「第二話 忌み子、呪いは輪廻する」-3
カレン 十五歳
黒髪ロングの清楚な美人系少女。身長は178cm。
[最近あったこと]:白髪交じりだった髪の毛が黒髪だけになった。
オイキャス 十五歳
黒髪、黒目の主人公。
[最近あったこと]:婚約していた彼女から急にノーを突き付けられた。
シオノ
カレンの推し。
[最近あったこと]:カレンちゃんの様子がおかしい……笑。
サル顔の男──クゥチャラは聞いてもない話を続ける。
「俺も力になれると思うぜ?」
「……『気軽に頼れ』とは言えないんじゃなかったの?」
「今回はまた別だ。それに……」
「それに?」
「察するに今回あんたら以外の冒険者ギルドの連中ではどうこうなる問題じゃなさそうだからな」
「まだ何も決まってないけど?」
「まぁまぁ、あの爺さんのところ行くんだろ?」
「はぁ、……ついてくるだけよ?」
「え?俺って良い印象がない?一応協力したつもりだったんだけど?」
「協力してくれたことには感謝してるけど……」
あなたが入ると厄介事が増えそうなんだもん……。
「けど?」
「何でもないわ」
カレンは一応恩義を感じていたため、心の声は言わないでおいた。
「シオノ、この男誰だ?」
「カレンちゃんと話してた人だよ……」
「あー、あの」
カレンは落ち着かない様子の老人に、
「あ、あのお話いいですか?」
カレンの声に気付き動きを止め体をむける老人。
「どうしたのかな?お嬢さん?」
声は意外と焦りなどは感じられなかった。
「私達冒険者ギルドの者なんですけど……」
「君ら冒険者っだのか……若いのにすごいのう」
「あ、カレンです」
続けて二人も自己紹介をし、
「久しぶりだな爺さん」
「……すまない、誰じゃ?」
「ひでぇなぁ、クゥチャラだよ、クゥチャラ!」
「あぁー!クゥチャラだったか、あの悪ガキ五人衆の!」
「お、おう、思い出してくれたか……」
「あぁ、えらく大きくなったなぁ。お前さんは今このパーティーにおるのか?」
「いや、今は採掘ギルドにいる、もう前のパーティーは解散した」
「そっかぁ、他の連中は元気か?」
「あぁ。多分な……」
「それならいい……。おっと、すまないな嬢ちゃんら」
「いえいえ」
「わしはバウアーじゃ。よろしく」
「こちらこそ」
三人は頭を下げた。
「それでどうしたんじゃ?」
「ザクル代表はなぜ領主様のところに行ったのか気になって……」
「聞こえておったか……」
「すみません、盗み聞くつもりはなかったんですが」
「いいや、構わんよ、そうじゃな、何から話せばいいか……」
バウアーはどこか遠くを見つめとある話を始める。
曰く、大昔この村の周りは一年中雨が降らなかったらしい。
曰く、誰かが苗木を植えるとあの大きな木、『極木』に育ったという。
曰く、『極木』が育つとすぐウミウシという動物が来たという。
曰く、ウミウシが来てから冬に雨をもたらしたという。
その後この村では『極木』とウミウシを崇めるようになったという。
「大昔の作り話みたいなものなんじゃが……」
あの大きな木はそんなにすごいものだったんだ、『記憶の樹』みたい。
「この季節には珍しい雨が降っている」
話の続きをしているのかもしくはひとりごとを話しているのか、バウアーは四人に語った。
「これも、ウミウシ様のおかげなんですか?」
「いかにも、ウミウシ様は本当におられる。伝説の生き物ではなく実在しておるのじゃ。わしらにとって救世主のような存在じゃ……」
ウミウシはこの村の人間達に崇められている。
「ただ、ウミウシ様も悪さ好きでのう、たまにこうやって雨を降らすために顔を出したかと思えば村を荒らしていくんじゃ。それには少し困っていてな。そこで領主様にお願いをして、被害をなるべく抑えてもらっておったのじゃ」
「だから、今回も代表が領主様のところに呼びに行ったんですか?」
カレンは自分で言ってどこか腑に落ちなかった。あの表情はどちらかというと領主の元へ行くのに躊躇い、どこか不安な表情だった。ただ助けを求めに行ったわけではなさそうだ。
「領主様は……、領主様は……」
どこか悔しそうな表情でバウアーは話を続ける。
「領主様はひどく傲慢で、欲深い人間じゃ。とにかく自分のために動くような人……」
先ほどまでの優しい話し方とは異なり徐々に強い口調になる。
「そんな人だから、村から食料を奪い!粘土を大量にとるように命じ……!この村は!この村の人間は!憔悴しきっておる!」
カレンはこの村に足を踏み入れた時のどんよりとした空気を思い出した。
「ウミウシ様の暴走を領主様の持つ軍隊で何とか沈めてもらっていた……。しかし……」
バウアーは今までの心労を吐露する。
「この前領主様は確かに言った、『次ウミウシが現れたら、すぐに連絡しろ。私がこの手で殺す』と……」
それはこの村の人間からするととても非人道的だった。いくらこの村を荒らされたって、ウミウシが生きていることを推測するに、ウミウシに何も危害を加ええずに村の被害を少なくしていたであろうと想像できた。
崇める存在をたった領主という身分で殺されては報われない。
「そんな事させてはならん……!もし……、もし、そんなことになったら、完全にこの村は終わりじゃ!ウミウシ様への信仰もなくなり……、さらにその厚かましい恩を返せとよりこの村は搾取される未来が待っている……。そんな事、絶対に、させては、ならん……」
バウアーの気迫ある声に四人は唾を飲む。
ただカレンは疑問に思ったことがあった。
「なら、領主様にウミウシ様が出たことを言わなければよかったんじゃないですか?」
カレンの言っていることは一理あった、しかし、
「カレンちゃん、それは無理じゃないかな?」
反論したのはシオノだった。
「どうして?」
「この時期に普通、雨は降らいないんでしょ?そしたら雨を降ったことを領主様が知れば、簡単にウミウシが出という事が推測できるんじゃないかな?」
カレンは納得した。それに領主ともなればこの地域に雨が降ったことは容易にわかるはずだ。
シオノは話を続け、
「それに、もし領主様に助けをお願いしなかったら、村の被害は確実に起こる。小さかったとしても、この村に復興する力はほとんどないんじゃないかな?」
「……なるほど。私の考えが甘かったです。バウアーさん下手な事言ってすみません」
「いいや、シオノ君の勘が鋭いだけで、カレンちゃんは当然の疑問をもっただけじゃ」
領主を呼ばなくても苦しい、領主を呼んでも苦しい。領主から提案された時点で、ウミウシが出てくればこの村は立ち行きができなかった。
重苦しい話を聞き神妙な様子の中、シオノの放った一言は耳に刃物で刺すように聞こえた。
「……ウミウシはボク達が倒してもいいんですか?」
読了ありがとうございます!
次回のお話も楽しみ待っていただけると嬉しいです
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