「第一話 大勇者の誕生」‐5
カレン 十五歳
黒髪ロングの清楚な美人系少女。身長は178cm。
[最近あったこと]:白髪交じりだった髪の毛が黒髪だけになった。
オイキャス 十五歳
黒髪、黒目の主人公。
[最近あったこと]:婚約していた彼女から急にノーを突き付けられた。
シオノ
カレンの推し。
[最近あったこと]:カレンちゃんの様子がおかしい……笑。
川と別れてから森の中の道を少しだけ歩く。さらに森を切り開いた場所が見えてきた。
「ついた」
オイキャスの分かりやすい掛け声でこの村がラエル村、通称始まりの村であることが分かる。
道と村の境には門があり物静かな門番が立っていた。
この集落は決して大規模ではないが、カレンは「この村にはちゃんと秘密がある」という作者の発言を知っている。
村は何軒かの民家のようなもの、竪穴式住居の形近い、がぽつぽつと建っていて広大な敷地には子どもたちが元気に稽古をしていた。
カレンは目の前に広がるマンガの世界を堪能している。
マンガでも描かれなかった部分もしっかりとフルカラーで脳に映像として送り込まれ自分の妄想技術、補完作業は高レベルだと感じ自分に感謝した。
「今からシオノ君の家にいくでいいんだよね?」
「そうだな、シオノと合流してそのあと長老に挨拶。そしたら身支度の確認をして出発だな」
「はぁ」
「なにぼっとしてるんだ?ほら行くぞ」
まだ心の準備が整っていないカレン、そんなことなどつゆ知らず今度はオイキャスが手を引き目的地まで行く。
「ついた」
オイキャスのわかりやすい説明パート2をカレンにする。
この村の慣習からすればシオノが出ていけばまた別の誰かが住むことになる。そのためどこか特別な家というわけでは無い。しかし推しが住んでいる家を目の前にカレンは興奮を隠せない様子だった。
ま、ま、ま!ま!じ!かぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!
さいっこう!すぎる!
シオノ君が!推しに!実際に!夢の中だけど!対面できちゃうのか~。
心の中でははしゃぎ放題だった。
カレンは天を仰いだ。人生で最高の瞬間の一つになるだろう時をもう少しで体験できる。
夢の中ではあるけど、と自分に付け加えておく。
生シオノ君の家……♡
「しゅ、しゅご……!」
「あのさー?」
不満そうな顔でカレンの顔をのぞくオイキャス。
「何よ?」
人が推しの家を堪能している最中に話しかけてくるなと、カレンも不満になる。
「今日本当に変だって」
同じような事を何回も聞かされたカレンはうんざりしていた。
「そうかもですね~」
そのためすでに返事は適当になっていた。
カレンは今から推しに会えるかもしれない事実が嘘のようで、対面までの時間はまるで永遠のよう感じた。
シオノに会うことができる……、カレンは嫌なことに気が付いた。
今になって自分の着ている服を見た。
ラエル村の民族衣装、白の道場着に紺色の袴のようなズボン。変ではない。しかし『サイワル』関連のリアルイベントでは推しと会えるわけでは無いがカレンはなるべくかわいい服で参加していた。そんなカレンからするとかわいい勝負服で会いたいというのはごく普通の乙女の考えだ。それにブラつけていないし、と嘆く。
匂いも気になり汗臭くないかなどその場で服を鼻に近づけ嗅いだが無臭でどんな匂いがするか分からなかった。
三日寝ていなかった影響で肌などが荒れていないかも心配の一つだ。
「はぁ」
「さっきからため息多くない?」
うるせぇな、出しゃばるなガキが、ゴミの分際で……、なんて思っていない!死んでしまった推しと会えるぶん、心は穏やか。
何もできない状況で悩んでいても仕方がないのでカレンは覚悟を決める。会えるだけでうれしい。それにこれはどうせ夢だから会ったところで相手からは一生認知されない。
千葉県のアルファベットさんは本当にすごい。
「ほら、呼ぶぞ?」
「わ、わかった……」
照れくさそうにするカレン。
「よ、呼ぶぞ?」
「それさっきも聞いたけど?」
踏ん切りがついたのに肩透かしを食らった気分だ。
「シオノォ!カレン連れてきたぞー」
オイキャスが大きな声でシオノに呼びかけカレンはついに対面を果たす……、と思っていたがドアが開いた瞬間カレンの視界には謎の光が差し込む。推しの顔は光の反射により見えることは無かった……。
読了ありがとうございます!
次回のお話も楽しみ待っていただけると嬉しいです
”X"(旧Twitter)にて設定や補足を公開していますのでぜひフォローの方をよろしくお願いします!
誤字や脱字がありましたら指摘をしていただき次第、修正いたしますのでご助力いただけると幸いです