれたままだった。
いったい、あたしはどうなりたくて、この結婚を選んだんだったっけ?
そっか・・・
自分だけ幸せになりたいって思った罰だったんだね。
エゴだったんだね。
あたしは、本当にバカだよ。