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霧の国へようこそ~普通の中学生ですがどうやら魔導の天才らしいです~  作者: みつまめ つぼみ
第2章:新しい時代

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69.神罰

「初代様?!反撃の狼煙のろしってどういうこと?!」


 瑞希はお腹に向かって叫んでいた。


『そのまんまだよ?

 しばらく眩暈めまいひどいと思うから、歯を食いしばって耐えてね!』


 瑞希が返事をする前に、お腹の中から濃厚な霧の神の気配が満ちていった。

 気配は車内を完全に満たした後、瑞希のお腹が光り輝くほどの魔力を放っていた。


 はげしい眩暈で何が起こっているのかも理解できない瑞希は、ただアルベルトに抱き抱えられていた。

 アルベルトは沈黙して、窓から車外の様子を見守っていた。





****


 国王は事態を把握しきれないまま、ただ戦況を見守っていた。

 敵軍の援軍と思われた南方国家軍が、北方同盟連合軍を攻撃していた。

 守備軍はそれに呼応するように北方同盟連合軍を攻め立て、戦況は優勢に傾きつつある。


 これなら、市民たちを逃がす時間が稼げるかもしれない。


「いますぐ非戦闘員を先に進めよ!

 シュトルム領に急げ!」


 叫んだ国王の声を遮るように、少女の声が天から辺り一帯に響く。


『まぁまぁ、落ち着いてよ王様。

 ここまでよく頑張ったね。

 まずは、神竜ちゃんに挨拶させるね?』


 空が光り輝き、兵士たち全員が空を見上げた。

 ――そこには、晴れた空に、白い巨大な竜の姿がくっきりと浮かび上がっていた。

 あたりには雄々しく神々しい気配が色濃く漂っている。


『我が名は創竜神。

 我が信徒として相応しくない者が、この場には大勢居るようだ。

 我は”霧の神に従え”とめいじたはず。

 このめいを守れぬ者を、信徒と認めるわけにはいかぬ。

 その全ての者に、破門を言い渡す』


 晴天の空から降り注ぐ、無数の白いいかずちを次々と受けた兵士たちは、武具の全てを破砕はさいされ、無防備な姿をさらしていた。

 その額には、白竜教会で咎人とがびと――破門を示す文字が焼きこまれている。


 動揺する兵士たちに、北方連合軍の将校たちが怒号で指示を飛ばす。


「ええい、素手だろうが構わん! 敵兵をつぶせ! 数では圧倒的に我が軍が優勢だ!」


 再び天から少女の声が響き渡る。


『じゃあ次は、私からの挨拶をするね?』


 晴天の空に浮かんでいた竜の姿が、一人の少女の姿に変わっていった――瑞希の姿によく似た少女だ。

 同時に、霧の神の気配があたりに色濃く漂っていた。


『神竜ちゃんから破門にされた人には、お母様直伝、死の権能をお見舞いしてあげる。

 痛みはないから、安心して死んでね?』


 北方連合軍が突然巨大な霧に包まれ、ほとんどの兵士たちが力尽きるように倒れていった。


 沈黙が支配する戦場に、また少女の声が響き渡る。


『私は霧の神の子。

 霧の神が休息している間、信徒を守る力となる者だよ。

 今は瑞希のお腹の中に居るんだ。

 みんな、よく頑張ったね。みんなの祈りの力、確かに受け取ったよ。

 今の記憶は忘れちゃうけど、この気持ちだけは忘れないと思う。

 これからも、瑞希をよろしくね』


 その声を最後に、晴天に浮かんでいた少女の姿が、煙のようにき消えていった。

 神の気配も消え去り、戦場には大量の兵士たちの死体と、唖然としてたたずむ各軍の兵士が残されていた。


 呆然としていた国王が我に返り、慌てて叫ぶ。


「ミズキの安全を確保し、直ちに連れてまいれ!

 王都まで丁重に護送する!

 南方国家の援軍にも使者を送り、司令官と連絡を付けよ!

