3人での交わり
「ありがとう」
「平気だった?」
「うん。一時はどうなるかと思ったけど、桜志君のお陰で大丈夫だった」
「そっか」
澪川はそう答えたものの、桜志は彼女の手が少し小刻みに震えてるのが見えた。そして、それは決して寒さによるものではないことも同時に理解していた。
「澪川さん、怖がらないで。容姿端麗なのは時に僕らに害を及ぼす。辛い目に遭った時とか、嫌なことがあった時は、迷わず僕に相談して。何とかするからさ。例えば、『バイオリンを弾く』とか」
「ありがとう。桜志君って優しいんだね」
「あれ?僕ってどんな人だと思ってたの?」
「バイオリンが上手な人で、キリッとしてる?」
どうやら、桜志は澪川に特技や容姿に関してしか理解されていなかったらしい。桜志はあからさまにガクッと膝を折り、ショックなことを体現した。
その時蓮夜が突然桜志らの前に現れ、手を大きく広げると澪川に話しかけた。
「ええ、雪ちゃんだっけ?桜志に嫌な事されてない?大丈夫?」
「蓮夜!おいっ、僕何もしてないよ。勘違いも大概にしてくれよぉ〜」
「何だと!?桜志の言いなりにはならないぞー!」
なぜだか桜志は蓮夜にひどい勘違いをされているようだった。その一連の流れに、澪川は『プッ』と吹き出した。
「蓮夜さん?かな。桜志君は私のことを助けてくれたんです。なので、決して悪いことをされたわけじゃありません」
「ホントか?信じていいか?」
「はい。信じてください」
澪川が桜志のことを弁護してくれたおかげで蓮夜も一安心したらしい。それにしても、蓮夜は桜志と仲が良いのか、単に薄情者なのか、真意は如何程に?
一段落し、3人で近くの公園のブランコを漕いでいた。
「それにしても、まさか2人が先に会っていたとはな。俺も驚いたよ」
「澪川さんとは偶然出会ったんだ」
蓮夜は一度気になるととことん突き詰めたくなる性分だということは、桜志が1番理解しているため、一から順に説明していた。
「なるほどな。つまり、雪ちゃんとは偶然桜志のお気に入りの場所で会って、バイオリンとか絵に惹かれてたくさん密会していたわけか」
「別に密会じゃないよ。隠してないし」
「ということは2人はもう!?」
「違います」
そこで澪川が鋭いツッコミを入れた。それに思わず桜志は笑った。それが風が靡くのと同時だったから、桜志の笑顔がキラキラしているように見えたことだろう。