「第二話 忌み子、呪いは輪廻する」-6
今回少し長めです
カレン 十五歳
黒髪ロングの清楚な美人系少女。身長は178cm。
[最近あったこと]:白髪交じりだった髪の毛が黒髪だけになった。
オイキャス 十五歳
黒髪、黒目の主人公。
[最近あったこと]:婚約していた彼女から急にノーを突き付けられた。
シオノ
カレンの推し。
[最近あったこと]:カレンちゃんの様子がおかしい……笑。
雨はすでに止み、曇り空から少しだけ太陽が顔を出した。バウアーはウミウシが倒されたことをすでに悟っているはずだ。
四人が村に帰るとバウアーは嬉しいような、寂しいようなどこか複雑な表情をして、
「ありがとう、本当にありがとう……」
四人に向かって礼をした。
ただカレン達も複雑な感情だった。
採掘ギルドの面々は無事に帰ってきた四人に歓喜するよりも困惑した様子だった。
村の人々にはすでに説明したのかバウアーと同じような表情をしていた。
ウミウシがいなくなったことで、雨が降るのか、農業はできるのか、心のよりどころをどうすればいいのか、領主との関係はどうなるのか、問題は山積みだ。
そんな村人達の不安を知ってか知らずか、遠くから列を成したオダナグラベルにまたがる大勢の人間がこちらに来ているのが見える。
それをバウアーに伝えると、目を細めてカレン達に、
「あれは領主様の軍隊じゃ……」
今度は村を村の人々の生活を守るためにバウアー自身が戦わなければならない。未来を託した少年たちは応えてくれた。
さっきまでの表情と違い、今はまさに戦う戦士の表情だった。
先頭を走るのはいつもの速度より特段速く走るザクルの車だ。
「わしが説明するから、君たちは下がっていなさい」
バウアーは四人に言う。覚悟は決まった。
何があったのか分からないといった表情のザクルは徐々にスピードを落としバウアーと少しだけ離れたところに車を止める。
今にも説明をしてほしい表情だったが待ち構える大物の存在がそんなことを許してくれない。
そして軍隊はバウアーの前できれいに横に列を作る、バウアーの真ん前を開けて。
よく見ると走らせていた動物はオダナグラベルではなかった。
わざと開けられていた空間に最後尾の三人が我が物顔で止まる。
「バウアー、来てやったぞ」
動物にまたがっていても分かる身長の大きさ。四十代ぐらいの男は紺色の長い髪が印象として強いが服を着ていても分かる鍛え上げられた筋肉も凄まじかった。これが領主だ。
「ケーニッヒ様、ご足労いただき感謝いたします。わざわざこの村のために」
「うむ、約束であったからな、して、雨は止んだようだがどこにウジムシは出たのだ?」
「それについてですが……」
バウアーは深呼吸をする。
「我々で解決いたしましたので被害はございません……」
「……自分達で解決したと?」
「はい……」
「そうか、それはよかったな」
結構意外だ。
もっと怒ったりするのかと思った。「私の獲物を何してくれてるんだ!」って……。
ケーニッヒは周囲を見渡しカレン達を見つける。
「そこの汚れている四人。見ない顔だな……、冒険者ギルドの者か?」
突如話しかけられた四人は驚く。
「そうです」
カレンが答える。しかしこの言い方ではクゥチャラも冒険者ギルドの人間のように聞こえてしまう。
「ふむ、しかしそこにいるのはクゥチャラに見えるが、君は先日採掘ギルドに登録を移したのではなかったか?」
ケーニッヒはクゥチャラが冒険者ギルドでないことを当然のように知っていた。
小さな嘘ではあった、しかし失礼に当たる。カレンは対応と領主の人柄によってはまずいことになるかもしれないと覚悟する。
「申し訳ありません」
クゥチャラがカレンのフォローを入れるように謝罪をする。
「後輩三人がかわいくって、嘘をついて三人に自己紹介をしちゃったんですよ……」
ふざけたように説明し始めたが、一呼吸おき雰囲気を変えて、
「ケーニッヒ様私の嘘が誤解を招き申し訳ありません。彼女に否はないのでお許しください」
クゥチャラは丁寧に謝罪をする。
「ふむ、そういう事情ならそこの女に否はないな。それに私の聞き方も悪かった。許してやろう」
「慈悲に感謝いたします」
カレンは再び豆鉄砲をくらった気分だった。
バウアーから聞いた話をベースに領主という人間を構成し、会話のシミュレーションをしていたため小さい事でも横柄に接するものだと思っていたからだ。
「して、君らが手に隠し持っているものはなんだ?見せてみろ……」
四人はあたふたする。
先ほど、うまくごまかしていたクゥチャラも困っていた。
そんな四人にバウアーは首を横に振る。諦めろの合図だ。
おとなしく手に持っていた、青い鱗とオレンジの角を体の前に持ってきて何を持っているかを教える。
「ふむ、そのオレンジの角と青い鱗はウジムシの体の一部に思えるが違うか?」
「……はいそうです」
クゥチャラが観念したように答える。
「貴様らが倒したのか?」
ケーニッヒは眼光を鋭くし四人に問う。
バウアーが何か言おうとするとその眼光を向け黙らせる。
一気に雰囲気が変わった。
四人はなんて答えるべきか悩んでいた。ケーニッヒの質問に対してはっきり答えるのなら、答えは『ノー』だ。当たり前だ。四人はウミウシを倒していない。
四人が持っているのは確かにウミウシの体の一部であり、ウミウシを倒した者でなければ持っているはずがない。
ケーニッヒはカレン達が『ノー』と回答してもおそらく信用してくれないだろう。
しかし「私達が倒しました」とは答えにくいのもまた事実だ。
仮に本当に自分達で倒したのであれば自信をもって前に立ち『イエス』と言っていた。
