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真実

「君の幼馴染さんは、今どこにいるの?」


 桜志はとうとう、禁断であろう質問をそてしまった。

 彼女は、今までの無表情さが一気に消え、むしろ顔を歪め、こちらを睨んだ後俯いて細く小さい拳を固く握りしめて言った。


「春夜は、もういない」


 彼女は彼にそう告げた。苦しそうに、辛うじて発した短い言葉に彼は、想像がついていたとしても、いざ聞くと悲しくなった。

 だから彼女は、表情を表に出すことを避けていたのだろう。いや、忘れてしまったのかもしれない。そんな考えを頭の中で張り巡らせていた。


「そう、だったんだ。辛かったな」


「私は彼の最期を看取ったから、遺言も聞いてる。『幸せに生きろ。俺よりもいい奴いるから見つけられるように頑張れ』って。随分とカッコつけるよね」


 彼女は春夜と共有した、つくりあげてきた思い出がたくさんあった。これから生きていく上で辛いことがあった時に思い出すのは、彼の遺言だ。春夜君も随分とカッコつけたがる性格(タイプ)だった。


 彼にも彼女が言いたいことが少しだけわかったような気がした。


「ねえ、貴方の名前何?知りたい」


「冬極桜志」


「冬極ってあんまりいないね。呼びやすいから桜志君って下の名前で呼んでもいい?」


「いいよ。君の名前は?」


澪川雪(みおかわゆき)


「僕は4月で高2だけど、澪川さんは?」


「私は来年で高1になる」


 通常の中3より大人びているのにも関わらず彼女は桜志の1つ下の学年だった。

 歳はあまり当てにならないが、同い年かそれ以上だと思っていた身には少し驚きが隠せないな。


「その、澪川さんの幼馴染さんはいつ、お亡くなりになったの?」


「半年前」


 静かで冷たい風が、窓から伝わる。

 もし彼の家族や友達が半年前に亡くなっていたら、未だに体に応えていたかもしれないにも関わらず、強く、品びやかに生きている理由の根源には、春夜の遺言の存在が大きかった。

 桜志は澪川さんのことをもっと知りたいと思っていた。彼女の描く作品も見たい。絵は人の心の奥深くを表すものだと思うから。彼女の心底にある思いを知りたい。


 そんな心の裏側にある想いを隠し、話していた。


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