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無限の勇者  作者: 凛
3/8

難解

「魔力…って概念は理解出来るか?」

イリアはそう俺に問いかけてきた。


「それってあの、空気中にふわふわ漂ってて魔法とかに使う感じの奴です?」


イリアの質問にまんまゲーム中のイメージで答える。


「大体合ってるな。魔力は場所によって濃度の差こそあれど、世界中ほとんど何処にでもある。」


ゲームの知識のままで大丈夫だった。それにしても、地球の方で通ってる概念とほぼほぼ一緒な事に違和感を感じる…が、今はどうでもいいだろう。そんなもんだ。

とりあえず魔力は、地球で言う所の酸素のような扱いなのだろう。


「で、だ。魔物って概念も分かるか?」

今度は答えに困る質問だ。

自分の中で魔物は〝魔物〟としか答えられない。


「思えば魔物って何だ?とは考えた事は無かったですね…。」



「魔物というのはだな、密集した魔力が固形化したエネルギーの塊のような存在なんだ。」

そう言いつつ、イリアは掌の上で霧のような、固形物のような不定形の光る球体を転がす。


「エネルギーの塊?」


「魔物共に意思は存在しない。ただ身の回りで生命反応を持つ動物や木等に手当たり次第に魔力の持つエネルギーをぶつけ続けるだけのものなんだ。大体竜巻や台風のようなものだとでも思っておけば良い。この私の掌に転がしている魔力エネルギーの塊も、いずれ球体以外の形を持ち暴れ出すだろう。」



うろうろ俺の周りを歩き回りながらイリアは説明を続ける。


「で、だ。【無限魔力】の説明をしよう。とりあえずわかりやすくまとめた説明をするぞ。」


そういってイリアは、【無限魔力】の効果を文章化したものを俺に見せてくれた。


【無限魔力】

スキル保持者の魂を中心として無限に魔力が生成され続ける。



「この【無限魔力】は保持者の意思に関わらず己を中心として魔力を生成し続けるスキルだ。呪文も特殊なスキルも魔力切れを心配する必要無くえんえんと打ち続ける事が出来るな。」


そう言ってイリアは指先からぽんぽんと小さい火球を何発も飛ばして見せる。


確かに強力だと思う。呪文さえ使えればほぼほぼチートだろう。


そんな事を考えている俺に目を向け、イリアは更に問いかける。


「それで、さっきの魔物の話を思い出してみろ。」



「確か…魔物の正体は魔力エネルギーの塊…あっ!?」

俺は察しは良い方なのだ。



「そうだ。【無限魔力】の保持者がこの世界に存在しているだけで、本人の意思に関わらず魔力濃度は上昇し続ける。となれば、いずれは空気中を漂う魔力が増え、強力な魔物が生み出される事になる。」


そういう事か。存在しているだけで魔物を生み出す原因になってしまうのだ。


「という訳で、【無限魔力】の保持者は赤子だろうと老人だろうと脅威。世界全体の均衡を脅かす存在なので即刻死刑にすべし。というのが全人類の共通認識だ。」


存在するだけで罪になる。

それ程までに人類にとって脅威なのであろう。


「だが、魔物達に取っては英雄となり得る。【無限魔力】さえあれば魔物達の力が底上げされるのだからな。」


「そっか…魔物達にしてみれば俺はヒーローなんですね!」


「そうだ。そして中には魔物として生まれ、長い年月を経るに従って意思が生まれ、理性を持つようになる魔物達が居る。…我々人類は彼らを魔物と区別し、〝魔人〟と呼んでいる。」


埃が転がるにつれ大きくなっていくのと同じように、魔力の塊もいずれは意思を持つようになり、人との会話が可能になる事があるらしい。


「彼ら魔人の国の殆どは、遙か数千年前に人類との不可侵条約を結んだ。彼らにしても人類にしても、戦争をして得るものは何も無かったからな。」


イリアの説明を聞いてて、1つ疑問が生じた。


「不可侵条約を結べど、どちらかにとって動機があれば攻め入っちゃうんじゃないですか?」


地球の方の不可侵条約も、実際何度か破られてるはずだ。


「あぁ、かつての我々の祖先と、魔人達は特別な術式をもって己達に縛りをかけ、国VS国の争いは一切出来ないようにした。」


深く聞いてみると、国家をもっての戦力を発動しようとすると、その国家内の戦力全てに、全ての魔法発動行為、スキルに制限がかかるらしい。

そして、制限が発動している国自体への侵略においては一切の制限が発動しない。

そんな契りが発動している中で無闇に戦争を仕掛けようとすれば逆に滅ぼされるのは必定。

お互いがお互いを牽制しあう仕組みが出来上がっているのだという。


「話が逸れたな。本来、力の強い魔物達の誕生は魔人達の国家においても面倒事だ。人を襲わせる、という意図をもって野に放ったままにしておけば不可侵条約の制限がかかる可能性もある。そして強力な魔物の討伐にも骨が折れるからな…。」


「魔物と魔人が同じ国で仲良くするのは無理っすかね…?」


「そもそも意思、理性という物が無い者には意思の疎通などほぼほぼ無理な話だからな。」


そう言いつつ、イリアの表情が段々と険しいものになっていく。



「今回、お前は悪魔によって召喚された。魔人国家の内の1つを統べる魔王ザラムスの配下の悪魔によってな…。本来、魔人達が異世界人を召喚し、戦力の増強をしても意味は無い。そんな中で戦力の増強を図る意図があるとするならば。」


イリアは神妙な表情のまま一呼吸置いて言った。


「不可侵条約の魔法が秘密裏に破られたのかもしれない。」






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