悪魔vs気弱(略)
「……ずいぶんコミカルでファンシーな味だな?」
「そ、そうっスか? 悪魔はどうなのか分からないっスけど、少なくても人間の血はそんな味っス。」
首をかしげつつも、少しも怯えた様子がない青年。
そんな青年に、悪魔は興味を持った。
「そういや、お前名前なんて言うの?」
「え、俊平っスけど」
青年――俊平は明らかに悪魔の雰囲気が変わったことは気にも留めず、変わらずへタレ口調で答える。
「しゅんぺい、か。俺は ――――・―――――――― だ」
「え?」
「あ、いっけね。人間には低級悪魔の名前が聞こえないんだっけ。」
「低級?」
「そう。俺、もとが人間だったから力があんまりねーんだよ。だから低級なのな? まぁ、このままじゃ呼びにくいから・・・・・・そうだな。俺のことはゴルゴとでも……」
「じゃあピノって呼んでいいっスか!?」
「へぇっ!?」
思わず悪魔は奇声を発した。
「どうっスか?」
「な……」
「?」
「な、なんでピノなんだ??」
「あぁ。俺の母親が童話作家で、主人公の名前がピノ = フィオッキっいう子供なんっス。」
――――――はぁ!?
――――――お、おかしい。おかしいぞ!?
とても自分の願いを魂と引き換えにかなえようとしているようには見えない態度に、悪魔は今さらながら気がついた。
――――――なんだ? なんなんだ?!
「と、ところで・・・・・・」
「なんっスか?」
「お前の願いはなんだ?」
「へ? 無いっスけど?」
「……………………え?」
沈黙
「……いやいや、呼び出したのお前だろ?」
「え?」
「ほ、ほら! 魔法陣だって!」
足元の魔法陣が書かれた布を指差す。
「え?」
「………ぇ?」
――――――よ、呼び出したのは、先輩のはず。
俊平は違和感を覚えた。
「なのなぁ! 呼び出された俺には分かる。お前だ。お前が呼びだしたんだぁ!」