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冬極 桜志

 桜志は、朝は湖に行くので、7時にはサンドイッチとともに家を出ている。いつもの日課だ。


 桜志は、湖の手前にある木々を眺めながら初めて澪川に会った時のことを思い出していた。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 そういえば、澪川さんと出会ったのはこの湖だったな。コンクールが終わり、僕は初めて澪川さんに出会ったときのことを思い出していた。


 僕はあの日いつも通り夜の練習をしていた。しかし、あの日は調子が良かったのは今でも覚えている。

 何事も考えずにただ音と音を紡いでいたあの時、今思えば澪川さんの存在があの音を導いてきてくれたのかもしれない。


 奏で終わった後、後ろの方で拍手が鳴り僕は吃驚した。澪川さんは、僕の目をずっと凝視していた。理由はわからない。

 それでも、何かを考えていたのはわかった。僕の顔には何もついていない。それなのに考えていた。僕はそこに興味を持った。


 澪川さんは基本塩だ。岩塩だ。いつも儚い顔をして一体何を考えているのかさっぱりわからない。だから、絵を描いていることを知った時意外だったんだ。


 僕は絵に惹かれることが多く、よく絵画展に行ったりもした。



 絵と音楽は似ている。感じたものを絵で表現するか音で表現するかの違いだ。そして、そのどちらもが合わさった時、その場が華やかになる。僕はその感覚を味わってみたい。

 絵画が至るところに飾られている会場で1人ピアノを気持ちよさそうに弾いている様子を見て憧れたんだ。


 そして、それから時間が流れていき、色んなことがあった。主にコンサートが多く、暇な時間などないほど忙しい日々が過ぎていた。だから、いつの間にか忘れていたんだ。



 色と音の美しさを。



 そこに澪川さんが登場し、僕は幸せな時間を過ごすことが出来た。彼女は絵を描き、絵を愛している。その絵への真っすぐな感情を目の当たりにした瞬間からなのかもしれない。

 みるみる惹かれていった。彼女の所作、考えていること全てに魅了された。

 そして何よりも、僕の念願の夢を叶えてくれるような人だと確信した。

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