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召喚!
何かが割れる、音がした。
「んぉ?」
聞き覚えのある、それどころか待ち望んでいた音。
仰向けに寝ていた悪魔の目と鼻の先の空間に、黒い渦が浮かび上がる。
――――――召喚だ。
ビー玉ほどの大きさだった渦は一瞬で大きくなり、青年を飲みこんだ。
べっとりとした闇の中、微かに流れる潮風。
重力の方向は絶え間なく変わり、体はぐるぐると回る。
悪魔はそれに快感を覚える。
―――――――――うぁぁん……
不意に、子供の声がした。
悪魔は、聞き覚えがありすぎ、なおかつあまり聞きたくない声に、眉をひそめる。
――――――うわ
―――――――――うぁぁん……
――――――召喚の時にいつも聞こえんだよなぁ。
―――――――――うぁぁん……
――――――他の奴らは聞こえねーって言ってんだけど。
―――――――――うぁぁん……
――――――何で俺だけ?
悪魔は少し不公平を感じた。
―――――――――うぁぁん……
――――――十年ぶりに聞いたけど、やだなぁこれ。
―――――――――うぁぁん……