「第一話 大勇者の誕生」-16
カレン 十五歳
黒髪ロングの清楚な美人系少女。身長は178cm。
[最近あったこと]:白髪交じりだった髪の毛が黒髪だけになった。
オイキャス 十五歳
黒髪、黒目の主人公。
[最近あったこと]:婚約していた彼女から急にノーを突き付けられた。
シオノ
カレンの推し。
[最近あったこと]:カレンちゃんの様子がおかしい……笑。
朝になり三人は受付へ向かった。外は騒がしい声がし、人がいることが分かる。
カレンは右手の中指をこする。
「おはようございます」
受付のお姉さんが疲れ顔で挨拶した。
「「「おはようございます」」」
三人も丁寧に挨拶を返した。
「それでは今回のクエストについてご説明しますね」
「お願いします」
「はい。今から皆さんには採掘ギルドウェストンマルク支部の代表についていき粘土の採取するクエストを行っていただきます。採取に関することは現地に行き代表に聞いてください。外に代表がいらっしゃるので、挨拶をしていただければと思います」
「分かりました」
ギルドを出ると少しだけ離れたところに人の集団を発見しその中に遠目からでもわかるほどの大柄の男がいた。
集団が集まっていたのは採掘ギルドの前だった。採掘ギルドは良くも悪くもこの場所に馴染んだ建物だった。
近くに行き大柄の男がギルドの代表で間違いない事が分かった。
「冒険者ギルドから来た!今日はよろしく!」
珍しくオイキャスが代表して元気よく挨拶をした。
「あ?あぁー昨日言ってた……。ガキじゃねえか……」
わずかに驚いた表情をした後、すぐに冷めた目で期待外れだ、と言わんばかりの表情をしたのは三十代ぐらいの男で、もみあげまで茶色の髭を蓄え、体格そして顔ともにクマのような男だった。
「チっ、使えなかったらただじゃおかねぇからな」
どすの効いた声で恐怖を与えるように威圧したかと思えば、すぐに三人を無視して大柄の男は近くに止めてあった御者席に乗り、オダナグラベルを四匹繋げ、それぞれに鞭を打ち少しずつスピードを上げる。三人を睨みつけ、視線でついて来いと言う。
新顔の三人には目もくれず集団は黙々と先導する車に付いていった。
カレンは歩いていると胸に違和感を覚え一度歩くのをやめた。
「どうした?」
立ち止まったことに気づきオイキャスがカレンに聞くが、
「何でもない」と返すカレン。ほんのちょっとだけ胸のところが気になっただけだ。
十数分ほど歩いて大きい湖に着いた。近くには他の木々よりも二倍近く高く大きい木が生えているので昨日ドリッターから教えてもらった『アルシリャ湖』で間違いないだろう。
ワゴン型の乗り物も止まりここが目的地であることが分かる。
代表は御者席から降り集団がしっかりとついてきたことを確認してから、
「よし、お前らぁ!とっとと仕事を終えるぞぉ!」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
集団が気合十分の大きい声で返事をした。
掛け声が終わり、それぞれがキャビンに載せてあった道具を取り出し自分の配置に歩き始めた。三人もそれに倣い車に近づくと代表の方から三人のもとに寄り「これはてめぇらの道具だ、壊したら弁償な?」
バケツと陶磁器製のシャベルを渡された。
「バケツが溜まったらそこの樽に入れろ」
ワゴン型の車のキャビンには大きな樽が6つある。
「お前らはあそこだ」とゆびで指示され他の者と被らない場所で採掘を命じられた。
「これで粘土を取ればいいってことだよね?」
シャベルをもって聞いてくるシオノ。
「そうだと思う」
やることは単純、しかしどれが粘土か素人だと一瞬では判断できない。
三人は互いに教えながら粘土を掬い、バケツに入れる、バケツが溜まったら指定された樽に粘土を入れる。これを繰り返す。
力を入れ、腰を曲げ、走る。肉体労働がこれだけつらいのだと思い知らされた。またすでに掘り起こされている場所も多く、潜って採取しなければならなくなり、より一層ハードだった。
一日目の作業の終了を告げる声がかかった。
三人も作業を切り上げ集団と一緒に帰ろうとしたところで、
「おい!新人三人」
代表に呼び止められた。
「……?」
「てめぇら、全然取れてねぇじゃねぇか?」
カレン達はその言葉に納得できなかった。
「で、でも他の人たちより多く……」
反論しようとしたが大きい声が出ず遮られ、
「口答えしようってのか?お前らは新人だから多く仕事すんのは当然なんだよ!明日は今日の倍とれよ!」
三人はこの日誰から見ても最も成果を上げていた、歴然たる理不尽だった。
そんな事実など興味はなく言いたいことを言い終えた代表は御者席に乗り込み集団を先導する。行きと同じ道を歩き冒険者ギルドから少し離れたところで解散した。すでに日は落ちかけあたりはどんよりとした空気が漂う。
「はぁ」と大きいため息を漏らす。
三人以外にも何組か冒険者ギルドに向かいそのままギルド直営の宿へとぞろぞろと帰る。
流石のカレンも今日は疲れたと例に洩れず部屋へ直行し倒れこむように寝てしまった。
翌朝になり三人は採掘ギルドの前に向かう。
起きた時間はすでにご飯を食べる余裕はなく急いで支度をした。無理を言ってパンだけもらいギルドを飛び出した。
代表と数人が話しているところを目にする。話していた人々は笑顔で礼をして代表から離れ冒険者ギルドに帰った。おそらくクエストが終わったのだろう。
カレンははっきりと終わりがあることを希望に今日の作業に向けて歩き出した。
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