モノローグ1
西京 華恋 二十八歳
普段はOL、家ではオタク。黒髪ロングの美人。世話焼きだけど少し臆病者。
[最近あったこと]:推しが死んでしまった。
ずっとつけてる大事な指輪のサイズが最近合わなくなってきた。
涼しい風を送るエアコンと扇風機の音が今日の異常な暑さを物語っている。
暗がりの中のスマホのブルーライトを浴び今が七月六日、土曜日の二十三時を表示していることを確認する。もう少しで日をまたぐ時間だ。スマホをベッド脇に伏せて置き、右手中指をこする。
「あー、やっと寝れそう」
声に洩れたひとり言はここ数日のワタシの生活を表していた。
これで寝不足とはおさらばかな。
三日ぶり。
本当にバカみたい。
仕事には支障が出なかったからよかったけど、年甲斐もなく。恥ずかしい。
でもオタクってこういう性分なのよね。と自分に言い訳をしておく。
西京 華恋。二十八歳。OL。
先日大好きなマンガ『最強で何が悪い!』、この作品に出てくる推しのキャラクターが死んでしまった。
初めて好きになった作品の初めて好きになったキャラだったのに!
なんで死んでしまったんだ~!!
なんでよ!先生!
枕に顔をうずめて涙を押し殺そう。
あー、また思い出して眠れなくなりそうになってきた。
せっかく眠くなってきたのに。
一昨日なんて化粧でごまかしきれなくて目が腫れているのを見られて「どうしたの?」って聞かれまくったわ。
かわいい後輩にかわいい顔で「彼氏にふられたんですか?」って煽られたんだから。
彼氏が死んだんだわ!って。……この発言はファンの皆様に怒られちゃう。
「説明大変だったな……」
十五年前の自分に今の自分の姿を見せたい。
「ふぅー」
瞼が重くなってきた。
とうとう、うとうとしてきた。
徐々に意識が遠のいていくのが自分でも実感できた。
「んんっ、痛たたぁ」
よく寝た、のかな?
右手の中指をこすり違和感を覚える。
体が痛い。
目がしょぼしょぼする。
瞬きを何度もして目に潤いが戻ってきた。
周りの状況が確認できるようになり再び違和感を覚える。
「あれ?」
ん?おかしいな。
あたりを見渡すと自分の家ではないことが分かる。
私の住んでいるアパートの壁は木材中心ではない。
木材、というよりもただ木から切り出したような加工のされていない木材という感じでところどころ朽ちている。
とても現代のような清潔感があるとは言えない。
「ここどこ?」
自然と声に出た疑問を解消するために顎に手を当て思考を巡らせる。
あー、夢か。
自分の中の回答が見つかり妙に腑に落ちてしまった。それ以外ない。
身勝手な解釈で思考を殺していると目の前に霧のようなものが出てきた。少しずつ輪郭が見えてくる。
ちょうどゲームの説明テロップが出るような感じで。
こんなものが浮かび上がってきた。
『第一話 大勇者の誕生』
「え?」
読了ありがとうございます!
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