第6話: 次のページへ・・・
月日はどんどん流れていくもんだね。
あたしは、21歳。 早く家を出たかったし、結婚が頭をちらつき始めていた。 今考えれば、早すぎる考えだってわかるんだけど。
でも、タキは相変わらず男友達と遊び歩いたり、他の女の子と遊ぶのが楽しいようだった。 思い出してはあたしと会って、あたしは、完璧キープだった。
5歳年上の人といい感じになっても、同い年の人といい感じになっても、その時はその時であわせたりしたけど、やっぱりあたしはタキが良かった。 タキじゃないとやだった。
飲みすぎたときに、あたし、ふと電話をかけたんだ。 まるで、試すみたいに。
「タキ?」
「あぁ。」
「あたし。」
「うん。」
「もう、落ち着きたい。 結婚したい。」
「俺、眠い・・・」プッ。
電話が切れた。
え? 切った? 大した話しじゃないってこと? あたしより、眠りが大事ってこと?
すごく、落ち込んだ。 もう、だめなのかな?って。
携帯のアドレス帳を探して、5こ年上の彼に電話をかけた。
「あの・・・会いたいのですが」
「え? 今? どうしたの?」
「どうもしてないんですけど、会いたい。」
「今日は、ちゃんと家に帰りなさい。 また、早い時間から会おうね。」
「もう、会いません。」 プッ。
今度はあたしが電話を切った。
相手はわけがわかんなかっただろう。
そして、あたしは、同級の彼に電話をした。
「あたし」
「どうしたの?」・・・と彼。
「何してるの?」
「飲んでるよ。」
「会いたいとか言ったら、会える?」
「あぁ、いいよ。」
そう言ってくれたのが、彼だった。
あたしは、もう、決めていた。
ひどいと言われても仕方ないような賭けをして、その賭けは、同級の彼が全て受け止めてくれたんだ。
もう、いいや。
タキとは、The end だよ。 終わらせなくちゃ。
数分して、彼がタクシーで迎えに来てくれた。
「飲みなおすか?」
「そうだね。」
そして、二人は、朝まで営業してる店で、飲み明かした。
翌日の夕方、タキから電話が来た。
「俺。 昨日、電話くれたよな?」
「したよ。」
「何?」
「もう、いいの。 全て終わったから。」
「どういうことだよ?」
「もう、あたしたち会うのも、電話もやめよう。 終わりにしよう。」
「はぁ? 何?怒ってんの?昨日のこと。」
「怒ってないよ。 でも、もういいの。 終わりにしよう。」
「ふーん、じゃ、わかったよ。そうしよう。」
終わった。
あっけないけど、これでいいんだ。 そう、自分に言い聞かせてた。 もう、振り回されて生きるのやだよ。 それよりも、守られたい。 もう、落ち着きたい。
同級の彼は、なんでもあたしの言うことを聞いてくれて、無理して高いもの買ってくれたり、美味しいところに連れて行ってくれたり、何よりも、付き合って、半年した頃、
「結婚しようか?」
と言ってくれた。
もう、あたしは、それだけでいいや、って思ってたんだ。 なんて、安易なんだろう。 今はそう思う。
「うん、しよう」
それで、翌年に結婚式の手配をして、穏やかに付き合いが続いていった。
そんなあたしの状況を噂で聞いたタキから、珍しく家に電話が入った。
「はい、小川です」
「俺」
「何してんの? 携帯にかければいいじゃん。 っていうか、もう、電話も会うのもやめようっていったじゃん!」
「なんでだよ? お前、なんで結婚すんだよ!」
「タキには関係ないことでしょう?」
「俺と結婚してくれ」
びっくりした。
「ふざけないでよ。 ずっとあたしのこと振り回して、今更何言ってんの?! もう、やだよ。あたし。」
「結婚してくれ。 結婚、他のやつとしないでくれ。」
「できない。 もう、決めたの。」
タキ、泣いてた。 二度目だ。
「こんな風になってしか、ミーがどれだけ大事かって気づかなかったんだよ。 失いたくないんだ。 ずっと傍にいてくれよ。」
「あたしが、どんだけタキのこと好きだったかわかってる? どれだけ、都合のいい女になってたかわかってる? それでも良かったんだ。 でも、もう、限界だったんだよ。 だから、あの日、電話で最後にちゃんと聞きたかったの。 タキ、あたしを受け止めてくれるかな?って。 それなのに、言った言葉、『眠い』だよ? 終わったよ、そのときで。」
「ごめん・・・ミーがそんな風に思ってたなんて知らなかったから。」
「そうだよね。 タキは、いっつもあたしのことなんて、お構いなしだったでしょう?」
「そうかもな。悪かった。」
「とにかく、あたし決めたから。 もう、かけないで。」ガチャッ!
涙が流れてた。
これでいいの? って、自分の心に問いかけてた。
答えは、
『ダメ』なのに、
無理やり『いいの!』に変えてる自分がいた。
タキ、ずっと一緒にいたかったよ。 タキしか、あたしにはいなかったのに。 もう、後戻りできないんだよ。
目がどうしようもないぐらい腫れるほど、泣いた。
もう一度やり直せないかな? とか、散々考えたけど、きっと何度も同じことを繰り返す気がした。
だから・・・ 先に進むことに決めたんだ。
あたしと、タキが大好きだった曲が流れた。
ますます、涙が流れた。
本当に、本当に大好きだったんだよ、タキ。
誰よりも、何よりも、タキのことが好きだった。 それが『愛』だったのかもしれない。