「第一話 大勇者の誕生」‐2
カレン 十五歳
黒髪ロングの清楚な美人系少女。身長は178cm。
[最近あったこと]:白髪交じりだった髪の毛が黒髪だけになった。
オイキャス 十五歳
黒髪、黒目の主人公。
[最近あったこと]:婚約していた彼女から急にノーを突き付けられた。
シオノ
カレンの推し。
[最近あったこと]:カレンちゃんの様子がおかしい……笑。
オイキャスは殴ったカレンを弱弱しく睨みつける。
カレンはどこ吹く風で無視する。
黒髪、黒目の少年──オイキャスを殴ったカレンは彼のことを『数日前の出来事』でより一層恨んでいた。殴ったことで少しだけだが鬱憤を晴らすことができたが、カレンからすると一発殴っただけで「何をするんだ!」と言ったことに不満さえ感じている。
カレンにとってオイキャスはそれだけの大罪を犯した。
オイキャス──『最強で何が悪い!』に登場する主人公、を見つけ体が勝手に動いたが、時間を置き冷静になり、今の事態に当惑していたがすぐにそれらより大きい感情がカレンの思考を支配し始めていた。
オイキャスがいるってことは……。
オイキャスは腫れた頭をなでながら、
「なんで黙ってるんだよ?」
何も言わないカレンに向かって不服そうに聞く。無視するカレンの方を再び睨むとふとオイキャスの中に疑問が生まれた。
「……カレン、その頭どうしたんだよ?」
オイキャスはカレンの頭を見てそう質問した。漆黒の髪を見て。
「無視はしてないわよ。うざかったからシカトをしていただけよ。それで?頭が何よ?」
カレンも現状を説明してほしいことが山ほどあるが、そんな状況で逆に質問をされれば無視の一つもしたくなるのかもしれない。
「いや、髪が、ほら、白が抜けてるから……」
オイキャス曰くカレンの髪は今まで黒髪の一部に白が一部入っていたらしい。
それ、年を取った白髪の生え方じゃない……。
「白髪染めをしたのよ」
「白髪染め?」
オイキャスは髪を染めるという知識がない。
それにしてもこの年で白髪ね、と胸の中でつぶやく。
「忘れていいわよ、今のつまらない冗談」
「そうか」
「それで?なんの用?」
「何って、今日ここを発つ日だろ?あれだけ昨日楽しみにしていたのに」
「楽しみって……」
「……?」
「はぁ」とわざとらしくため息を吐く。
カレンはこの世界の定義づけを完了した。
ここは夢か、と。
シオノのことが忘れられず見ている幻。頭の中でそう決めた。
カレンが現在体験しているものは『サイワル』の一話の冒頭だろう。そうなるとあの謎の文字の羅列も自分が見せた無意識的なものだと考えることにした。
「という事はあなたの誕生日ってことね、はいおめでとう。これで年を一つ食ったわね」
会うならシオノの方がよかったと、オイキャスに八つ当たり気味に誕生日を祝うカレン。
「ありがとう、だけど昨日ちゃんと祝ってくれるって言ったのになんで来てくれなかったんだ?それに殴られたし……」
「どうしてあなたの誕生日を私が祝わなければいけないのよ」
カレンからすれば当然の疑問だ。
「どうしてって……、カレン本当に今日大丈夫か?」
「全然元気よ、むしろ体が軽すぎるぐらいなんだから」
「そうなのか、でも好きな人の誕生日って祝いたいものじゃないか?」
カレンに四日ぶりの衝撃が走る。
「今、なんて、言った……?」
「だから好きな人の誕生日は祝いたいって」
「誰が誰の誕生日を祝いたいって?」
「いやー、えっと、……オレの誕生日を、カレンが祝いたいだろうなって……。こんな恥ずかしいこと言わせないでくれ……」
カレンは言葉を失う。夢とは言え、妄想とはいえ、否むしろ夢だからこそ、妄想だからこそカレンは質の悪いものを見せられていると身が震える思いだった。
なんでこんなやつのことを好きになっているくそ設定なのか、と。
読了ありがとうございます!
次回のお話も楽しみ待っていただけると嬉しいです
”X"(旧Twitter)にて設定や補足を公開予定ですのでぜひフォローの方をよろしくお願いします!
誤字や脱字がありましたら指摘をしていただき次第、修正いたしますのでご助力いただけると幸いです