表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

プロローグ

えー、作者の伊之口です。今回、初めての推理物に挑戦しました。何かと至らない点が多いかと思いますが、どうかよろしくお願いしますm(_ _)m

 とある雑居ビルの二階。廊下の一番奥の一室。そこから、若い男の落胆の声が響く。

「チクショォーー! 俺の五万がァァァ!!」

 事務机の上に置かれたラジオからは、歓声と共に実況キャスターの声が流れる。

『繰り返します。本日のレースは一着ゴッドウィンド・ジャパン。二着ゼロ・ウォーの五−九。配当は、一枚八四〇〇円です』

 ラジオ越しに競馬場の熱気と歓声が轟く。しかし、叫び声の主は机に突っ伏し弱々しくぼやく。

「チクショー……。ホワイト・ワイルドとブラック・バックは何やってんだよ……」

 男の手には、彼が先程列挙した馬の名が明記された馬券が握られており、男はそれを拳の中でくしゃくしゃにしていた。

 そのおり、悲しみのどん底に涙する男に、彼よりももっと若い青年が近づいて来た。

「だから言ったじゃないですか。ホワイト・ワイルドもブラック・バックも絶不調だって」

 青年は『それ見た事か』と言わんばかりに言ったが、それでも一角の敬意は欠かなかった。男に更に歩み寄り、男の両肩に手を置く。

「さ、社長。仕事しましょ。家賃、半年も滞納してるんですから、そろそろヤバいですよ」

 涼しい笑みを浮かべ、軽快に皮肉る。それが災いしたのか、男は青年に食ってかかる。

「仕事だと! てめえ、それは嫌みか!? 仕事したくても依頼が無けりゃなんも出来ねぇだろ!?」

 青年の胸ぐらを掴み、大負けの時に流した涙で顔をくしゃくしゃにしながら、男は怒鳴った。

 しかし、青年は慌てる事なく、同じ事務机の上の電話を指差した。電話はかなり型遅れなタイプで、黒いダイヤル式だった。

 男は負けのショックと皮肉られた事への怒りで、聴覚がすっ飛んでいたのだろう。けたたたましいベルに今更気づくと、一旦咳払いをして電話に応じた。

「はい。こちら、なんでも屋比留間。ご依頼ですか?」

 男は電話の向こう側の人間と、しばし言葉を交わした。そして、受話器を取ってから二分に満たない頃、ついさっきまで沈んでいた男の顔が、日の出の様に明るくなった。

「ありがとうございます! それでは、時間通りに伺います!!」

 歓喜の声と共に受話器を置くと、振り返ってその場で跳ね回った。

「やったぞ! 1ヶ月ぶりの仕事だ! それも相手は大金持ち!!」

 その後も声にならない喜びを全身で表現した男は、上着をひっつかんで事務所を後にした。

「社長! 待って下さい!」

 青年もまた上着を掴むと、風の如く走り去る男の後を追った。

「男」改め、比留間隆…ギャンブル好きの二八才独身。大学を中退した後、「会社を起こして有名になろう」という野望の下、『なんでも屋比留間』を興す。しかし、開業以来、舞い込んだ依頼はたったの八件。比留間は嫌になり、ギャンブルに没頭している。ちなみに、事務所は自宅兼オフィス。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