これは恋?
立花愛果‥‥いじめをきっかけに死にたいと願っている主人公の高校三年生。優等生。
永田北哉‥‥自称教師失格の少しクズな担任。でもそのクズな行動にも一つ一つ理由があって…?生徒にも人気な先生。消えたいと思っている。
塙玄弥‥‥立花愛果と何か関係がある…?
朝日先生‥‥北哉の命の恩人。
私の担任の先生は少し、いや結構変わっている。
「地球はいつ消えてしまうんだろう!」
「怖いですよ…なぜ今?」
「スマホのニュースでさ地球に関する記事が出てきてその時ふと思った。消えたい俺たちはいつ自然に消えるのかなって。」
「だからって倉庫に広がる声で言わなくてもいいじゃないですか。」
「叫びたくなって。」
「…なんか、怖いです。もう。」
「君はとことん酷いね」
この通り。かなり変わっている。怖い。もう怖い。
だけれど、時々得れる雑学などが面白くて、一緒にいると学びが増える。
こんな変わってる先生を知ってるのは私だけだ。
みんな、無口のイケメン先生だと思っている。
「みんなが俺に集る。だから、この倉庫は落ち着く。」
「ですね。私も、ここが好きです。みんなが私を見て笑う。ここは一人になれて落ち着きます。」
「俺もいる。」
「知ってます。先生と二人きりって響き、なんか気持ち悪いな…って思って。」
「君はとことん酷いね」
「それほどでも。」
私は立花愛果。
そしてこの人は永田北哉先生。
人気者の先生は、私の恩人だ。
私の嘘の噂を広められてしまい、クラスでも学年でも嫌な目で見られるようになってしまった。
先生はそんな私にこの少し狭い倉庫を紹介してくれた。
先生は「あと一年、卒業まで一緒にここで本を読んだりお話ししたり、教室にいる時に辛くても、ここに来れば落ち着く。全然使わないこの倉庫、俺もよくここに来るんだ。みんなが俺に集って話しかける。ここは静かだから好きなんだ。」と言ってくれた。
その日から少し心の穴が埋まってきた。
「君は、人生で一度でもいいから自分の周りに人が集まったことある?」
「…あります。」
「でた。その顔。また悪いことで?」
「はい。」
いじめられていた時、周りに人が集まって色々言われてきた。
「周りに人が集まるって、嫌だよね。俺は違う意味で。」
「はい。」
「君、今日空いてる?」
「空いてます。」
「じゃあ美味しい美味しいパンケーキをお兄さんと一緒に食べようよ。」
「なに口説いてるんですか。」
「ダメ?」
「行きません。」
「楽しみだなー。」
「話聞いてますか?行きません!!」
「いらっしゃいませー。」
来てしまった…。
「どうする?何食べる?」
「普通のパンケーキで。」
「えー。このトロピカルアラモード甘々パンケーキは?」
「奢ってもらう身として普通のパンケーキを頼むのが常識です。」
「君も案外常識人なんだね。遠慮しなくていいのに。じゃあ頼もう。すみませーん。」
店員さんが走ってきた。
「じゃあ俺はこのトロピカルアラモード甘々パンケーキ一つ。」
「じゃあ私はこのパンケーキとトロピカルジュース。そしてチョコレートバナナパフェにソフトクリームスモールサイズ、そして…」
「ちょ、ちょっと待って。頼みすぎじゃない?」
「だって遠慮しなくていいって。」
「まあ言ったけどさ、君は常識人…」
私は先生の話を遮り「それでお願いします。」と頼んだ。
「すみません、数日あまり食べていないので。」
「そう言うことなら仕方ない。でも他の人にはそういうことしちゃだめだぞ。俺にしかしちゃダメだ。立花愛果。」
先生は私の頭をポンポンとした。
「それは…なにハラスメントでしょうか。」
「そこは胸キュンじゃねぇの?」
「なるほど、胸キュンハラスメント。」
「違うわ。」
「お待たせしましたー。」
店員さんがパンケーキとトロピカルアラモード甘々パンケーキとトロピカルジュースをもってきた。
「ありがとうございます。」
「君のそのパンケーキも美味そうじゃん。」
私はパンケーキのお皿を持ち先生を睨んだ。
「食べねぇよ。」
私はパンケーキのお皿を置き、トロピカルジュースを飲んだ。
「美味しいです。久しぶりにこんな美味しいの飲んだかも。」
「へぇ。」
先生は私が置いたトロピカルジュースを少し飲んだ。
ストローだった。これは、これは…「間接キス…」
「どうした?」
「これもなにかのハラスメントでしょうか。」
「え、俺なんかした!?」
「間接キス。」
「あー。まあ、いいっしょ。大丈夫だ。」
「大丈夫じゃないです!」
「わかった、わかったよ。それよりさ、」
先生はパンケーキにフォークを刺し、食べながら言った。
