「第一話 大勇者の誕生」‐1
カレン 十五歳
黒髪ロングの清楚な美人系少女。身長は178cm。
[最近あったこと]:白髪交じりだった髪の毛が黒髪だけになった。
オイキャス 十五歳
黒髪、黒目の主人公。
[最近あったこと]:婚約していた彼女から急にノーを突き付けられた。
シオノ
カレンの推し。
[最近あったこと]:カレンちゃんの様子がおかしい……笑。
『第一話 大勇者の誕生』
「え?」に続き「なにこれ」とつぶやいた少女は困惑した表情でベッドに上体だけ起こして座っていた。
「えっと、確かこれ、『サイワル』の第一話のタイトルだ……」
目の前に出てきた文字に少女は見覚えがあり、再びひとりごとを吐いた。
羅列された文字は少女が理解し終えたことをまるで知っているかのように目の前から消えていった。
少女は今起きた一瞬の出来事を加えた現在の自分の状況を掴めず何度も考えている。夢であるはずだ、と決めつけ思考の停止したが、直感でこれは夢ではないと訴える自分もいる。
夢だとはっきり分かればどれだけ楽にすんだだろうか、と心の中でため息を吐く。
机やいす、キッチンなどはなく、あるのは寝るためのベッドとその近くにある窓代わり木の戸そしていくつかの本と本棚だけのシンプルなワンルーム。広さは十畳はある。
少女は本棚に近づくためにベッドから起き上がり、立ち上がったことで少女──カレンは再び困惑する。
「目線高くない?」
長くきれいな黒髪を携え顔の印象は清楚な美人系の少女という言葉がよく似合う容姿とは裏腹にカレンの目線は踵から170cm後半にあった。
それとカレンの普段の体とは大きく異なる部分がもう一つ。
「胸重っっ」
彼女は胸のサイズを聞かれた際「Bかな」と答えるほどAカップであることを不満に思っていたが今の彼女の胸は大きくそして重かった。
起きたら違う体つきになっていた。
いつもとの感覚のずれから少しの距離でも歩きにくさを感じたが、体は何故か妙に軽く自分の体じゃないように感じ夢心地だった。
本を手に取るが表紙は見たことのない字で、中をパラパラとてきとーに捲ってみるものの当然理解できるわけはなかったが、本に書いている文字に頭の中で引っかかるものを感じた。しかしそれが何に反応したか、記憶の引き出しをうまく開けることができなかったので特定することは叶わなかった。
この家には本以外の現状把握のための有力な情報はなかった。
ここはどこなのか、なぜ普段の自分の体つきとは違うのか、今はどういう状況か、など分からないことを上げればきりがない。本によって何かの糸口を掴めると思ったが読むことができなかった。
しかしはっきりとしていることは何もしなければ結局疑問は消えないという事だ。
何か手掛かりをつかむために外に出て散歩をすることにした。
ドアを開けた世界はビルどころか家一軒すら生えていなかった。東京で仕事をしているカレンからすると新鮮な風景だった。
アプローチを歩き石の塀から出る。目の前には左右に伸びる川がありそれに沿うように手前に土を押し潰した道が引かれていた。道と川との間には不規則に木が生えている。カレンからすると見慣れない植生の木だった。
どちらに進むか悩んだが右の方向に進むことにした。
景色はカレンにとって癒しだった。
心地の良い気分であるいていたがすぐに道はなくなり森に入りそうになったので引き返すことにした。
歩いていると喉の渇きが早いことに気付く。
体感する気温事態はむしろ日本の方が暑いとさえ感じる程だったが湿度が低いようで暑さを感じない代わりに喉の潤いはすぐに奪われていく。
目覚めた直後は夢かと思ったが今はそれに対して疑問を抱いている。体の感じ取るいろいろな情報は、見ているものが夢ではないと思うには、カレンにとって十分な証拠だった。しかし夢を見ているだけという考えもどうしても間違っていないように感じ現状を現実として受け止めることもできない。
先ほどまでカレンのいた家の近くに人影が一つ。
カレンはおよそ50メートル離れたところからでもその人物が誰かを視認することができ、大股で近づき二人の距離が十メートル近くになったところで少年は体の向きを変えたことでカレンに気付いた。
「いた!カレン、ど……」と少年は声を掛けるが……。
カレンは右手を掲げめいっぱい力を込め少年のあたまに拳を叩きつける。身長差から自然な動作で叩いた。
「痛っっっっ!!!!」
二人の右手とあたまからは今にも煙が舞い上がりそうだった。
少年は痛いという意思表示で声を上げ殴られたあたまをてで押さえしゃがんだ。
「何するんだよ!」
殴られた少年──オイキャスは怒りを口にした。
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