 生き残った北方連合軍の兵士は捕縛せよ!

 兵の再編を急げ! 王都に戻るぞ!」





****


 アルベルトは一部始終を馬車の車内から見て、ひたすら戦慄していた。

 この子供は神の権能、つまり魔法をいともたやすく使って見せる――それは人間と言えるのだろうかと苦悩をしていた。


『あれ? 言ったでしょ?

 肉体と精神は、間違いなくあなたたちの子供だよ?

 今見せたのは、神の子として、私の魂が持つ力なんだよ。

 そして王都市民が毎日熱心に捧げた祈りの力を借りた大奇跡なんだ。

 神竜ちゃん――ああ、創竜神って言わないと分からないか。

 あの子の力も借りたけどね』


 アルベルトが瑞希のお腹に向かって告げる。


「人間が神の力を使っても、生きていられるのか?」


『今の私にペナルティはないよ。まだ人間になりかけの存在だからね。

 生まれ変わったら、そこまで大きな力は使えないと思うけど』


 瑞希がようやく眩暈めまいから立ち直り、お腹に向かって尋ねる。


「なにが……あったの?」


『お母様――霧の神に代わって、神罰を与えただけだよ?

 今の映像は、周辺の信徒たちにも映像として送りつけておいたから、もう瑞希の命が狙われることはないんじゃない?

 こんな大きな力、もう使えないと思うから、これからは気を付けてね』


ひど眩暈めまいだった……『また使える』って言われても、こっちから断るよ……。

 それに『周辺に送りつけた』って……また大騒ぎになるんじゃないの?」


『私は神じゃないから、未来までは見れないんだよね。

 あとは瑞希たちが頑張ってね』


「ちょっと待ってよ?! 霧上家の祖先なら未来だって見れるでしょ?!

 ねぇってば! ちょっと?! 返事しなさいってば!」


 その声に応える者は居なかった。


 静まり返った車内で、瑞希とアルベルトが同時に大きくため息をついた。


「なんか……とんでもない子になりそうだね……

 育児、大丈夫かなぁ」


「……なるようになるしかあるまい。

 記憶もなくなり、肉体と精神が人間の物になるというんだ。

 ある程度は、まともになるだろう」



 ユリアンが馬車にやってきて車内の瑞希に告げる。


「ミズキさん、無事?! ――無事、みたいね。

 何が起こったのかは分からないけど、陛下が『王都に戻る』って宣言したわ。

 敵兵は捕縛済みだし、多分安全よ」


「ねぇユリアンさん、南方国家って、どこの国だったの?」


 ユリアンが肩をすくめた。


「ドルトウム王国よ。ライツラー侯爵が部隊の司令官をしてたわ。

 あの人、外交官じゃなかったのかしら。

 よく分からない人ね」


「ライツラー侯爵が?

 そう……何があったんだろう」


 思い返せば、懐妊祝賀会の時も、瑞希の身体をいたわった言葉ばかりをかけていた。

 彼が何を思ってこんな行動をしたのかは、直接聞くしかないだろう。


 馬車が動き出し、向きを変えていった。

 ユリアンたちに護送されながら、馬車は国王たちが待つ場所へと向かっていった。





****


 ――王宮のサロン。


 アルベルトとユリアンにハンス侯爵子息、ヴォルフガングの監視が付きながらではあるが、瑞希はライツラー侯爵と向き合っていた。

 沈んだ表情のラニエロ公爵の姿もある。


 瑞希が告げる。


「要求通り、ラニエロ公爵も連れてきたよ。

 南方国家で何があったか、教えてもらえるかな?」


 ライツラー侯爵が応える。


「デネブ国王から、ラニエロ公爵経由で今回の策謀の提案を受けてな。

 私は私の信仰心に従って行動をした。

 あの戦場に立っていて、創竜神様から破門を言い渡されていない事が、我が信仰心の証だと思って欲しい」


「今回の策謀って?」


 ラニエロ公爵が応える。


「ドライセン王国周辺国家で手を組み、ミズキ殿下の抹殺をはかる、というものだよ。

 南方国家はシュトルム領に逃げ込むミズキ殿下にとどめを刺す役割を与えられていた。

 そういった指示書を、私はライツラー侯爵に渡しただけだ」


「なんでライツラー侯爵を選んだの?