「君失恋したの?」と。
「え、なぜそれを?」
「噂広まってる。立花愛果がクラスの人気者、渡辺和人を好きだったって。でも渡辺和人には彼女がいたって。」
「え、そんなことが広まったんですか。告ってもないし誰にも好きとは言ってないのですが…。」
「じゃあ噂を広めた本人はこの噂は嘘だと知ってるってことか。ダサいな。」
「はい。まあ、広まっても私はいいんですけどね。」
「ふーん。…ごちそうさま。」
「早くないですか?」
「俺食べるのは早いんだよ。」
私は先生に待たせるわけにはいかないと思い急いで食べた。
「ごちそうさまでした。」
「はい。」
先生がお金を払い店を出た。
「美味しかったな。また来ような。」
「まあまた来たいとは思いますが先生とは…。」
「なんだよ。」
「いや。」
先生は私と視線を合わせて私の頭に手を乗せた。
「俺が君を誘った理由、わからない?」
「…わからないです。」
「理由その一。放っておかないから。理由その二。…好きだから。」
「え、?」
「まあそういうこと。」
「え、、ん?」
「…先生としてだよ!君は成績もいいしバカじゃないんだから口説かれてオーケーするんじゃないぞ?俺のことも…好きになるな。」
そう言い先生は頭をポンポンとした。
「な、なりませんよ。口説かれることもありません。でもありがとうございます。」
ドッドッドッっと胸が鳴る音が聞こえる。
この音が先生に聞こえないようにと胸を抑えてドキドキを抑えようとする。でも鳴り止まなかった。
「…もう、ダメかもしれないです。」
これは…恋なのでしょうか…。
「どうした?…あれなんか顔赤くない?大丈夫?」
「大丈夫じゃないです!!!!!!」
私は走って家に向かった。
私は先生から少し離れたところで立ち止まりしゃがんだ。
「きっと、走ったから。だからドキドキしてる。そうよ、きっと…。」
少し休もう。と近くのベンチに座った。
なのにずっとドキドキしていた。
「おさまれ、私の胸…おさまれ…。」
これは恋ではない。そう信じたい。
翌日。
教室に行くとみんなが黒板に集まってわーわー騒いでいた。
私も黒板を見ると先生とパンケーキを食べている写真、先生とパンケーキ屋から出てくる写真、先生に頭をポンポンされている写真が貼られてあった。
私のことをみんなが見てくる。私は写真を剥がしてぐちゃぐちゃにし、教室から走って出ようとした。その時先生がドアの前に立っていたので私は先生に思いっきりぶつかった。
先生は私の肩に手を置いて私と視線を合わせてきた。
泣きそうな姿を見られたくなくて俯いた。
下を向くと涙が溢れてきて、私は自分が情けなくなった。
「立花さん。何があったの?」
先生は私の顔を上げて涙を拭いた。
「ごめんなさい先生…。これ…。」
私は先生にぐちゃぐちゃにした写真三枚を見せた。
先生は私の耳元で「俺に任せて。大丈夫。俺こそごめんね。とりあえず席に座って。」と言った。
「立花さん、進路のことで相談があって。でも昨日先生パンケーキ食べるために予約取っててさ、だからあのパンケーキ屋さんで進路の相談乗ってたんだ。そしてこの頭ポンポンは慰めてるだけ。」
人気者の先生の言うことはみんな信じた。
「なんだーびっくりしたー。先生本当やめてよー。」
「ごめんごめん、でも、」
先生は私の席に来て座っている私の頭をポンとし、「ただの写真だけで人を叩いて立花さんを泣かせて、びっくりしたーとかの前に立花さんに謝るのが先じゃない?」
みんなは一度黙って私のところに来た。
「…なにもわからないのに叩いてごめんなさい。」
と謝ってきた。「全然、大丈夫。ありがとう。」と言った。
すごい悲しいのに何か嬉しい。きっと先生が庇ってくれたから。だから嬉しい。
私は昼休み、倉庫に行った。
「先生、いますか?」
「いるよ。」
「あ…。…先ほどはありがとうございました。とても助かりました。」
「いいよ。それにしても写真を撮ったのは誰なんだ。」
「それが、昨日少し見たんです。それらしき人。」
そう、私が先生から走って逃げた時、電柱に誰かがいた。灰色のスーツで髪はボブ。大人の人だ。
「まじか…。よし、今日俺の家来い。誘き出してやる。」
「嫌ですと言いたいところですが誘き出すためには賛成です。」
「よし。」
私は先生と一緒に帰った。
先生が肩を組んできたのでやめてくださいというと「作戦だ。多分写真撮られてるから。」
「わかりました。」
少し歩くと大きい家があった。
「ここだよ。俺の家。」
「え、ここですか。大きいですね。」
「まあね。じゃあ入って。」
「お邪魔します。」
