前触れ
僕は家に帰った後、しばらくしてからようやく彼女が同じ高校に入るのだと自覚した。
『嬉び』『緊張』色々な感情が一気に混ざっている今日この頃。
休日で時間もたっぷりあるので、防音効果にしてる自室でバイオリンをずっと弾いていた。ふと時計を見ると、もう短針は13時を指していた。
「桜志〜!お昼出来てるよ」
お母さんが呼んでくれたので、一旦休憩することにした。こういう、何気ない日常というのが、僕の心を穏やかにしてくれる。そして、演奏に集中できる大きな利点でもあるのだ。
「今日もずっと弾いてたね。毎週疲れないの?」
「いや、それはないかな。僕は好んで弾いてるわけだから、邪の念がバイオリンに対してないというか」
「物心ついたときから触っていたものね」
なんて他愛もない話をしながらとった昼食であった。
そしてまた休憩していたらスマホの着信がきていたので開くと、僕の一番の仲良しである蓮夜から連絡があった。
『なあなあ。うちの高校に転校生来るらしいぞ。興味あるか?』
「ない。てか、蓮夜が興味あるんでしょ?」
『俺は多方面からモテるが、新しい人というのはそんな俺も気になるのさ。』
何を言ってるんだか。蓮夜は色んな女子から声をかけられることはあっても、恋愛対象とは見られていないことくらい、とうの昔から知っているだろうに。
「まあ、いいんじゃない。余計な手出ししなければ」
『お前も応援してくれるのか』
「しないよ」
『相変わらず塩だな〜。庭にまいてやろうか?』
「やめてくれい」