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「第二話 忌み子、呪いは輪廻する」-4

カレン 十五歳

黒髪ロングの清楚な美人系少女。身長は178cm。

[最近あったこと]:白髪交じりだった髪の毛が黒髪だけになった。

オイキャス 十五歳

黒髪、黒目の主人公。

[最近あったこと]:婚約していた彼女から急にノーを突き付けられた。

シオノ

カレンの推し。

[最近あったこと]:カレンちゃんの様子がおかしい……笑。

「シオノ……、それは……」

「……君たちに本当に倒せるのか?」

 バウアーは腹を(くく)ったのかそうシオノに問うた。

「倒して見せます……!」

 シオノは覚悟を決めたように返事をする。

「な、オイキャス?」

「シオノがそう言うなら。……やってやるよ!」

「じゃ、俺もついてくとするかな」

「お前さんまだ動けるのか?」

「かわいい後輩三人が頑張ってるんだ、俺もやらなきゃ男じゃねぇ」

 カレンは観念し三人についていくことにする。


 結局こうなる。

 ここで私だけ行きませんとは言えないよ。

 今まで好奇心で動いてきたけど、それでもグリズリーの事件以外は命を最優先し慎重に行動しているつもりだった。

 それに比べて今回は危険すぎる、無謀すぎる。シオノ君は何の勝算があってこんな提案をしたんだ……?

 気になることはまだある。元凶の領主はなぜこの村を(つぶ)したいのか分からない。

 緊急クエスト、しかもおそらく報酬は無し。

 分からないことは多いし私の体力はすでに限界……。


 カレンは予測できていた事態とはいえ、それぞれの思惑が分からずそして何より体が限界なことが今回の一件に対して前向きになれていなかった。

 ただそんなカレンのことなどつゆ知らず事は進む。

「……オイキャス君、シオノ君、カレンちゃん、クゥチャラ、この村のためにどうか、どうかお願いします……。ウミウシ様を、倒してください……!」

 バウアーは四人に頭を下げる。

 断腸(だんちょう)の思いだったはずだ。

 それでも領主にやられ決められた未来が待っているより、未来ある若者にどうなるか(たく)した。

 (さい)は投げられた。


 三人は冒険者ギルドの宿の部屋に一度戻り準備をする。

 シオノとカレンは素手を使った戦闘スタイルのため剣を持っているのはオイキャスだけだ。


 ネックレス、どうしよう……。

 要らないか……。


 三人は準備を済ませ部屋を飛び出る。ギルドの受付の茶髪のお姉さんに何か問題でもあったのか聞かれたが「急いでいるので」とカレンは答え、三人はクゥチャラと合流した。


 四人は焦げたにおいのする中、湖近辺に向かう。雨はまだ止まず地面はぬかるみ走りにくい。


 異形(いぎょう)な生物は湖近くにいた。


 その生物は、二本のオレンジの角を生やし、青い(うろこ)を持ち鱗の間には黒い肌が見える。

 その生物は、闘牛の外形だったが明らかにそれは闘牛ではなかった。

 獣臭さは一切感じなかった。

 全員すぐにこれがウミウシだと分かった。


 ウミウシって湖にいる牛だからウミウシなんだ。

 海関係ないの!?

