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桃源郷への壁は高く、ハードルも高い。

 魔女になった少年こと、僕、青郷尊は、魔女の師匠となった爆乳美女、ヴェネーラさんと生活を共にすることになっている。

 普通ならば、男なら誰もが羨む生活の筈なのだが、現実はそう甘くない。

「あ、ヤバい…モゲそう…」

 扉越しに聴こえるシャワーの音、思春期真っ盛り、性欲旺盛な僕は、その音の元へ行こうとしたら、もうひとりの僕とさよならしてしまいそうな痛みに蹲る。

「ちくしょう…見るのも駄目とか…辛すぎる…」

 壁一つ先には桃源郷があるのに、辿り着くには犠牲が大き過ぎる…

 辛すぎて涙が出てくる。

「何泣いてんだ?キメェなー。」

 薔薇柄のレース、真っ赤なセクシー下着で脱衣場から出てきた師匠は僕をサディスティックに見下ろしそう言うと、湯上がりの熱が残るお御足でもうひとりの僕を艶かしく撫で、

「湯上がりのビール♪」

 と鼻歌交じりに上機嫌で冷蔵庫に向かって行く。

「生殺しだ…」

 僕は辛くも幸福感に満たされながら、ギンギンに元気になったもうひとりの僕を手で抑え、前屈みになりながらリビングに向かった。


「そういや、渡すの忘れてたわ。」

 2本目のビールを空けたヴェネーラさんは、ご機嫌にハイボールを作りながら僕にスマホを投げ渡す。

「僕のスマホ!!」

 愛しい相棒が僕の元へ…

 そういや、病院出てから僕は本当に何も持ってなかったな…

 今更ながら、その恐ろしさにブルッと背筋が震える。 

「まあ、いっぺん死んだ身だ。全部綺麗さっぱりになってるけどな。」

 ヴェネーラさんの言葉に慌ててスマホを触る。

 無い…無い…家族や友だちの連絡先も、今までこつこつと無課金でやってきたアプリも、何より、年齢を偽り、こつこつと貯めた小遣いで買ったエロいデータも…

「これが人間のやることかよ!!」

 血の涙を流す僕に、

「人間じゃねぇ、魔女様だ。まあ、やったのは私じゃなくシェナだがな。」

 ワイングラスに注いだ冷酒をグイッと一息で飲み干してヴェネーラさんはそう返す。

 シェナ…あの青白く不健康そうな貧乳さんか…

 絶対に許さん!!そう戦慄きながらスマホの画面に表示された日付を見て僕はふと思う。


「8月29日…もうすぐ夏休みが終わるみたいなんですが、学校とかどうなるんですかね?」

「ようやくその質問が出たことに驚きだ。」

 僕の疑問に、呆れた様にヴェネーラさんはそう返し最後の一滴を愛おしそうに一升瓶からグラスに注いだ。


「いっぺん死んだんだ、生き返った新しい世界で普通に生きろ。」

 その言葉と共に、僕のスマホにPDFファイルが勝手にダウンロードされた。

「魔女も擬態しなけりゃ生きていけねぇ時代だ。お前も普通に生きろ。」

 師匠の言葉。ファイルを開くと、転入書類が表示される。

「もっとも、私が面倒見んのは魔法に関することだけだ。学校で問題起こすなよ、エロガキ。」


「友だちを家に呼ぶのは有りですか?」

「呼んだらお前の処女散らす。」

 大人な玩具を虚空から取り出した師匠。

 貞操の危機に尻を抑え、絶対に呼ばないと誓った。


「因みに、ヴェネーラさんの使用済みですかそれ?」

 ヴィーーーーッ!と音を立てる玩具についてそう問う。

「処女開通用で毎回使ってるな。私用はこれじゃ物足んねぇから…」

 さらに凶悪な玩具を取り出そうとしたヴェネーラさんはふと手を止め、

「なんでお前に教えなきゃなんねぇんだよ!!このエロガキ、あと8cmサイズアップしてから生意気言えや!!」

 バキッ!と顎を蹴り上げられ、僕は宙を舞う。

 求めるハードルが高過ぎて、それじゃあハードルじゃなく棒高跳びだよ…涙が滝の様に流れた。




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