悪魔vs気弱純情刑事
淡雪のように美しく、白い肌。
蜂蜜のように艶やかな、肩まで届くハニーブロンド。
整った鼻梁。
いたずらっぽい、ややつり目がちな目。
縦に割れた瞳孔を持つ、金色の瞳。
古めかしい西洋貴族のような衣服をまとったすらりとした体躯。
呼吸の方法を一瞬忘れるほど美しい悪魔が、そこにいた。
「へぇ、お前が召喚したのか。」
薄暗い中で、悪魔の目が鋭く光る。
「・・・・・・!」
突然のことに、青年は動けない。
「ふむ」
悪魔は青年を値踏みするために、円陣の中央から一歩、青年のほうへ踏み出す。
――――――さっきの詠唱はずいぶん発音が悪かったが・・・・・・まぁ、アジア人にしてはよくやった方だな。
悪魔は徐々に距離をつめ、へたり込む青年の目の前にしゃがみこんだ。青年の細い顎に手を伸ばし、触れる。
「―――――――――ッ!」
声にならない悲鳴が青年の口から漏れた。
悪魔の手は氷のように冷たく、痛みすら感じる。
「ところで」
妖艶な魅力を醸し出す顔をほころばせ、悪魔は問う。
目の前にいる、自分を呼び出した人間を震え上がらせるために。
それが、悪魔の生きがいだった。
――――――さぁ、無様にわめいてごらん?
「人間の血はどんな味がする?」
「え、雨の日の鉄棒をかんだ味ですけど?」
即答。
普通なら震えあがる質問に、気弱そうな青年は気弱く答える。
そのようすに悪魔は一瞬動きを止めた。
一瞬。