先生の家はかなり広かった。先生はこっちだよと二階に上がった。二階に上がると先生の部屋があり、先生はカーテンを開けた。窓の外を見ると電柱に隠れている灰色のスーツの人がいた。
「いますね。」先生にそういうと先生は私の顔をくいっと自分の方に向けた。
「あんま見るな。バレるだろ。」
とポケットに手を突っ込みながら先生は顔を近づけてきた。
もうすぐ唇と唇が触れてしまうと私はぐっと目を瞑った。
カシャっと写真を撮る音が聞こえる。私は何事かと思い目を開けると先生は私の顔の横に唇を近づけていた。
「これは…?」そう聞くと先生は「これ。」と写真を撮るストーカーの写真を見せてきた。
「こうすると外からキスしてるように見えるんだよ。キスしてるように見せてたら撮るだろ?だから撮ったところを撮った。」
「なるほど。」
「ちなみにこれ誰?」
「私もわかりません。ちょうど電柱に隠れてるし。灰色のスーツにボブってことはわかりました。」
先生は私から離れて私の手を握り「追うぞ!逃げられる前に!」と手を引っ張った。
「…はい!」
ストーカー。嫌なやつ。でも今この時間は楽しい。
楽しいことを与えてくれたストーカー。嫌なやつだけど。
「先生!ストーカーはヒールです!」
「追いつくな!」
あと数mで捕まえられるという時に先生が立ち止まった。
「何してるんですか先生、逃げられちゃいますよ!」
「…あ、ちょっと足挫いた。……捕まえるぞ。」先生は再び走り出した。私は先生について行った。
先生は少し悲しそうな顔をしていた。
あともう少しで捕まえられる。私はストーカーの腕を握った。するとストーカーはものすごい力で腕を振り離して逃げようとした。だから私は再び腕を掴み、ストーカーをひっくり返して捕まえた。
「昨日からずっとつけてましたよね。」
「知らないわよ!」
「…立花愛果、強いな。」
「昔護身術を習ったことがあって。それよりもこの人警察に突き出しましょう。」
「…ああ。」
私はストーカーを立たせて近くの交番に連れて行こうとした。でも先生は立ち止まったままだった。
「先生…?」
「ごめん、」
「ん?どうしたんですか?」
「…その人俺の恩師…命の恩人なんだよ。」
先生がそういうとストーカーは先生の方に振り返って私を突き飛ばした。
「永田くん…!」
ストーカーは先生の方に走っていった。
そして先生にキスをした。
「朝日先生、やめてください。」
先生はストーカーを突き飛ばした。
「朝日先生、理由も知らずにストーカーしたり、迷惑です。確かに恩人です。でも…俺の大事な生徒には手を出さないで。…さっきの写真消してください。キスはしてません。朝日先生を釣るための罠なので。」
「…わかったわよ。」
よかった。ストーカー事件は解決した。
でも今はこの二人を見れない。
私は川の方へ走った。
「どこ行くの。」
先生が呼び止めたので私は先生の方を見ずに「用事思い出しちゃって。…交番、行かなくていいです。ストーカー、もうしないでくださいね!」と笑って再び走り出した。
辛くて苦しい。ストーカーが先生にキスをしたあの光景は苦しかった。
先生と生徒、恋はしていけない関係。
今までこの鼓動はこの苦しさは恋じゃないって思い続けていた。でも、気づいてしまった。
許されないこの気持ち。これは、恋だ。
私は川に向かって走った。
そして河川敷を降りて川に入った。
元々死にたいとかは思っていた。
だからもういいかなと思って川に入った。
その時。「愛果!!!!」と大きい声で私を呼ぶ声が聞こえた。
私は振り返った。すると先生が川に飛び込んできた。
「先…生…。」先生は私の腕を掴んで「ダメだ。こんなところ…ダメだ!まだ死んじゃダメだ!」と引っ張って川から出そうとした。
「先生にはわからないよ!私は、私は!本当の恋を知ってしまったから!辛い苦しい。死にたい。心が締め付けられてどうしようもなくなる。息ができなくなる。いっそのこと死んでしまえばって。私は死にたいのよ!」
私は必死に振り払おうとした。
でも先生の力は強くて、振り払おうと必死にもがく私のせいで先生はびしょ濡れになった。
水飛沫が宙に綺麗に舞う。
「離してよ!」
私は泣いた。怖いくらい泣いた。離してほしくないけど離してほしい。
その時先生が私の腕をぐいっと引き寄せて私のことを抱きしめた。
「君にはわからないよ。ダメだとわかっていても好きになってしまう。綺麗だなって一緒にいたいって思ってしまう。この気持ちが。死のうとしているのを見て苦しくなる気持ちが!」
「…先生」
「だから愛果、君は死なないでくれ。」
