遅刻確定の見習い魔女
「知らない天井…エロい下着…」
ゴミや衣類が散乱する床で僕は目覚めた。
なんだこの大切なとこだけを隠さない様にデザインされたドエロ下着は!!
と、混乱と興奮の目覚めとともに身体を起こし目に入ったのは、セクシーな黒い下着に包まれたどデカいおっぱい。
そこで僕は思い出す。
「エロいお姉さんとの同棲生活が始まったんだ…」
ドエロい下着をぎゅっと抱き締め、僕は中高生なら絶対に憧れるエロいお姉さんとの生活に思いを馳せ、幸せな妄想をした。
魔女とか修行は忘れたことにした…
お願いです。忘れさせて下さい…
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「そもそも、1日で着くわけなかやん…」
山に入り、尊くも憎き特定外来生物を狩り、そのお肉を有難く頂く私はそう呟く。
「伝統的に16歳の誕生日に見習い魔女は師匠に弟子入りするとよ。やけん、旅の手筈は整えとくけん、緋音ちゃんもしっかりやるとよ。」
と一ヶ月前にお母さんは私に言った。
しかし、現実は誕生日の前日に強烈なボディブローを喰らい気絶させられ、箒に縛り付けられたわけで、箒の進む速度(男子高校生が全力で立ち漕ぎしたママチャリ位の速度)では到底東京には着かないのだ。
「私は悪なかもん…」
弟子入りの期日に遅れたのはお母さんのせいだ。
「とりあえず、どうやって東京に行くかやね…」
腹拵えの済んだ私は人気の無い山の中、清く冷たい小川で身体を清め、箒に跨がる。
「まあ、なんとかなるやろ。」
本日8月29日。夏で良かった。そうじゃなければ風邪を引いている。
なんやかんや運の良い私は、乾かす術が無く濡れたままの髪を風を切って飛ぶ箒の上で自然乾燥させながらそう呟く。
8月29日、焼き肉の日、今日は私の誕生日である。