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無限の勇者  作者: 凛
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邂逅

坂口結城は東京都内の高校に通う、ごく平凡な少年であった。


特に秀でた特徴がある訳でもなく、波風立たない日々を生きていたのだった。



そんな少年の生活に劇的な変化が起こってしまったある日の事。



いつもの電車に間に合うように、余裕を持って家を出る結城。


しばらく歩いていると、空中に黒い穴のような、裂け目のような物が浮いている事に気付く。


「…なんだこれ…?」


怪しい物は触っちゃいけない、そう思っても好奇心が疼く。


「多分…触っても死にゃあしないから…」

そう、自分を誤魔化して手を裂け目に向ける。


少年が非現実的な出来事に巻き込まれる事になった決定的瞬間であった…



…………………………………………




頭が鈍く重い…

頭痛がする訳では無いが、寝起きのような妙な頭の重さを感じる…

頭の鈍さに気付くと同時に、眼下に広がる光景の異常さに気付いた。



草原……


ただっぴろい草原……

遠くに山とかは見えるけれども、ここら一帯は草丈の短い草が生える草原だ…


「…え?」




「……えぇ?」



あり得ない光景にただただ呆然とするしか無い。


ふと、さらに異常に気付いてしまった。


無いのだ。男の…シンボルが。

道理で股間あたりがさみしい訳だ。


胸も大きくなってるな…



…というかこれは完全に女の体だ…


さっきまで来ていたはずの制服や持っていたはずのカバンやらは何処に行ってしまったのか。


やけにファンタジックな服装をしている。

ごてごてに石のついたローブのような物を着てる。


妙に冷静になって自己分析出来るもんだ…。

人は理解できる範疇を超えた物に遭遇した時、逆に冷静になるというのは本当らしい。


冷静と錯乱の中間くらいになった目でぼうっとしていると光景のさらなる異常に気付く。


辺りに人が数人倒れているのだ。

うつぶせになっているので良く分からないが、どれも体付きのがっしりしたおっさん達である。

死んでるのかな。


「あのっ、大丈夫ですか!?」


声をかけてみるが、返事が無い。


「おぉ…一人成功したのですね♪」


背後から唐突に声が聞こえる。



「はい…?」

振り返りつつ己にかけられたであろう声に返事をする。



完全に振り返り、声の主を目で捉えた時、言葉にならない程の恐怖を感じた。

だって身長が3mはありそうな巨体を持つTHE悪魔って感じの奴なのだ。


何というか、どっかの神話の絵に出て来そうな筋肉むっちむち紫野郎だ。ごっつい角まで生えている。

自分の判断力じゃ本当に悪魔なのかどうかなんて、見分けは付かないけれども、THE・悪魔って感じだ。


「後はこの魂さえ献上すれば、きっとザラムス様もお喜びになる事でしょう♪」


こっちの動揺などお構いなしに独り言をブツブツ喋っている。







…おぅ……



…多分これは夢だな。



まだ自分の体は自宅のベットで寝ているのだろう。

俗に言う明晰夢って奴だ。多分。

少なくとも異世界転生しちゃったってのよりかは現実味がある。


異世界転生なんてそんなファンタジックな出来事があるわけが無い。


というかこんなファンタジックな夢を見る自分に若干の羞恥心を感じる。

そろそろ厨二病は痛いと自覚してくるお年頃なのだ。


とりあえず、明晰夢なら可愛いあの子とムフフできるなぁ…

そんな事を思った時、


「ツッ!?」


脇腹に重い鈍痛が走る。

めっちゃ痛い。


目の前で悪魔がニヤニヤしてる。

そうかお前がやったのか。


異世界転移したかもしれないと思ったら一発目からボス級の悪魔的な奴とのエンカウントとか洒落にならない。


ドクドクと血が流れ出ていくのが分かる。


痛い。


「大丈夫ですよ♪痛いのは最初だけですから♪」


最初は痛いんじゃん…

でも気付いてしまった。

こんなに痛いんだ、夢じゃない。


「痛…い…」


遠のきゆく意識の中に、誰かの声を聞いた。



「それじゃあ、魂、頂いていきますね♪」



悪魔が少年の魂を回収しようとその魂に触れた刹那、とてつもなく強い精神力が少年の魂を通じて悪魔の魂へと侵入する。


そしてその異常ともいえる精神力を持った精神は、悪魔の魂を経路として、世界を統べる王の一角である、【魔王】ザラムスの魂へとの侵入に成功する。



その精神は少年の肉体、つまりは元は誰の物かも分からぬ少女の肉体の死を免れる為に最適なアイテムを魔王の精神から盗み出す事に見事成功する。


魔王より盗まれたアイテムの名は、【永遠の牢獄】。

精神は迷い無くアイテムを起動する。



精神世界において【時間】という概念は存在しない。

悪魔も、魔王ザラムスにしてもその一瞬のうちに起こった出来事には気付かない。


全ての事が一瞬にして起こったのであった…




…………………………………………



ふと目が覚めてみるとまた景色が変わっている。


また異常な景色だ。

夢なんだから当然なんだろうが。


すぐそばに転がっている半透明な立方体を除けば、はるか先の地平線まで見渡してみても地形の起伏も何もかもが一切無い殺風景の極地のような風景であった。



痛んでいたはずの脇腹からは傷が無くなり、いつの間にか女体化していた体からはそもそも性差を感じさせる要素が一切無くなり、中性的な外見になっていると思われる。鏡を見てないので断定は出来ないけども…。

物凄い勢いで性別が変わっていくな…。




「明晰夢か……」

もう訳が分からん。悪魔に脇っ腹を刺されて死んだかと思いきや目覚めて見れば地平線の先まで誰も何も無い世界。


現実では無いだろう。





「起きたか」


急に声がして驚く。


悪魔かと思っておそるおそる振り返るが、そこにいたのは悪魔ではなく、金髪の美少女であった。


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― 新着の感想 ―
[一言] >> いつの間にか女体化していた体からはそもそも性差を感じさせる要素が一切無くなっていた。 中性的な外見になったという事ですか。 文章では外見が想像し難いと感じました。
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