 南方国家なら、他にも武力の高い国家はあったでしょ?

 言っちゃなんだけど、ドルトウム王国はどちらかというと弱い国だよ?」


 ライツラー侯爵が笑った。


「ははは! ハッキリと言ってくれる!

 確かに、根回しには苦労をした。

 陛下や周辺国家から借り受けられた兵も、合わせてたった二万だ。

 だがそれでも、ギリギリで間に合った。

 ――そして私も知りたい。ラニエロ公爵、貴公はなぜ私を選んだ?」


 ラニエロ公爵が肩をすくめて応える。


「私が知る南方の外交官の中で、貴公が最も信仰心があつい人間だからな。

 必ずミズキ殿下の力になってくれるはずだと信じていた。

 ――まぁ、賭けであったことも否定はしない。

 だが他に選択肢もなかったからね」


 瑞希がラニエロ公爵に尋ねる。


「その策謀を私に伝える、ということは考えなかったの?」


「私は公爵、王家に連なる家を背負う人間だ。

 国家を裏切る真似までは許されていない。

 陛下の指示は『機密書類を南方国家に渡すこと』だ。

 機密を漏らす真似こそできないが、渡した相手がそれを受けてどう動こうと、そこは私の責任ではない。

 その制約の中で、最大限ミズキ殿下のためになることをできたのではないか、そう思っているよ。

 ――もっとも、こんなのは所詮言い訳だ。裏切者国家の公爵家であることに、なんら変わりはないけどね」


 瑞希が腕を組んで唸っていた。


「これから周辺国家は、どうなると思う?」


 ラニエロ公爵が応える。


「北も東も、ほとんどの戦力を失ったからね。

 しばらくは他国に攻められないように必死になるだろう。

 ドライセン王国への賠償金払いも発生するだろうし、国家としては危険な状態になる。

 特に、中心となって動いていた我がデネブ王国は存亡の危機だろうね。

 王家の威信も地に落ちて、素直に滅びた方が楽かもしれない」


 瑞希が天井を見上げて告げる。


「確かに、デネブ国王はもうどこからも信用されないよね。

 武力も富も失って、国家としては、死んだも同然になっちゃった。

 でもそれで他国に占領されても、ドライセン王国も困ると思うんだ。

 デネブ王国は北方の要衝ようしょう。北方同盟連合をまとめる国でもあったし。

 ――だからさ、ラニエロ公爵がうちに亡命してきてよ。公爵位を保証するからさ」


「は?!」


「それで、うちがデネブ王国を滅ぼして、ラニエロ公国って属国にする、という案はどうかなぁ?

 国家を断絶しちゃえば賠償金の支払い義務もなくなるし、武力が揃うまでの間は、うちが兵を派遣できるよ?

 さすがにデネブ国王には責任を取って死んでもらわないといけないけど、他の王侯貴族の処遇しょぐうはラニエロ公爵に任せてもいいだろうし。

 今のデネブ王国民が幸せになれそうな未来って、それくらいじゃない? どう?」


 ライツラー侯爵が高らかに笑った。


「はっはっはっは! 霧の神の眷属、直々の提案だぞ?

