「第一話 大勇者の誕生」-12
カレン 十五歳
黒髪ロングの清楚な美人系少女。身長は178cm。
[最近あったこと]:白髪交じりだった髪の毛が黒髪だけになった。
オイキャス 十五歳
黒髪、黒目の主人公。
[最近あったこと]:婚約していた彼女から急にノーを突き付けられた。
シオノ
カレンの推し。
[最近あったこと]:カレンちゃんの様子がおかしい……笑。
翌日になり三人はギルドに向かって歩いていた。
「それにしてもこの街はすげぇ―な!」
「そうだね、僕達が育った村とは大違いだね」
宿をすぐに見つけ、泥のように眠った二人は改めて視界を埋める街並みに感動をしている。
行き交う人々は活気にあふれ、村では目にしない乗り物が道を占領していた。見たことのない動物がエンジンの詰んでいない車を引き人や荷物を運んでいる。
王都なだけあり街は広く冒険者ギルドにたどり着くまでに時間がかかった。
冒険者ギルドの周りには他のギルドがいくつもあり、商業ギルド、採掘ギルド、鍛冶ギルド、様々なギルドがあったが、冒険者ギルドだけは他のギルドより建物が派手だった。冒険者ギルドは唯一国家を跨いだギルドだからだ、と昨日酒場でカレンは聞いた。カレンは昨日二人が寝た後一人で酒場に行きこの街について聞いていた。
それぞれの建物の看板に、どのようなギルドなのかが書いていたらしいがもちろんカレンは読めない。
ギルドの重たい扉を開き中に入る。
「いらっしゃいませー!お食事の方は右手手前、ギルド登録の方は右手奥、換金やその他受付は左手奥、案内板のご覧は左手手前にどうぞ!」
元気よく迎え入れてくれたのは気のよさそうな金髪のお姉さんだ。
ギルド内は中央に大きな柱を中心に円卓がありそれを囲むように椅子が置かれている。その他にもいくつか長方形の机と椅子が並べられており、ぽつぽつと人が座っていた。柱の前には見たことのない人の石像が立てられている。
朝はもっと人がいると考えていたが思った以上に閑散としていた。
見ない顔の三人衆が来たと座っていた人々が 三人を睨みつけ、カレン達は萎縮しながら右手奥に行った。
「こんにちは!ギルドの登録でよろしいですか?」
「はい。三人、登録お願いします」
指で三と出すカレン。
「三名の登録ですね」
「はい」
「かしこまりました。では登録の手続きのために少々お時間いただきます。そちらの椅子におかけになってお待ちください。準備ができ次第お呼びいたします」
三人は受付の端にある椅子に座って良い子に待つ。
「お待たせいたしました。ではまずこちらの用紙に必要事項をお書きください」
それぞれ渡された紙に必要事項を書き始めた。
カレンはペンが止まる、というよりも動かなかった。字が読めない。
隣にいるオイキャスに、「これ書いてくれない?」とお願いをする。オイキャスは不思議だという顔をしながらも素直に書いてくれた。
カレンの当面の目標は読み書きだ。
書類を書き終わり三人分を受付のお姉さんに渡す。
「書き終わりました」
「はい。ありがとうございます。ではこちらの水晶に手を順番にかざしてください。まずは、……オイキャスさん。お願いします」
オイキャスは指示された通りに水晶に手をかざした。
原作であったシーンだと少しだけテンションが上がったカレン。
「はい。ありがとうございます。では次にシオノさんお願いします」
続けてシオノも同じ動作をして、
「それでは、カレンさんお願いします」
カレンも同じ動きをした。
「ご協力ありがとうございます。それでは皆さんの登録が完了できましたので査定に入ります。こちらはお時間を要しますので、その間にギルドの規則などについて説明をさせていただきます」
「お願いします」
「はい!」
眩しい笑顔でお姉さんが応える。
「現時点で皆様の登録が完了すると仮登録という状態になるのが通常なのですが……」
カレンは原作と違うなと思ったが、そこには突っ込まずに、
「ですが……?」
「実はですね、色々なクエストへの派遣人数が足りない状況でして、新たに登録に来た皆様には特別に本登録から開始させていただいています」
カレンは門番に聞いた話を思い出しそれに関係するか聞いてみる。
「冒険者が足りないのはモンスターが増えているからですか?」
「その事をご存じでしたか……」
受付のお姉さんは気まずそうに話を続け、
「その問題にも手を焼いていますが本件とはまた別です」
「そうなんですか」
「包み隠さず申し上げますと、冒険者に大きい怪我などが急増したため現在人員不足に陥っています」
カレンは納得し、
「すみません話の腰を折っちゃって」
「いえ、気になることがありましたらお気軽に質問してもらって構わないです」
慣れたように対応する。
「という事で、皆様は本登録ですので、…………
以上が本登録の詳細とギルドの規則となります」
長い説明が終わった。
説明されたのは、ギルド本登録による特典、クエスト、職業制度、パーティー制度、SPとお金の話。
「長い説明になり申し訳ございません。ご理解できましたか?」
オイキャスとシオノは理解できていない様子だ。カレンは原作で何回も見たためいくつかの違いはあったがおおよそ同じだったので理解できた。
「大丈夫です」
カレンは小声で、「分からないことはあとで教えてあげるから」と二人に伝える。
説明を理解できなくても冒険者家業は滞りなくできる。簡単な話、モンスターを倒しまくれば問題ない。
「それから……」
受付のお姉さんは再び気まずそうに、
「皆様は本登録ですがいくつか制限と約束があります」
「……?」
「今回は特例ですので」と珍しく付け足すように話を続けた。
「一つは『記憶の樹』への特権移動、そして高ランク依頼の受注、この二つは禁止です。また通常通り仮登録から本登録へ変更するためのクエストはこなしてもらいます。以上の制限と約束を守っていただきます」
いきなり本登録という特例は、あくまで突発的に発生してしまった事例への緊急処置に過ぎない、制限を設けるのは当たり前の判断だろう。仮登録から本登録への変更に必要な少なくない費用の免除だけでカレン達からしてみればありがたい話だ。しかし『記憶の樹』への特権移動が制限されているのは誤算だった。
「さて、ちょうど冒険者カードが出来上がったようですのでお渡ししますね」
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