手を繋ぐ
冬は嫌いだ。
理由は極度の冷え性にある。
夏場でもひんやりしている私の手は冬になるとすぐに真っ赤になり熱い飲み物などを持つと痛みを伴うほど冷たくなる。
「手袋しなよ。」
よく言われるけど生憎手袋をしても私の手はキンキンだ。
小中高校とあだ名は雪女。
よく冬場は「触らないで」と言われる始末。
大学になって出来た元カレにも
「冬場、お前の手冷たいから繋ぎたくないわ(笑)夏場はちょうどいいけど(笑)」
と言われた。
今の彼氏である駿と過ごして2年目の冬が来ようとしている。
1年目の冬内心ヒヤヒヤしながら過ごしたが初めて冬に手を繋いでから冬は会う度に手を繋いだ。
彼の手はとても暖かくて繋いでいると彼の手が少しずつ冷たくなっていくからとても申し訳ない気持ちになってしまった。
そして今年も冬が来る。
まさに今日、会うのにテレビでは
「今年最強の寒波の影響で各地で今年の最低気温を更新しています」
なーんて。
憂鬱になりながら家を出る。
「おはよう。」
「おはよ!」
彼は眩しい程の笑顔で手を振った。
「今日めっちゃ寒いね〜。ほら、日向手貸して。」
そう言うと彼は私の手をとりそのまま彼のコートのポケットに入れた。
どうやらカイロも入っているらしい。
じんわりと彼の手の暖かさとカイロの暖かさが私の冷えた手に伝わる。
「はい。両手は繋げないからもう片方の手はこれ持っときな。」
彼は私にカイロを渡す。
「めっちゃあったかくなるやつじゃんこれ。いいの?」
「もちろん!日向の為に持ってきたから!待ち合わせの直前に開けたからあったかいと思うけどどう?」
「すごいあったかい。ありがとう。」
「どーいたしまして。」
なんか手を繋いで彼氏のポケットに入れてるって少女マンガみたいで少し恥ずかしい。
なんでもない話をしながら歩いた。
今日の予定とかご飯の話とか。
どうやら今日は私が行きたがっていたカフェを予約したらしい。
元々彼はアクティブな人だからスケートとかを提案していたのだがそれはなしらしい。
この間はショッピングだったし、その前は猫カフェだった。
『どうして手を繋いだり屋内のデートが多いんだろう』
ふと思った。
会話の切れ目で私は聞いてみた。
「ねぇ。どうして手をよく繋いでくれるの?私の手すごいつめたいでしょ?それにデートだって私は嬉しいけど駿はもっと動きたかったりするんじゃない?」
彼は少し黙っていた。
あれ聞いちゃいけなかったかな?
「あ、ごめ
「す……だから」
「え?」
「好きだから!」
「???」
「手が冷たいとこも好きだし、日向と行くとこはどこでも楽しいから!」
彼は顔が真っ赤だ。
手が冷たいのが好き?
どういうこと?
「手繋いでると日向の手が少しずつあったかくなっていって
こう、なんていうか繋がってる!みたいな感覚で……ってなんか俺変態みたいじゃん!それに一緒にデート行って日向が楽しそうにほわっと笑うと胸の辺りがあったかくなって、あーほんとに好きだなって思って!」
早口で顔を真っ赤にしながら彼は言った。
というかなんか私まで恥ずかしいんだが!
嬉し恥ずかしってこういう事なのか。
「私ずっと手が冷たいことコンプレックスで駿が沢山手繋いでくれるのがすごい申し訳なくて。室内のデートも私は好きだけど駿はアクティブだからどうなんだろう?って……思っちゃって……。」
「全然そんなことないよ!それに日向の手をあっためられるのは俺の特権だから!」
彼は少し赤みの残った顔で笑みを浮かべて言った。
「ありがとう。駿が彼氏でよかった。」
「!!……こちらこそ彼女になってくれてありがとう。」
今日私は少しこの体質と冬を好きになることが出来た。
そして駿のことがもっと好きになった。
何度も君と冬を過ごして手を、心を繋ぎたい。