 創竜神様の信徒である貴公も、従う義務がある。

 そしてなにより、確かに民衆の生活を安定させるには、それしかあるまいよ。

 デネブ王国を維持する限り、民衆は貧困にあえぐことになる。

 ――特に断る理由があるか?」


 ラニエロ公爵が戸惑いながらアルベルトを見た。


「それは、一理あるかもしれないが――王太子殿下や国王陛下は、その提案を飲めるのか?」


 アルベルトも腕を組んで考えこんでいた。


「……ミズキの提案だ。私に異論はない。

 父上には私から、ミズキの提案だと上奏じょうそうしておこう。おそらく、二つ返事で頷くだろう。

 ――ラニエロ公爵。貴公には窮地きゅうちを救ってもらった恩がある。

 あの時現れたのがライツラー侯爵でなかった場合、我が国の被害は甚大じんだいなものになっていただろう。

 父上や母上の命すら危うい状況だったのは、間違いがない。

 その功績を持って亡命してくるならば、公爵位を保証する事も可能だと思う」


 ラニエロ公爵が目を落として考え込んでいた。


「……だが、北方同盟連合の中心国として今後も動ける保証はない。

 どの国も、我が陛下の謀略に乗っかっておお火傷やけどを負ったのだ。

 国家が断絶するとはいえ、私の言葉に従うとも思いがたい。

 期待は嬉しいが、応えられるとは思えない」


 瑞希が微笑んで告げる。


「私が言葉を添えるよ。

 各国に『ラニエロ公爵にちゃんと協力するように!』って言えば、断れる国はないんじゃない?

 だって、あのとんでもない現象を周辺国の信徒たちは見せられたらしいんだよ。ラニエロ公爵も、それを見た一人でしょ?

 ……初代様の言う『周辺の信徒』がどのくらいの範囲なのか、それを確かめておきたいな。

 ねぇライツラー侯爵。あの戦場の映像を見た人がどの地域にまで広がってるか、調べておいて貰えるかな?」


 ライツラー侯爵がニヤリと笑った。


うけたまわりました。我が情報網を駆使して調べてまいりましょう」


「シュライヴ皇国軍がどうなったのかは知ってる?」


 アルベルトが応える。


「大奇跡で、やはりほとんどの兵が命を落としたようだ。

 生き残っているのはおそらく、霧の神へ恭順きょうじゅんする意思を持っていた者じゃないか?

 皇国にはまだ兵力が残っているかもしれないが、あの現象を見せられて攻め入る勇気はあるまい」


「うちの被害、どのくらいだったのかなぁ……」


「今調べている最中だが、王国軍は七千から一万程度の損耗そんもうだろう。

 志願兵は怪我人を多く出したが、今のところ死者は出ていないようだ。

 国家存亡の危機だったんだ。それを考えれば、奇跡的な結果といえる」


「最低でも軍人が七千人か……私のせいで、ひどい目にわせちゃったね。

 私が居なければ、死なずに済んだ人たちだったのに」


 アルベルトが微笑んで応える。


「私たちは霧の神の信徒。

 その霧の神が『よろしく頼む』と言い残したミズキが居た事で起きた事なら、誰も苦には思わないさ。

 お前を受け入れた時点で、苦難は織り込み済みだ。

 それに今回、民間人の死者は一人も出ていないようだ。

 まだ全てを調べ終えた訳ではないが、おそらく怪我人だけで済んでいるはずだ。

 霧の神が言い残したように、信徒が捧げた祈りが彼らを救った。

 私たちは最善を尽くせたと、そう思うぞ?」


 ライツラー侯爵が瑞希に告げる。


「今回のことで、ドライセン王国を取り巻く国家は武力を根こそぎ奪われた形だ。

 国家の兵力を三割失う程度、痛くもかゆくもないと言える。

 南西、シュトルム領の周辺は今回ほとんど関与していないが、あの現象を見せられていれば攻めてくる事はあるまい。

 あの地域は早い段階で調査を行い、報告を上げよう。

 それで安心してはもらえないだろうか」


 ラニエロ公爵も続く。


「周辺国も、当分はドライセン王国の兵力と白竜教会の私兵団を使うことで防備を固めることになるだろう。

 デネブ王国のように、属国の道を選ぶ国も出るかもしれない。

 ドライセン王国を取り巻く環境は、これで安定するだろう。

 ――そして、今回のことについて、ミズキ殿下は被害者だ。

 神の言葉を真摯しんしに受け止められなかった信徒に非がある。

 創竜神様があれほど厳しい罰を与えるのは、とても珍しいことなんだ。

 そう気にまないで欲しい」


 瑞希はそれでも納得しきれず、肩を落としていた。


「そうかなぁ……みんなの気持ちは有難いけど、やっぱり気持ちがすっきりしないよ」


『ちょっと瑞希、あなたが落ち込んでいると私の体調にも影響が出るんだから、しっかりしてよね?

