雪の中のバイオリン
深々と降り積もる雪。それに囲まれた冬極桜志、17歳。彼は、毎日切磋琢磨この世界で生き抜いて輝きを手に入れている自然が大好きだ。
そして、桜志は雪の中で1人バイオリンを奏でる。
バイオリンは4歳の頃から始めた楽器で、今では人気曲、不朽の名作なんかは暗譜で弾ける。
桜志は好きでバイオリンに触れている。だからこそ繊細なタッチから大胆な音まで幅広い範囲の奏法を、すぐにマスターした。
1人で氷と化している湖に向かって音を響かせた。彼だけの音だ。
パチパチパチ
奏で終わった静かな空間に小さな拍手の音が木魂するように広がった。突然のことに驚いた桜志は音の鳴った後ろを向いた。
そこには1人の少女がいた。とはいえ、年は彼と同じくらいのようで、黒い服を身に纏い少し離れたところに立っていた。
その光景が彼には光り輝いて見えた。それはきっと、彼女のオーラからくるものだろう。
「とても綺麗な音色ね。何を弾いてたの?」
「今のは、僕が思いのままに奏でた音たちだから曲ではない」
彼は『少しかっこつけたように聞こえてしまっただろうか』と思う。それでも、それは本当のことだったため、他に何の言いようもなかった。
「ねえ、もう一度私に演奏してみてくれない?」
「いいよ。リクエストされたらそれ弾くけど、何かあったりする?」
「う~ん、じゃあ『G線上のリリア』がいい」
「分かった」
それは、とても有名な曲で皆一度は聞いたことがあるだろう。それくらいの名曲だ。僕もその曲が好きだ。テンポが遅く、それを弾く人によって音や雰囲気が変わってくる曲だ。
桜志はテンポが遅い曲を弾く時は一音一音丁寧に弾き、音の響きを大切にしている。
この曲を弾くときはいつも『淡い何かが漂っている』ような表現をするようにしている。それが彼には1番しっくりくるのだ。
「突然なのに演奏してくれてありがとう。すごく綺麗だった。」
「全然。僕も楽しかった」
あんまり人に演奏を聞かせることがない桜志は、久々のことで少し高揚感を味わった。
それに、聞いている間、彼女の目は静かに周りの景色を楽しんでいて、耳だけをこちらに傾けていたがゆえに『見られている』という緊張感無く演奏できた。