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ゆるいエッセイ集

考え始めると眠れなくなること

作者: 寒がり


 考え始めると眠れない事が幾つかあって、宇宙の始まりはその一つだ。


 科学はビックバン仮説までしか教えてくれないが、ビックバンの材料はどこから来たのか。はたまた完全な無から有が生まれたとして完全な無からなぜ有が生まれたのか。

 疑問は尽きず、時には堂々巡りとなる。


 無から有が生ずることは無いと仮定すれば宇宙は(少なくともその材料は)最初からあったことになる。しかし、このような考えは何物にも初めや原因があるという(私の)直感に反する。なぜそれが最初からあったのかを問わずにはいられなくなくなる。


 無から有が生じうると仮定しても、なぜそのようなことが起こったのかを知りたくなる。


 切り口を変えてみる。

 思考を単純化(矮小化)するためにゲームを想像する。思い浮かべるのはマインクラフトのような系統がいい(3Dのワールドに自らのアバターで入り込み冒険する極めて自由度の高いゲームである。念の為)。あのゲームで、仮に村人が意思を有すると仮定する。さらに、マインクラフトが開発されていないという時点の物事を考える。


 すると、マインクラフトの世界(ワールド)は当然まだ生成されていないため、影も形もなく完全なる無であると言える。

 ただし、完全なる無においても可能性の上で、そのような世界が存在し得、かつ、その世界を上記の村人が認識し得るのではないだろうか。


 この譬えで言いたかったことは、我々の世界は可能性に過ぎず、現実には存在しないのではないかという推論である。暴論に聞こえるかもしれない。だって、現に世界はあるではないかという反論が聞こえて来そうだ。


 しかし、私やあなたがこの宇宙を観測することは、この宇宙の実在を証明する根拠になり得ないと考える。というのも、私もあなたも我々が実在を証明しようとする当の宇宙の一部に過ぎないのだから。


 ちょうど建物を立てるには地面という建物とは別の存在に立脚することが必要で、何もないところに建物を建物自らに立脚して建築することができないように。


 機械による「客観的」観測というのもありうるかもしれないが、その機械のメーターなり画面なりを見るのは私やあなただ。


 それは先程思考実験を行った、開発される以前において可能性として存在したマインクラフトの世界の中で、村人Aが世界の存在を認識していたという可能性、すなわち完全なる無と何ら異ならないはずだ。


 そして、このような仮説——客観的には宇宙は存在しないが、無の中に観念されうる可能性の住民たる私やあなたが可能性の内部で可能性を観測して居るという主観的意味において可能性的に宇宙が存在している——には最初に述べた難題、すなわち宇宙の始まりという問題を回避できるという大きな利点が存する。


 何も存在しない以上、無から有が生まれたとか有が最初から存したとかいう事を考えなくて済む。


 あるいはかの『般若心経』にいう「五蘊皆空」ということと上記の理解とは親和性ないし整合性を有するのではないかと思う。(筆者は『般若心経』について十分な学びを経た者ではないので、識者がいらしたら批評を求めたい。筆者がこのように述べるのは、「空」という事柄の意味を固有の本質を有さず相互関係のみによって存するものと捉える事が許されるならば、上記の宇宙は可能性に過ぎず我々はその内部の相互関係において存在している(と感じている)という状態は「空」であると表現する事が許されるのではないかという考えに基づく)。


 けれども、宇宙が存在しないと言ったところで、その内部に存在する私やあなたにとっては宇宙は主観的に厳然と存在するのであって(身も蓋もない話だ)、このように考えたところで仕方のない話ではある。


 畢竟、宗教者にも哲学者にも及ばぬ、凡庸な人間が夜眠れぬのに任せて考えた、そして有史以来多くの人が思いついたのであろう戯言である。


 さて、あなたはは宇宙の存在や始まりについてどう考えるだろうか。

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