 母親でしょう? みんなが”気にするな”ってことを気にんでどうするの?』


「あっ! ちょっと! 初代様!

 未来が見えないってどういう事?!

 ちゃんと説明して!」


『だーかーらー。今の私は、それほど大きな力を使えないの。

 信徒の祈りや神竜ちゃんの力を借りても、あの程度の奇跡を起こすのが精一杯なの。

 未来を見る魔術なんて使ったら、瑞希の命に影響が出ちゃうんだよ』


「……あれを『あの程度』って言っちゃう力を持ってるのか。

 ホントに私、あなたを育てきれるのかなぁ。不安になるよ。

 ――それで、その『神竜』って創竜神のことなんだっけ?」


『そうだよ。神になる前の名前だね。今では忘れられた名前みたいだけど。

 私が居た頃はまだ”神竜”って呼んで可愛がってたから、ついそっちで呼んじゃうんだよね』


「初代様も一緒に可愛がってたの?」


『あの時点で、私の方が神竜ちゃんより強かったし。今はどっちが強いんだろう? 神格では、私の方が上だけど、よくわからないね』


「ちょっと……下手したら創竜神より強い子が生まれてくるとか、不安しかないんだけど。

 ちゃんと母親の言うことを聞く子になるの?!」


『そこは大丈夫じゃない?

 魂の力が強いだけの、普通の人間が生まれてくると思うよ。

 今の瑞希みたいな、もっと力の強い子が生まれてくる……って言えばわかる?』


 瑞希が胸を撫で下ろした。


「そっかー。なら安心だね!」


 アルベルトの頬は引きつっていた。


「私は胃痛が増しそうな話なんだが……父親のいうことも聞いてくれるのだろうか」


『大丈夫だってば! 心配し過ぎだよ!

 ――じゃあ私は、またそろそろ眠るね。

 多分、次に目が覚める時は、生まれた後だと思う。

 その時にはもう”初代様”って呼ばれてた時の記憶はないから、普通の子供として育ててね。

 じゃないと、ひねくれた子供になっちゃうからね?!』


 室内に静寂が訪れ、瑞希が大きくため息をついた。


「人騒がせな子だなぁ。あれだけ大勢の人間の命を奪ってもケロッとしてるし。

 人の命を奪うことに慣れてるのかな。

 教育を間違えると怖いことになりそうだから、きちんと教えないといけないなぁ」


 ユリアンがぼそりと呟く。


「……今の、空に浮かんでた子の声よね。

 創竜神を顎で使うとか、とんでもない王女が生まれてくるのね。

 ――でも、この子に服を作ってあげる日が待ち遠しいわね」


 瑞希がユリアンに振り向いて尋ねる。


「ユリアンさん、近衛騎士団に入ったんじゃなかったの?

 また騎士団を辞めて、仕立師に戻るの?」


「まさか! 人を率いる立場を引き受けた以上、そう簡単には辞められないわよ。

 でも、副業として仕立師は続けて行くわ。

 デザインだけになってしまうかもしれないけど、そこはお針子さんを信じるしかないわね」


「そっか! じゃあまた新しい服を発注するね!

 お腹が大きくなってきて、新調しないといけなくなってたし!」


 ユリアンがにっこりと微笑んだ。


「まかしといて! 友達のマタニティウェア、きっちり作って見せるわ!

 既に王妃殿下から依頼されてるのもあるし、そちらは急いで仕上げるわね!」


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