先生は力強く私を抱きしめた。
「…はい。」
翌日。
ストーカー被害が収まっても虐めは収まらなかった。
教室に入ると机に「死ね」とか「ブス」とか「消えろ」ってたくさん書いてあった。
私は教室にあった雑巾を濡らして机を拭いた。でも油性で書かれたのか文字は消えなかった。
仕方なく私はその席に座った。
先生が来る前に隠さなきゃ。
私はプリントやら教科書やらで隠した。
「みんなー、ホームルーム始めるぞー。」
先生がきた。私は必死に隠した。
でも運悪く一限目は先生の授業だった。国語の授業。
先生は音読している間こっちに周ってくる。
私は必死に隠した。
「なぜかというと、この二、三年、京都には…」
先生は私の目の前で立ち止まった。
「立花さん、隠してもわかるよ。」と先生は落書きを隠したプリントを取った。すると油性のマッキーペンで書かれた文字が出てきた。
「…逃げたい?」
「…。」
「ちゃんと言って。逃げたい?」
私は堪えていた涙を流しながら「逃げたいです…。」と答えた。すると先生は「よし。」と私の頭を撫でて、「…みんなちょっと自習してて。」と私の手を引っ張って教室から出た。そして廊下を走って玄関に出た。
「先生、授業中ですよ…?クビとか減給とか懲戒免職とか…色々やばいのでは…?」
「大丈夫。ほら、靴履いて。」
私は先生に渡された私の靴を履いた。先生は再び手を引っ張って玄関を出た。グラウンドを走り回って校舎を出る。
校長先生がそれを見て「永田ー!!!!!」と叫び、追いかけてきた。「逃げるぞ!」先生は子供のようにニコニコして楽しそうにしていた。そんな姿を見ると私まで楽しくなってきた。
「はい!」私は涙を流しながら笑った。
先生は私を昨日の川に連れて行った。河川敷に座り、「これはクビ確定かなー」と笑っていた。
「それ笑い事じゃないですよ!」
「多分停職減給戒告。」
「どうなるんですかそれ。」
「文字通り停職、給料減る。」
「まじですか!じゃあ早く戻らないと!」
私が立ち上がった時座っている先生が私の腕を引っ張った。
「座って」と言っている先生の顔はとても近かった。
顔が熱い。
「ふーん、顔赤いけど、どうしたの?」
先生がニヤニヤして言った。
「あか、あ、赤くないです!」
私はそう怒り座った。
「冴えない優等生ちゃんがこんなところで人気の先生と河川敷に座って授業をサボる。漫画みたいだね。」
「あくまで漫画の中の話です。」
「まあまあ。でも、もし俺らが気づいてないだけで漫画の中の主人公だったらどうする?」
「…読者に感情移入してもらいたいです。」
「…じゃあ俺が読者になって立花愛果オタクになる。」
「ストレートに言うとキモいです。でもありがとうございます。」
「君はとことん酷いね!本当!…あと一時間くらい居座ろうかここに。」
先生は河川敷から降りて川でバシャバシャ遊び始めた。
そして手招きしてきた。
「はい。」私は河川敷から降りて一緒に遊び始めた。
「…青いビー玉見っけ!」先生は川に落ちていたキラキラと光る青いビー玉を太陽にかざした。
「綺麗ですね。」
「うん、綺麗。」先生はビー玉をポケットに入れた。そしてそこら辺に落ちている石を川に投げて石投げをしていた。
「先生、子供ですね。」
「大人は元は子供なんだ。大人が子供っぽくなるのは、子供の頃の記憶があれば当たり前だ。」
「先生そんな正論言えるんですね。…今度は川じゃなくて海行きたいです。」
「うん。行こう!一緒に海に行くまでは死なないこと。いい?」
「はい。この世に未練を残して死にたくないので。」
一時間後。私と先生は倉庫から学校に入った。
そして何もなかったかのように教室に入った。
教室に入ると校長先生が私の席に座っていた。
「「あー…。」」先生と私は声を揃えてそう言い後退りをして逃げた。
その後、呼び出された私たちはめちゃくちゃ説教された。
ちなみに先生は三年生の担任、国語の先生の代理がいないということで停職にはならず、その代わりかなりの減給という罰が与えられた。
そして私は親が、親がいないから怒られずに済んだ。退学にもならなかった。親がいないから。
怒られた後の先生はげっそりしていて「もう…長すぎるって…。」と言っていた。
「お疲れ様です。」
「…ありがとうね。楽しかった。」
「いえ、私もです。久々にあんなに笑いました。」
「よかった。」
…この気持ちは恋じゃないって思ってたけど、気づいてしまった。辛くて苦しかったけど、楽しさを知った。
もっと、恋をしたい。
私は先生を好きでいようと心に決めた。
次回
先生と愛果の過去。




