再会
その後、僕があのほとりにバイオリンを片手に行くと必ずと言っていいほどの頻度で澪川さんがベンチに腰掛けていた。
「やっほ」
「・・・こんにちは」
「君の気に障ったら申し訳ないけど、幼馴染さんとの記憶、思い出すための材料にしてるんでしょ」
「うん」
返事はいつも質素だ。会話は必要最低限といったところだろうか。
しかし、桜志の奏でるメロディーにはいつも耳を傾けてくれる。彼もバイオリンを弾いていたからだろうか。いや、きっとそれしかない。
「『子犬のワルツ』を弾いてほしい」
「わかった」
最初の時以降、澪川からたまにリクエストが飛んできたりするので、彼それに忠実に弾いている。
「やっぱり上手なんだね」
「4歳の頃からやってるから」
「そうだったんだ」
「感心した?」
たまに冗談を入れることで、2人で笑い合ったりでき、割とほのぼのとした時間を過ごしている。
「ところでさ、桜志君はどこの高校に通っているの?」
「僕は秀蓮高校に通ってる」
「私も4月からそこに通い始める」
澪川は引っ越しの理由は伏せたままだが、桜志とは同じ高校に通うことになった。
それに、秀蓮高校は偏差値が高く受験にも一苦労する高校で有名だ。そんな中で通うと言っている彼女は、それなりに頭がいいことは確定している。
「高校入っても頑張ろう」
「うん。でも、桜志君はもう高校生だよ?」
「先輩としてね。別に高校生活が辛いわけじゃない。だけど、少しは緊張するだろ?それを緩和するための一言だと捉えてくれればいいから。あんまり深く考えないで」
「深く考えているのは桜志君の方じゃない?」
「そうかもね」
穏やかな風が彼らの頬を滑り通って、まだ冬で寒いにも関わらず、不思議と気持ちよく感じた。