第4話: やっとわかったのに・・・
こんなあたしが、親の縁故で、お堅い職場に就職した。
誰もが、
「できんの〜?」
って意見だったけど、案外あたしは、仕事に没頭した。 一から覚えることばっかで、正直しんどかったけど、でも楽しかった。 仕事が、とにかく好きになっていったんだ。
それも手伝って、タキとはどんどん距離が開いていってる気もしたけど、でも相変わらずたまに会うというスタンスは続いていた。
二人でいることは、恋人だろうとそうでなかろうと、そう問題ではなく、ごくごく自然だったんだ。
今となれば、それが全てだったんだろうな、ってわかるけど、やっぱり二人は子供だったんだね。
だって・・・
あたしが、やっと19歳になったばかりだし、タキはまだ誕生日が来ないから17歳だもの。大人なはずがないんだよね。
付き合っているわけじゃないのに、当たり前のように体も重ねるし、タキの家に行けば、
「ミーちゃん、ご飯食べていきなさいね。」
なんて、お母さんも優しくしてくれる。
「ミーちゃんが付いていてくれるから、カズも学校に行くようなものよ。ありがとうね。」
なんて。
あたし、そんなすごい人間じゃないよ、おばちゃん、って言いたいんだけど。
確かにタキは、
「学校辞めてぇー」
ってよく言ってて、
「高校だけは、とりあえず出な!」
とは、言ってるけどさ。 それって、当たり前だし。 もしかして、あたしといるから辞めたいのかもしれないし。 どっちがいいか悪いかわかんないよね。
とにかく、そんなこんなで、二人は繋がっていたんだ。
春が過ぎて、夏が来て、その夏にタキは変わった。
地元の、夏限定のバイトを始めたのがきっかけだった。 それから、がらがらっとタキが変わったんだ。
もう、あたしとはあんまり会わなくなって、あんまり筋のいい仲間じゃないような人たちと付き合うようになっていって、それが楽しいようだった。
あたしが言い出して別れたのに、あたしはそうなって初めて気づいたんだ。 タキのこと、すごく大切だったんだ、って。
どっかに行ってしまいそうで、不安だった。
その不安どおり、タキは、どっかに行ってしまった。
他の女と付き合ったり、男友達と遊び歩いたり、もう、あたしの手の届かないところに行ってしまったみたいだった。
夏が終わって、秋が来て、いよいよタキが進路を決めることになって、タキも就職を選んだ。それも、あたしみたいにお堅いところだった。
でも、タキはもう、あたしと居ることはほとんどなくて、たまに話すぐらいになっていったんだ。
あたしたちはもう、付き合ってるわけではなかったし、あたしも他の人と付き合おうって思って、社会的にもしっかりした人と付き合ったり、同年代の人と付き合ったりしたけど、どこか、何かが違ってた。
で、結局、タキの都合のいいときに会って、その場限り・・・みたいなことが続いた。
あたしは、都合のいい女になっていったんだ。
それでも良かった。
昔、タキがあたしを束縛してたときよりも、自由だったし、そのほうが楽だったから。
だけど、ちょっと・・・
虚しい気持ちもあった。
狭い街だから、タキの噂を否応なしに耳にしてしまう。 そんなとき、付き合ってないし、あたしがどうこう言うことじゃないもん。 って思いながらも、釈然としない気持ちもあったりしたのは事実で。
タキが、一頻り遊んだ後、結局あたしたちは元の鞘に戻ったんだ。
「やっぱり、ミーがいい」
そう言って。
あたしは、
「そっか。 じゃ、また元に戻ろ。」
なんて、冷静なふりしたけど、内心ほっとしてたし、嬉しかった。
あたしが、20歳、タキが19歳になったときだった。
二人は、特別何が変わるってこともなくて、お互いの親もわかってたし、障害もなく、ただいつもどおり付き合ってた。
どっちかと言うと、
『好きで好きでどうしようもない』っていうスタンスじゃなくて、いないと嫌だからいる、っていう、消去法的な二人の関係だった。
そんなだから、またしばらく付き合っても、タキはほかの女のとこに行ってしまったり、別れてはあたしんとこに戻ってきたりって、繰り返してたんだ。
・・・それでも、良かった。 良かったっていうか、嫌だけど、完全に別れてしまうよりも、タキとずっといたかったから。
結局あたしは、ずっとフリーで、ただ女友達と飲み歩いて、遊んで、その女友達もどんどん彼が出来ていって、あたし一人、ふらふら遊ぶだけの男友達と飲み歩いて、たまにタキと会って、そして当たり前のように体を重ねて・・・
あたしって何なの?
って、次第に思うようになるのに、それほど時間ってかからなかったんだ。
それでも、本当に、タキといたかった。 タキのことが、そうなっても、大好きだったんだ。