 てっきり海にいるちっちゃいカラフルな方のウミウシだと思ってた。でもそれだと村に被害があることの説明ができないか。

 一応こいつもカラフルだし……。

 それにしてもでかい、迫力がすごい。

 こんなのと戦わなきゃいけないのか……。


 ウミウシは鼻息をしながら円を描くようにゆっくりと四本脚を動かしている。歩いている円の中心には見たことのある銀色に輝くものがあった。

 ウミウシはザクルがリングを壊した切り株の周りをぐるぐると歩いていた。

「あれ、確かオイキャスのネックレスじゃない?」

「本当だ!」

 飛び出そうとするオイキャスをカレンは服を引っ張り抑える。

「血の気の多いのは悪くないけど、今はもう少し冷静になって」

「でも……」

「でもじゃない!」

 カレンはウミウシの方を向き、

「あれは私達を殺さないようにしようとか、手加減しなきゃいけないとか、そういうをしてくれない。死ぬ事を考えて……!」

「……ごめん」

「……分かればいいのよ」

 カレンは優しい顔でオイキャスを諭す。

「さぁて、どうするよ?」

 クゥチャラはタイミングを見てウミウシにどう挑むかの会議を開始した。

「あなたは何ができるの?」

「俺はナタ使いだ」

「珍しい武器を使うのね」

「まぁな」

「職業は?」

「一応上級職の『剣闘士(けんとうし)』だ」

「パーティーは?」

「一応Bランクパーティーだった」

「そんなにすごかったのにどうしてやめたの?」

「こっちにもいろいろあったんだよ。言ったろ?パーティーを解散したって」

「そう。それであなたのナタは?」

「売ったからない」

「はぁ」

 カレンはあたりを見て長い木の棒を見つけ、指をさしクゥチャラに、

「あれは?」

「悪くないけど、どれぐらい持つか……」

「その時はその時ね……」

「あんたらは何ができるんだ?」


 カレンは一通り説明した。特にシオノの事は詳細に説明した。

「シオノ、作戦考えてくれ」

「そうだね……」

 シオノはしばらく考え、

「カレンちゃんがなるべくウミウシの動きを抑えてほしい」

 シオノが提案するとオイキャスは怒り詰め寄る。

「ちょ、シオノ!なんでカレンが!?」

 シオノは冷静にオイキャスに説明する。

「理由は二つ。クゥチャラさんが本来の自分の武器で戦えないこと、もう一つは現状カレンちゃんが一番仕事を遂行してくれる可能性が高い」

「で、でも、カレンがやるぐらいなら、オレがやる……!」

「それは無理だよ……。アビリティとステータスを考えたら、オイキャスは……」

「でも……」

「オイキャス大丈夫」

 カレンはオイキャスのかたに手を当て大丈夫だと目で訴える。


 そぉれに、シオノ君に頼まれたらやるしかないよねぇ。


 先ほどまであれほど嫌だと言っていたカレンは推しに頼まれただけで簡単に了承した。

「分かったよ……」

 オイキャスは自分の弱さを理解し、反論するのをやめた。

「カレンちゃんが厳しそうだったら適宜(てきぎ)サポートにクゥチャラさんがまわるかたちで」

「はいよ」

「頼んだわよ?」

「任せとけ!」

「クゥチャラ……」

 オイキャスがクゥチャラを呼び、

「カレンの事をしっかりサポートしてくれ……」

「分かってる。あんたのフィアンセを殺させはしない」

 カレンは突っ込まないでおいた。

「頼む……!」

「話を続けるよ、カレンちゃんがウミウシの動きを止めている間にボクとオイキャスが攻撃を入れる……


 弱小パーティーは大物が来た時にこうやって戦うしかないのよね。

 弓とかあれば遠距離攻撃できたんだけど……、近接ばかり集まっているから仕方ない。


こんな感じでどう?」

 シオノの作戦の細かい部分を確認し全員が納得した。

 作戦会議の間ウミウシがネックレスを破壊しないかオイキャスはそわそわ見守っていた。

「それじゃあ行こうか……!」

 シオノが声を掛けそれぞれが配置に着く。

 全員が配置に着き、シオノが合図を出す、カレンとクゥチャラは勢いよく飛び出すが……、ウミウシはそんな二人を知らないように同じ場所を歩き続ける。ゆっくりと、ゆっくりと。

 カレンはそれならとおびえながらも素早くオイキャスのネックレスを回収する。ネックレスはまだ少しだけ熱かった。

 カレンはネックレスを懐にしまった。


 するとウミウシは動きを止める。


 鼻息が荒くなる。体をカレンの方に向きを変え……、後足(あとあし)で砂をかける仕草をする。

 オレンジの角を立たせ今にも突撃しようとしてくる……。


 来るっ……!


 ウミウシはカレンの方に勢いよく突進する。それを両手で受け止め、何とか動きを止める。

「ん……くぅぅぅぅ」

 両腕に力いっぱい込め、重心を低くして足を使って踏ん張りウミウシに身動きをさせない。

 顔の周りの細かい鱗がちくちくと刺さり、手が刺し傷だらけになる。

 土は雨でぬかるみ滑りそうになる。地面がえぐれるほどカレンは足にも力を入れていた。

「オイキャス……、シオノ君……、早く……!」

「おう!」

「うん!」

 オイキャスが剣を振りシオノは蹴込みをするが、


 甲高(かんだか)い金属音が鳴る。


 剣は鱗に簡単にはじかれた。

「か、(かて)ぇ」

「嘘でしょ……」

「……!」

「一回仕切り直しだ!」

 クゥチャラが声とともにうまく木の棒を使いカレンとウミウシの間に割って入る、カレンは引こうとするがウミウシは執拗(しつよう)に追いかけまわす。ガタイのわりにうまく方向転換しカレンの事を簡単には逃がさなかった。

 カレンは木を障害物として使いながら逃げていたが、ウミウシは軽々と木の幹を破壊し突進してくる。

 クゥチャラも木の棒を使いながらうまく対処し、ヘイトをうまく分散しようとしていたがすぐに木の棒は使い物にならなくなった。オイキャスとシオノも邪魔をする、カレンだけに負担をかけないようにしていたが、ウミウシのターゲットはずっとカレンのみだった。

「はぁはぁはぁ」

 思った以上に早く息が上がる。

 それもそのはず。

 今まで、限界ぎりぎりの日中作業を繰り返し、少ないエネルギー摂取(せっしゅ)しかせず、火事の中一人の男を背中に乗せ走り、決闘。カレンの体はすでに限界を何度も超えていた。

 カレンは酸素をうまく体に運ぶことができていなかった。

 そして、


 今日はとことんついていない。


「ん……!」


 胸のあたりが苦しい、痛い。


 カレンがここ数日苦しめられていた胸の痛みが再びここにきてやってきた。

 足を動かすのは厳しく今にも膝に手をつきそうになる。

 限界ぎりぎりでもなんとかウミウシの攻撃が当たらないように逃げていたつもりだったが……、


「カレン!危ない!」


 ウミウシはカレンの動きが遅くなったのを感知し、緩急(かんきゅう)を使ってカレンの予測を(あざむ)き完ぺきなタイミングと間合いで、最高速度で突進する。

 カレンに逃げるだけの反応と力は残っていなかった。

「……!」

 諦めたように目を閉じる。


 体を押された……。


「え?」

 目を開けるとクゥチャラがカレンを押し、代わりに突進を受けようとしていた。


「はぁ……」


 カレンは確かに聞こえた。かすかに記憶に残っている男の声だった。


 直後ウミウシは四つにきれいに()かれていた……、鳴き声を残さず……。

読了ありがとうございます!

次回のお話も楽しみ待っていただけると嬉しいです

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