どちらとも答えられないという考えがが四人の中にあった。
静寂を切ったのは、オイキャス、
「それには答えられません……」
珍しく敬語を使った。
「して、何故?」
「……何でもです」
「ふむ、答えたくないと申すか」
「……」
「なぜ、答えたくない?自分達が上げた戦果はアピールするものだろ?」
当然の指摘だ、そして続けて、
「いいや、仮に他人の戦果であっても死骸の一部を持っているのであればそれを自分の成果にする、褒められた行為ではないもののよく目にする行動だ。貴様らはその成果ともとれる死骸の一部を持っているにも関わらずなぜ答えぬというのだ?」
正論だった。
命を尽くしている者達は文字通り死に物狂いで成果を上げようとする。カレン達の行動は明らかに矛盾していた。
しかしオイキャスはかたくなに、
「何でもです……」
カレン達の心理をまるで読んでいるかのようにケーニッヒは畳みかける。
「確かに私がウジムシを殺すと宣言した。それを邪魔されたと分かれば腹を立てると予測するのは結構。しかし何を気にしている?この村の事を考えているのか?倒したという事実は変わらないだろ?私はどうこうしようという事は考えていない、何をそんなに気にしている?」
ケーニッヒからさらに意外な発言があった。
カレン達はどこかで自分達が倒したと答えれば、何か罰が下ると弱腰の考えがあったのかもしれない。
「まぁいい。なら女」
カレンは急に自分の事を指名され何事かと思う。
「名は?」
「カレンです……」
「貴様が、あの……」
ケーニッヒはカレンの事を知っているかのように発言し、少し考え、
「よし、分かった。ウジムシを殺したのは、貴様だ、カレン=オレルアンス」
「え?」
カレンは困惑する。
一瞬のうちにイメージが変わる。
え?
なんで私が犯人扱いになってるの?
なっているというかされたというか……。
私これ、どうなっちゃうの?
もしかして結構ピンチ?
それに私にファミリーネームなんてあったの?
いきなり大きい情報を聞かされたカレンはパニックに近かった。
「ち、ちがっ」
「違う、違わないはどうでも良い、私がそう決めたのだ。カレン=オレルアンス、貴様がウジムシ討伐の張本人だ」
結局私の考えは甘かった、所詮は中世舞台、独裁政治……。
だから嫌いなんだよ。
ちゃんとディティールにこだわれよ!
こうなるかもしれないと思っていたから誰も声をあげれなかった。
こうならないかもしれないとどこか期待しちゃった。
……けどまだ何も罰を受けたわけでは無い。
すぐに悲観的になるのはやめよう。
「違う!カレンじゃない!オレ達はウミウシ様にやられそうになった、けど、けど……」
「黙れ!」
迫力のある怒号で威圧する。
「私がそう決めたのだから事実はそうだ!」
私がルールである、と言わんばかりにケーニッヒはとても横柄であった。
否これがこの領地では普通なのだ。
「いいか、そこの少年!世の中には不条理なことなど山ほどある。こんなことは些細なことでしかない!」
ウミウシを倒した犯人をでっちあげるのはたいしたことではないと語るケーニッヒ。
「それに、ウジムシを倒すことのできる人物は限られているのだ……」
その言い方はまるでカレンにはウミウシを倒せるという言い方だった。
ケーニッヒは乗っていた動物から降りカレンの目の前に行く。
「カレン=オレルアンス」
「……はい」
「ついてこい、話がある……」
何をされるか分からず怖かったが、従わないという選択肢はなかった。オイキャスは心配そうな顔をしていたが「大丈夫だから」とカレンは宥めた。一人でケーニッヒの後についていった。
ケーニッヒは常に二人の従者が付き彼を保護している。隊列の最後尾にいた二人だ。
カレンが連れてこられたのはこの村の一般的な木造の民家だ。
ケーニッヒはその民家の扉を無遠慮に開ける。
しかし中は民家というよりも現代のコミュニティスペースに近い内装だった。
受付のような窓口がありそこにはそばかすの付いた女性が座っていた。
「外せ」
ケーニッヒは女性に命令した。怖がるように女性は建物から出て行った。
おそらくここは役所的な場所なのだろう。
「おい、聞こえなかったのか?出て行けと言ったのだ……!」
カレンは自分にも言われと思い込み逃げるように出ていこうとしたが、「貴様ではない」と止められた。
どうやら従者の二人に言っていたようだ。
「し、しかし」
従者は拒否するようにしたが、それを強引に、
「聞こえなかったのか?出て行けと言ったのだ。何度も言わせるな」
先ほど見せたような鋭い眼光を飛ばし従者二人を建物の外に出す。
今からなにされるんだろ?
なんでこんな場所かも気になるし。
まぁもう私だけの罰に留まるなら、それは甘んじて受け入れよう。
確かにバウアーが言っていたように自分勝手の人だと思うけど傲慢で欲深いなとはそこまでは思わないかな。なんでか分からないけど。むしろなんだろ、カリスマ性を感じる。
「そこに座ったらどうだ?」
役所にはいくつかのテーブルとソファが置いてあった。
カレンは一応上座を空け、座った。
「ふむ」と言いながら空いた上座に腰を下ろすケーニッヒ。
「何から話そうか……」
カレンはどんなことを要求されるのかと緊張する。
ケーニッヒは会話の始目を迷っているようだったが、直後に発せられた言葉はいったい何を迷っていたのかと思えるほど驚きの発言をした。
「私の妻になれカレン=オレルアンスよ」
は?
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